『斎藤昌三翁蔵書目録』『紙魚九々里』(しみくくり)
先日、斎藤昌三の蔵書目録を入手した。斎藤は愛書家、書痴、書誌研究者として知られており、その蔵書は膨大であると推測していたので、まさか蔵書目録という形で整理されていたとは思わず、目録を発見した時は驚いた。この蔵書目録は『紙魚九々里』という書名が付けられている。以下に書誌情報と写真を掲載しておきたい。
大きさ:約24.2cm×約18cm、和装、謄写印刷 ※函入
印刷:※記載なし
発行:昭和38年3月30日
項数:254項
『斎藤昌三翁蔵書目録』が書名だが、外函には『紙魚九々里』と書かれている。「紙魚九々里」は「しみくくり」と読めるため、「締め括り」を意図してこの書名が付けられたのだろうか。
上記の2枚目の写真の署名はよく分からない点が多い。この書名はこの1冊だけのものか、もしくすべてのものになされたのだろうか。そして、この目録の編集に協力した人物の署名であると考えたが、佐々木桔梗の署名もある。佐々木桔梗は神保町オタ様の以下の記事によれば、稲岡勝監修『出版文化人物事典 江戸から近現代・出版人1600人』(日外アソシエーツ、2013年)に立項されているという。この事典の佐々木の項を以下に引用したい。
佐々木の名前は奥付で確認できないが、斎藤の蔵書目録の編集にも協力していたのだろうか。また、「昭和三十八年五月七日於赤坂梓」とあるので、蔵書目録が発行された後に赤坂の梓という場所で集まった際に署名がされたと推測される。
ところで、この蔵書目録では冒頭に以下のように述べられている。
この蔵書目録は暫定版が30部発行された後に決定版が発行される予定であったようである。私が少し調べた限りでは、決定版は発行を確認できなかったが、果たして発行されたのだろうか。
私が入手した蔵書目録は以下の写真のような蔵書票が貼り付けられていたので、編集に協力した岡澤の旧蔵書と考えられる。岡澤については、『日々是趣味のひと』(岡沢貞行偲ぶ会、1991年)という本が発行されており、趣味人であったようだ。この本は国会図書館にも所蔵されているので、機会があれば閲覧してみたい。
ちなみに、『斎藤昌三翁蔵書目録』は今年5月に金沢文圃閣様より復刻される予定で、『書物関係リトルマガジン集2—戦後占領期の斎藤昌三と趣味人』に含まれるようだ。