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柳田国男と深い交流のあった民俗学研究者・澤田四郎作の異端への関心—主流の中の傍流

 最近、辻本侑生・島村恭則編『クィアの民俗学―LGBTの日常をみつめる』(実生社、2023年)を読み終えた。この本は「社会規範に逆らうような、あるいは少しずつ転覆しさえするようなジェンダーとセクシュアリティにまつわる表現・行為」(本の中で紹介されている説明より引用)と定義されるクィアに関する民俗学を様々な視点から紹介・論じているが、その中のテーマのひとつにクィアの民俗学研究の先行者がある。本の中では、南方熊楠、岩田準一、金城朝永、北野博美らの仕事が紹介されており、私が今まであまり考えたことのない視点でのまとめであったため興味深く読んだ。この性に関する規範から外れた民俗を研究していた人物という視点で今までの資料を見直すと違った発見がある。

 たとえば、最近以下のWebページで公開されている柳田国男とも深い交流のあった澤田四郎作の年譜・著述等目録を確認する機会があったが、澤田が「古典時代の同性愛」(『新性』創刊号、1924年)、「同性愛の矯正に就て」(『性公論』3巻3号、1926年)を投稿していたことに気が付いた。

拙noteでは以下の記事で紹介したように、澤田は雑誌『Phallus-Kultus』を発行するほど性に関する民俗に大きな関心を持っていたが、その関心の範囲はクィアに関する内容も含まれていたようだ。民俗学史的には澤田は柳田の民俗学を支持する主流のようにみえるが、その中にありながら規範から外れるクィアを含んだ性に関する民俗に対する関心を持っていたことがあるというのが興味深い。

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Theopotamos (Kamikawa)
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