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三重の玩具蒐集家・伊藤蝠堂が発行したおもちゃ誌『草紙』

 三重県で活動していた玩具蒐集家・伊藤蝠堂(伊藤吉兵衛)はKokeshi Wiki様や以下の動画で紹介されたことがあるが、伊藤は趣味誌『古茂里』、『草紙』を発行していた。川口栄三『郷土玩具文献解題』(郷土玩具研究会、1966年)によると、『草紙』は昭和9~11月に発行されて、第一期として5冊、第二期として1冊出たようだ。この雑誌の一部の書影がKokeshi Wiki様や動画で出ているが、雑誌の目次は紹介されていない。私の手元には『草紙』第一期第五冊があるので、写真を掲載しながら紹介していきたい。なお、投稿者の中で拙noteで紹介したことのある人物については関連記事のリンクを貼っておく。

大きさ:約20.3cm×約14.4cm、和装、長辺綴じでなく短辺綴じ
印刷:昭和10年6月26日
発行:昭和10年7月1日
発行編集:伊藤吉兵衛 三重県富田町富田九八三
印刷人:中川帋魚 三重県四日市市濱田一九〇二ノ一
印刷所:合資会社中川印刷所 三重県四日市市濱田一九〇二ノ一
項数:24項

郷土土鈴愚言
満州のおもちゃ 鷲見東一
郷土玩具 鷲見生(鷲見東一)
私達 鯛童子
青森の神輿 木村弦三
修善寺樫實人形 蝠壽樓人
民俗随筆 子守と乳母と子守唄(下) 本山桂川
富田八景 辻本耕堂

表紙。サイコロの目で第五冊を表している。
目次
見開き。短辺綴じ。
編集後記と奥付
裏表紙

 おもしろいと私が思った点をいくつか紹介したい。まずページ数が98ページからはじまっている。これは第一期が終了した後に合本にすることを前提にページ数が振られたからであると思われる。戦前の個人誌、趣味誌は購読者各自で合本にする、もしくは区切りのいいタイミングで発行者が合本として出すという習慣があったようである。このことは以下の記事で紹介したことがある。

 拙noteで紹介したこともある鷲見東一も投稿している。特に投稿者の中で興味深いのは、現在では民俗学研究者として知られているが、当時趣味人としても知られていた本山桂川が投稿していることである。本山の文章は、タイトルにあるように玩具関係の文章でなく、各地の「子守」の方言や子守唄を紹介した文章である。文末には、「「草紙」の余白を拝借して、ほんの申請までに、ちょっぴり手習をして見たまでである」と述べられているので、雑誌の「埋め草」として投稿されたように思われるが、この文章は「下」であり、連載されていたことから考えると、伊藤のはからいでもともと予定されていたようにも思われる。本山は他の号にも投稿していたようなので、(すべがあるかどうかは不明だが)それらも確認してみたい。

 最後に趣味誌らしいことであるが、編集後記によれば、『草紙』は特別な紙を採用しており、伊藤が長年保管していた紙を使用したという。この趣味誌は紙にも特別なこだわりがあった。以下の写真では分かりにくいかもしれないが、表紙と本ページの大きさが異なっており、制作に苦労したようにもみえる。

本ページが表紙より大きい。

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