花田清輝の宮本常一評
『花田清輝全集』第10巻(講談社、1978年)に「故郷を失わぬ人々」という文章が収録されているが、この文章は花田清輝が『庶民の発見』宮本常一(未来社、1961年)の書評であり、花田の宮本評にもなっている。興味深い文章なので以下に一部を引用してみたい。
宮本が自分の故郷で生活している人びとと同じ伝統を故郷以外の土地にも見出していると指摘している。ここで花田が言いたいことは、宮本が自分の故郷の人びとと故郷以外の人びとの間に地域にとらわれない共通の普遍的な伝統があるということを見つけたということであろう。この評価は鶴見俊輔が宮本の仕事を地域にとらわれない民際的なものとした評価と重なる。『歴史の話 日本史を問いなおす』網野善彦・鶴見俊輔(朝日文庫、2018年)で鶴見は郷土に関して、以下のように述べている。
上記に引用した発言は、1992年の鶴見と網野善彦の対談でなされたものである。興味深いのは、花田が鶴見が評価しているような宮本の民際的な一面をはやい段階で指摘している点である。宮本が民際的なことを考えはじめたのはいつごろからなのだろうか。
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