仕事納めの報告に来る人にドロップキック
「世間は仕事を納めたらしい」
「僕も納めました」
「それを笑顔で言いに来る人は、俺のことをどう思ってるんだろうか」
「かわいそうの一言です」
「いつでもドロップキックをする準備はしてるんだけどな」
「どれぐらい休んでないんですか?」
「9年間、仕事納めという概念が無い」
「シベリアの人でももう少し休んでますよ」
「俺、何も悪い事してないんだけど」
「毎日次の日があるってどんな感じなんすか?」
「うーん、一言で言うのが難しいんだけど…」
「大丈夫ですよ」
「地獄」
「一言で言いきった」
「考えてみろよ、誰だって嫌だろ」
「都知事は週休3日制の導入とか言ってますもんね」
「神ですら7日目には休んでたのにな」
「9年間でどれぐらい休みました?」
「営業しなかった日は全部で10日ぐらいじゃないかな」
「営業してなくても仕事はしてたと?」
「マシンメンテナンスの日も店に来てたし、心が折れた日もnoteを書く為に店には来てたね」
「病気だ」
「俺もそう思う。だから常日頃から言ってる事があってね」
「なんですか?」
「誰かちょっとだけ轢いてくれないかなって」
「物騒です」
「今ならLUUPもあるしさ、あれでちょっと接触してもらって怪我をしてね、相手の保険で休みながらお金を貰おうかと」
「当たり屋の思想!」
「そうでもしてくれないと休めないからさ」
「何でそんな事になったんでしたっけ?」
「最初は売上が無かったからだよ」
「それはしょうがなくないですか?」
「しょうがないとは思うし、それで定休日を作らないって発想をする人はいないと思う。でも、俺は嫌だったの」
「何がっすか?」
「それで潰れるのが」
「大袈裟に考えすぎじゃないですか?」
「でもな、カフェって潰れやすいんだよ。この前ねマシンメンテナンスに来てくれた人に聞いたんだけど、3年で半分は潰れてるんだってさ」
「そんなに!?」
「うちのエリアが奇跡らしくて、全部生き残ってるほうがおかしいらしいよ」
「そうなんすね」
「でね、簡単に潰れるって知ってるのに、頑張らないって意味が分からなくない?」
「まあそうですけど」
「そこそこの借金をしてさ、自分のやりたい事を始めたのに、何で潰れるような事をするの?」
「気力と体力が持たないからです」
「気力と体力よりも、俺は恐怖が勝ったんだよ」
「何のですか?」
「借金の」
「エイジさんは真面目ですからね」
「よくさ、借金してるのに散財する人いるだろ?」
「ギャンブルをやる人もいますね」
「俺はあれが許せない質なの。その金で借金返せよ派閥の長でさ」
「そんな派閥は初めて聞きましたけど、分からなくもないです」
「それがお店の運営にも適応されてしまい、借金してるなら働けよとなる」
「かわいそうに」
「休んで売上を捨ててまでやりたい事がなかったという説もある」
「友達がいない事が功を奏したんすね」
「遊び人じゃない性格もストイック営業に拍車をかけまして」
「それが仕事納めの無い今に繋がると」
「あとは、バカにする人がいたってのもある」
「バカに?」
「休みなく営業するなんて出来るわけがない言われてね」
「バカにじゃなくて心配ですよ」
「いいや、あれは嘲笑だったな」
「それを見返す為に続けてしまったと」
「あんな安い挑発に乗らなきゃよかったよ」
「それで今も休んでないと」
「あとな」
「何個あるんすか!」
「このスタイルで喜んでくれる人が1人でもいると思って」
「急に良い話!」
「俺がいれば、人を助けられるかもしれないと」
「天才外科医からしか聞けないセリフ!」
「まあそんな感じ」
「物凄い尻すぼみ!」
「続きは明日な」
「はい、また明日」