木は哲学者
『木は哲学者』
木は静かだ。
木はいつも考えている。
木は哲学者だ。
木は逃げない。
木は抵抗しない。
そして木はあらゆる生命を助ける。
木に学ぶ
根を思う。
根は土の中にある。
当然のことだが日があたることはない。
根は大事なことを表現する代名詞だ。
根本的、根幹、根性・・・
根は木の全体を支えている。
根は栄養を求めてその枝を伸ばす。
腐葉土が好物だ。
根は心。
黙っている。
姿を現さない。
表からは全く見えない。
だけど根こそ全ての始まりだ。
根がなければ何も生まれない。
根はなんて謙虚なんだろう。
幹は常に一本。
枝の数は多い。
幹は一だ。
数は少ない、だけど枝より大事だ。
幹部という言葉がある。
幹の部分ということだ。
幹は重要だ。
数字は一だ。
だけど幹は一番上に行こうとはしない。
もっと大事な根が、
自分より下にいて
何の文句も言わないことを知っている。
だから幹は枝と小枝と葉と花と実を、
自分より高いところにつける。
幹は偉い。
風の抵抗も木の重力も一人で堪えている。
幹は偉い。
それはかつて枝を体験した。
太い枝をも体験した。
だから木の全ての気持ちが分かる。
葉から相談されても
枝から相談されても理解できる。
だから幹は幹部だ。
幹部だからといって決して誇らない。
だから枝葉よりも低い位置にいる。
幹部は大木も小さな木も変わらず一つだ。
まっすぐ天を向く。
背筋がピンと伸びている。
枝は東西南北どちらにも向かう。
しかし幹はいつも天を向いている。
だから分かれることはできない。
幹は数が増えるのではなく太さが増える。
増えても分かれることはない。
いつも一つだ。
枝は四方八方好きな道を選ぶ。
だから一つになることはできない。
個性をそれぞれ生かしながら
全体の調和とバランスを大事にする。
幹は好き勝手な方向を選ぶことはできない。
分かれることもできない。
境界線もない。
幹は幹だからいつも一つだ。
完全に一つだ。
幹は常に不動だ。
枝は少し揺れることができる。
小枝はもう少し自由がある。
葉は僅かな風でも揺れる。
揺れながら爽やかだ。
そして優しい。
鳥たちの快適な住まいを提供する。
幹は枝をより高い位置に置き、
枝葉は小枝を更に高い位置に置く。
自分の未来をより高くしたいと切望している。
花は最も短い命だが、最も愛される。
花は弱い。
花はもろい。
だけど花は強い。
花ほど人を魅きつけ、
花ほど人の心を和ませ、
花ほど詩になり、
花ほど歌になるものはない。
花は心に直結する。
花は優しい、
与えること以外を考えない。
花は木の顔だ。
花は木の青春だ。
花は咲き、花は散る。
実は木の未来だ。
だから木全体が実を一番大事にする。
最も見晴らしの良い最高の場所に結実する。
だけど実はやがて木から落ちる。
枝伝いではなく真っ直ぐ落ちる。
実は次の世代の根を目指す。
だから自分を最も愛して
犠牲になってくれた根を慕って真っ直ぐ落ちる。
根が行った道を私も行こうと決意する。
新しい未来を最低の位置から出発する。
実は最高の位置と最低の位置を体験する。
高い位置は、
低い位置のお陰であることを知っている。
最高から最低へと落ちたからといって
決して卑屈にならない。
それどころか地面から更に低い地下を目指す。
綺麗でも汚くても関係ない。
栄養があればどんなところでも出かけて行く。
大事な命と未来の芽の為に
実は必死で根を伸ばす。
かつて親が行った道、親の親が行った道、
遙か遠くの先祖の行った道を慕いながら…
実は木の結実だ。
小さいけれど木の全てを受け継いでいる。
そして木の期待を一身に背負う。
実は鳥の好物だ。
実は栄養がある。
実はあらゆる生命を生かす。
幹は使命に生き、
枝は調和に生き、
実は敬慕に生きる。
だから実は誰もが慕う。
実は命そのものだ。
実は他を生かしながら、
慕われながら、自分も生きる。
実には智恵がある。
実には愛が一杯だ。
自分を犠牲にして他を生かす。
そして誰からも愛される。
実は未来を約束するタイムカプセルだ。
実には過去が凝縮されている。
そして今を代表している。
更に未来の全てが格納されている。
木は実を育て、実は木の未来を約束する。
実は命を宿している。
実は固い。
実は冬をいくつ越えても弱音を吐かない。
実は理想を持っている。
夢を持っている。
ビジョンを持っている。
目的を持っている。
今は暗い土の中だが、
今に見ていろ、芽が育つ。
土を突き破って地表に出る。
そして堂々たる大木を目指す……
この木の生き方こそ
和の国、日本の姿。
根は木を支える一番大切な存在でありながら、
最も暗く、汚く、誰も行きたくないところを
真っ先に行き、文句を言わず、
栄養を幹や枝や葉や花や実に送ります。
その幹、枝、葉、花の結実である実が
地に落ちてまた、根をはります。
根は未来の結実のために、
苦労を一身に背負い、
実はその過去に感謝して、
更に次の未来の結実へと繋げていく…
当に日本はこの「木の心」のような繰り返しで
出来てきた国なのではないかと思います。
自然界は愛に溢れています。
自然に学ばされることもたくさんあります。
木の根となり、未来の結実のために
苦労の道を感謝で歩むことのできる
「木」の心が
一人でも多くの人に育ちますように。