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着物姿と新しい季節
最後に着物に触れたのはいつだろうか。
出身が京都だった僕は着物を見かけることは普通の人より多かったかもしれない。友人と祇園のあたりに繰り出せば綺麗な舞妓さんを見かけることも多かったし、大学時代仲が良かったイケイケのお兄さんはヒップホップが大好きでNEW ERAのキャップにNorth Faceのダウンでキメていたけど普段は呉服の職人だった。(正確には着物と呉服は違うけど)
でも実際に自分が着たり、触れたりすることはあんまりなかった。もちろん写真に収めたこともなかった。
1月の最終日、もうそろそろうんざりだと思い始めた冬の寒さを拭い去りたい気持ち一心に浅草の街へ着物を着た友人を撮りに行ったのだった。
僕が合流した時にすでにわりかし日没も近かったので、撮影時間はそんなに長くなかったのだけど、四人もの着物を着た女性を撮影することもあんまりないかななんて思いながらも写真を撮る。
着物が普段の風景に入るだけで雰囲気が変わる。みている方でもそうなのだから、着ている方はもっとだろうなと思う。
京都の呉服屋のお兄さんは、僕が京都を離れる時に食事に連れて行ってくれて、ちょっとしたプレゼントまで渡してくれた。
STUSSYのキャップだった。ロゴもキャップも黒で統一されたカラーで、僕の好きなカラーリングだった。
新たな始まりを迎える僕はそのキャップをお守りのように持っていった。
「ビッグになってくれると思ってる」と坊主でコワモテだけど端正な顔立ちで笑顔がステキな彼がヒップホップな応援をしてくれたことをいまだに覚えている。
当時ヒップホップなイケメン呉服屋アニキは彼女がいなかった。そのことをぼやいていたのを覚えている。世の女性のみんなは喜んで飛び付きそうな設定になってるのに。
一度も仕事をしているところは見たことがなかったので、着物姿は写真だけでしか見たことなかったけど、その出立ちからは必殺仕事人さながらの只者じゃ無い感が伝わってきていた。
いつか写真、撮らせて欲しいな、あの時のイケてるキャップのお礼に。
やけにお腹が空いている。そういえば昼飯食ってなかった。
撮影中、差し入れてもらった人形焼きを一気に腹に入れると、いっそう冷たい風が吹き始めた隅田川の上を飛ぶカモメを眺めながら帰路に着いたのだった。
K
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