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雑誌『趣味日本』について

 少し前にXで紹介してそのままになっていた雑誌『趣味日本』について紹介したい。この雑誌は雑誌名のみでは国家主義関連の雑誌のような印象を受けるが、蒐集趣味誌である。以下に書誌情報を紹介したい。

雑誌名:趣味人のための趣味雑誌 趣味日本 創刊十二月号 第一巻第一号
大きさ:約22.5cm×約15.6cm、活版印刷
印刷:昭和8年11月21日
発行:昭和8年12月1日
編集印刷兼発行人:三條博
印刷所:趣味日本社印刷部 神戸市神戸区中山手通七丁目一一四
発行所:趣味日本社 神戸市神戸区中山手通七丁目一一四
頁数:32頁

満州国画片の一考察 藤井栄次郎
官白の処女美を論ず 藤堂太刀雄
短篇
昭八の特印を覗く(上) 谷梅丘
航空郵便物蒐集雑観 寺本義雄
名称印の分布 柴田春郊
装甲万年筆
日本印紙に就いて①—三種免許印紙・其ノ一― 新家積蔵
蒐集の旅、川柳の旅 山田鬼石
富山・小見局風景印秘話 守田一雄
蛙のたわごと 前田晃
郵券学派感想集① スリー・ライン生
蒐集ヴァリエテ
 蒐集戯談
 趣味の特種
 クローズアップ
 アラベスク
ニュース
ニッポン・マーケット
懸賞課題
編輯覚書
通信一束

表紙
目次
奥付

 創刊の言葉はないが、「編輯覚書」では以下のように述べられている。

全般蒐集趣味雑誌の大量出版化は多年僕の持論であったが、本誌創刊によって実現した。大衆趣味誌であるから記事の程度を下げると云うのではない、発行部数の多ければ多い程、記事は一層高度の権威を要するものと思う。編輯の方針は「趣味人のための趣味雑誌」の一語につきる。(中略)/研究記事と余興記事、長稿と短篇、その程よい組合せは本誌の一特色としたい。

 趣味人の個人誌である趣味誌は同好者のみに配布するため少部数の発行であったが、発行者である三條は趣味誌を多くの人びとに流通させることを考えていたようである。文章の投稿者は、藤井栄次郎、谷梅丘、柴田春郊、前田晃など他の趣味誌にも投稿している人物が目立つ。その中で新家積蔵は以下の記事で紹介した『熊野趣味研究』創刊号にも投稿している。

創刊号に当時よく知られていた趣味人に投稿してもらうという慣習があったのだろうか。他の例をあげると、神保町のオタ様が以下の記事で紹介している『京都寸葉』創刊号の投稿者もなかなか豪華であり、上述した藤井も投稿している。

 ところで、個人的に興味深かったのは「通信一束」に「本号寄稿中「、鷲見、森島、小林、須藤他数氏の分は編輯部の都合上乍勝手次号以降に譲ります」とあるので、拙noteでも取り上げている鷲見東一が『趣味日本』にも投稿していた点である。この雑誌の他の号も確認してみたいが、どこかに所蔵されていないだろうか。

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