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「ウルフ・オブ・ウォールストリート」悪ノリ・オブ・昭和モラルハザード???

ディカプリオ、好きですか?

貧しい絵描きの美青年としてタイタニック号の船首で令嬢を後ろから支えていたディカプリオは、すっかり精神を病んだダーティな役ばかりやるようになってしまいました。それでもときどき画面のこちら側を見るようににっこり笑うとき、間違いなくあの顔面の強さ、イケメンぶりが今も健在なのだとわかります。

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は、ディカプリオ演じる主人公が証券会社で大儲けして成り上がったその半生を回想し、時にはこちらに語りかけ、微笑んでくれる映画です。

はい、ディカプリオが大好きです、わたしも。


以下、映画のネタバレを含みます。



野心的ではあるけれど、まだ人間としての常識を持ち合わせていた主人公。バリバリ稼げる証券マンを夢見てやって来たウォール街で、昼から覚醒剤をキメているようなヤバ上司と出会い、ウォール街の悪魔に魂を売り渡してしまいます。念願叶って自分で作った会社で金持ちをだまし・・・人を信用させて、ほぼ違法の株を売り込む仕事。電話応対の台本を作り、集めた仲間たちに喋らせ、会社は調子を上げていく。この会社のはしゃぎっぷりが昭和の汚いバラエティーを煮詰めたようで、パワハラ、セクハラ、悪趣味過ぎて笑えない悪ふざけが横行しています。そして当たり前のように行われる違法行為。出る杭は打たれる? 杭が月まで伸びていても? 

社会人になって最初に出会う上司や先輩って良くも悪くも強く影響受けるよね、という話。ウォール街のしごでき証券マンみんながみんなヤク中とは思えないので、主人公が新卒上司ガチャでたまたまSSRを引いてしまったのでしょう。主人公の人生に強烈にインパクトを残すことになる上司。

ちなみにわたしも新卒で入った前職の会社で教育担当の先輩社員が言ったことでいまだに覚えていることがあります。前職はシステムエンジニアだったのですが、その先輩曰く「ネーミングセンスがない奴は何やってもだめ」なんだそうです。震えますね。

主人公は狂った上司、そして一緒に会社を興すことになる友人にもそそのかされ、すっかり薬物にハマってしまいます。この映画では10分に1回は違法薬物が出てくるのですが、わたしが特に好きなシーンも薬で酩酊しているシーン。友人と一緒に“伝説の薬”を飲んでデロデロになっていたら、友人が喉を詰まらせ呼吸困難に。薬が効いていてろくに動けない。救急車を呼んだら薬がバレて捕まってしまう。どうするか? 出した答えは、アッパー系の別の薬を追加でキメて、無理矢理体を動かして自力で友人を心肺蘇生するというもの。まるでクズの一休さんです。最高にクレバーじゃないですか? 一番好きなシーンです。

ろくでもない主人公ですが、まぎれもなく会社のリーダーなので、たびたび社員たちを鼓舞する演説をかまします。このスピーチが毎回毎回、世界を救う決戦へ出向く兵士を焚き付けるようなカロリーがあります。仕事のやり口は汚く、会社も悪ノリが過ぎるのに、謎の感動があってなんだかいい映画を観ているような気がしてくるので不思議です。

「今すぐ受話器を取って電話しろ! 俺達はテレフォン・ファッキン・テロリストだーーー!!!」

これはさすがにちょっと笑いました。

主人公はめちゃくちゃ口がうまいのに、浮気を取り繕う嘘が妻ナオミには通じず、夫婦喧嘩はいつもステゴロの口喧嘩です。やっとの思いで手に入れた美しい妻と楽園のような結婚式・新婚旅行を過ごした1年半後には、感情爆発夫婦喧嘩がモーニングルーティンになっているの、怖すぎませんか? 貧しい時代を支えてくれた前妻と別れてまでナオミを口説き落として結婚したのに。クズ男ムーブが一貫していていっそ清々しい気すらします。

貧しかった男は成り上がり、栄華を極めて、そして逮捕されます。警察に取り押さえられて「俺はまっとうに生きてるんだぞ!!」と叫ぶ場面があります。まっとうとは。

映画の終わりに「できごとや登場人物はフィクションです」と注意書きがされてはいますが、これは実話を元にしているんだそうです。主人公も同じ名前で実在する人物です。そして! 昭和の香りのする話だと思っていたら、調べてみると主人公が企業した頃にはもう平成だったようです! 謹んでお詫びを申し上げます。

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