ファンコミュニケーションにおけるリーダーの心構え
昨日は、
ファンと一緒にサービスを開発し、
ファンと一緒に拡散して、
いかにしてマネタイズするのか
について時系列的に紹介してみました。
ファンと一緒に
つくって売ることができるのは、
それ以前に、
膨大な時間を使った
重層的なコミュニケーションと、
それによって培われた
強固な信頼関係があることが前提。
では信頼は
どのようなコミュニケーションによって形成されるのか。
今日は、
クラブと顧客をつなげるコミュニケーション
について、
「リーダーの心構え」
という文脈を軸に
まとめていきたいと思います。
■絞って絞って突き刺す
「サッカーが好きな人」
に照準を合わせたコミュニケーション
になってはいないか。
サッカーに今のところ関心がない方々の
「きっかけ」となるようなコミュニケーション
を行っているかどうか。
ファンベースの拡大、もしくは縮小
どちらの未来をつくるかは
絞り具体によります。
クラブ自身が、
「どんなクラブになりたいのか」
を規定し、
「どんな方々に応援してもらいたいのか」
が明確に定義された上で
すべての層に訴えるのではなく、
思い切って絞りつつ、
「ありたい世界観」を、
商品やサービスを通して、
ストーリーにして訴える。
絞って絞って突き刺す思考プロセス
がファンベース拡大に貢献します。
ターゲットを絞ると
マーケットも必然的に縮小しますが
ファンベースは逆に拡大していきます。
みんなに好かれるフワッとした言葉より
「狙った人に狙った言葉で」語りかける方が
振り向いてくれる確度
が圧倒的に高まるからです。
■「外」と「ムダ」に価値は眠っている
ターゲットを絞ったあとは
提供する商品やサービスを
尖らせなければなりません。
刃先を尖らせなければ
ターゲットの心に突き刺さりません。
業界の中にいると、
知らず知らずのうちに、
業界の常識に最適化された
思考と行動を繰り返してしまいます。
業界のベストプラクティス、
つまり「うまくいった事例」はすぐにシェアされ、
同様の取り組みが
業界内に広がっていく。
同じ語源である「真似る」と「学ぶ」
ゼロからアイデア出しをして商品化するより、
成功事例を真似ることで、
身体感覚を伴う学びを
スピーディに何回も行うことができます。
問題は真似る対象が、
業界内にある事例か、外にある事例かどうか。
アウトプットされるものが
どこかで見たような、
その先の展開が簡単に読めるようなものであれば
顧客の心が躍ることはありません。
いかに外の世界に目を向け、
アンテナが張れているかどうか。
一見、ムダに思えるような情報も、
目に見えている部分だけを見てムダと判断せず、
目に見えない「構造」を読み解き、
構造という骨格に自クラブのカラーで装飾すれば、
他クラブと「差別化」できます。
そんな柔軟な発想が
あたらしい価値を創造するきっかけになるのです。
■悪い結果こそ公表する
自クラブのビジョンを見定め
迷うことなく突き進むプロセスでは
いいことも悪いことも、
公明正大にすべて公開すること。
経営のプロセスに透明性がなければ、
「必死にがんばっていること、
成長したいという強い意志」
が人々に伝わっていきません。
意図なく隠す行為は、
人々の心を離れさせます。
いつまでたっても
自分ゴトとして捉えてもらえません。
クラブのありとあらゆる活動に
説明責任が求められる時代。
うまくやり過ごすことができるほど
ファンの目は甘いものではなく、
逃げれば逃げるほど追求され、
同時に信頼も失墜していくことになります。
■自分しかできないことに集中
だからこその日々の発信と共有。
無機質で誠意を欠く、
表層的で刹那的な言葉ではなく、
情熱的で前向きで
明るく力強い言葉で、
クラブのリーダーは、
自らの行動を言語化する労力を惜しんではなりません。
自分しかできないこと(発信)が、
自分じゃなくてもできることに忙殺される
という本末転倒は、
誰も幸せにしません。
仕事なのか作業なのかを分別し、
作業は任せて、
仕事に集中するという
時間管理のセンスも問われることになります。
業界外の一流の人や知性に直接触れること、
もしくは間接的に書籍から学んだり、
上述した「ムダ」を愛でる時間も、
リーダー本人にしかできないこと。
チラシ配りを社員と一緒にしている時間は
リーダーには一秒もないはずです。
■データではなく感性で意思決定する
一朝一夕には得られないファンの信頼。
単年度の業績にとらわれない、
長期的なビジョンに紐づくコミュニケーションは、
顧客データに依存して
硬直的にならない
ということも重要な要素。
過去のデータや実績は、
そのときは有効であっても今も同じとは限りません。
驚くほど早い世の中の変化や
人々の心の移り変わりに対応するためには
データに頼るより、
日常的に
あらゆる業界に触れて培われた
「感性」
に意思決定をゆだねるべき。
データは参考にすぎません。
データがもたらす合理性を優先すれば、
あたらしいチャレンジに逡巡してしまう。
しかしそれでは、
驚きや感動を
継続的に生み出すことはできません。
かように難しいかじ取りを要求される
優秀なリーダーはたくさんいますが、
彼らは皆、
本気で、自分の信念にしたがって
地域に価値提供する覚悟があるものです。
おおげさにいうと
命を賭して志を貫く気概が伝わってきます。
※本稿は以下文献を参考にしました。
空気のつくり方(池田純)