以下の記事で紹介したように最近南方熊楠『十二支考』を読み進めている。『十二支考』には様々な話が登場するが、これらは「猴に関する伝説」で南方は「猴を馬厩に維ぐ事については柳田君の『山島民譚集』に詳説あり、重複を厭いここにはかの書に見えぬ事のみなるべく出そう。」と述べており、話の重複を気にしていたように思われる。それは『十二支考』内でも同じことであろう。私はこのように考えていたが、先日『十二支考』を読み進めている際に重複している話が出てくることに気が付いたので以下に紹介したい。まずは「猪に関する民俗と伝説」から引用する。
虎と猪が対峙した際に猪が臭いにおいをまとって虎と戦おうとして、そのにおいを虎が嫌がって道を譲ったという話である。この話は「虎に関する史話と伝説民俗」にも引用されている。
南方の記述は異なっているが、話の内容は同じである。この話の重複は何を意味しているのだろうか。話のネタ切れというわけではないだろう。