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口を噤む
「やってると思いませんでした」
「何のお店ですか?」
「どれが美味しいですか?」
言い方や、表情、振る舞いなどで、心がささくれ立つ言葉です。
「おかしな事を言ってるかな?」
そう思うでしょう。
傍から見ればそうなんですが、当事者となると、微妙に、ちょっと、ざわっとします。
「やってると思いませんでした」
確かにうちの店は暗い。
でも、OPENの看板や、テラスに椅子もあればテーブルもあるし、インスタグラムは毎日更新しています。
ずっと店の外でスマホを眺めていたけれど、何を確認していたんだろうか。
そして、やってると思わない。と僕に告げるのは、お店に落ち度があると伝えたいんだろうか。
「いやいや、勘繰りすぎ」
と、思うかもしれないけど、じゃあ何の為に言ってくるんだろう。
「ただのスモールトーク」
だとしたら、センスがない。
あと、半笑いで言ってくると、何がどうであれ気分は良くなくて。
思ってたとしても、心の中に留めておくように。
「何のお店ですか?」
開口一番そんな事を言ってくる人もいます。
これが、嬉しそうに、楽しそうに、朗らかに。
本当に何も知らずに入りました。
そんな人なら喜んで説明しましょう。
分かりづらいですからね、うちの店は。
でも、不審な素振りで、手にはスマホを持ち、明らかにうちを知ってる人だと。
うーん、冷める。
これも結局は聞き方だったり表情が大切なんだけど。
「どれが美味しいですか?」
これは言葉の選択ミスですね。
悪気もないでしょうし。
これも、しおらしく、控えめに、多すぎて選べない、汗汗。
みたいなのが垣間見えたら、僕も甥っ子や姪っ子と接する時のように、仏の心で対応します。
ただ、「どれが美味しいっすか。ハハ」みたいな。
どこぞのマイルドヤンキーみたいな口の利き方だと、仏の顔も引っ込んでしまうのです。
3度とか無いから。
やはり、中身よりも言い方なんでしょう。
振る舞いや、服装なども関わってきますね。
それらに自信がない人や、知らず知らずに周りを不快にさせてしまう人に、一つだけアドバイスがあります。
口を噤む事を覚える。
無理して会話をしなければいいんです。
本当に困った時だけ、聞きたい事がある時だけ話しましょう。
自分の言動で相手がどう思うかを想像出来ない人は、簡単な会話は向いてないのです。
だから、口を噤む。
それだけで、周りの人が生きやすくなると思うので。
ちょっと厳しすぎるかな。
でも、お店にいると本当に多いんだよな。
ちょっとずつちょっとずつ削られていくんです。
RPGで言うところの、毒のエリアを歩いているような。
お客さんに対して、毒のエリアなんて表現する奴こそ口を噤むべきか。