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多店舗展開をするとしたら
「この時代に店を増やすぐらいなら投資しようぜの続きな」
「資本主義にどっぷり浸かってるエイジさんの話っすね」
「初期費用、人手不足、明るくなりそうにない未来<S&P500。これが俺の考え方なの」
「えらいネガティブ」
「そう、俺はネガティブで人も信用してないから、こんな判断になっている」
「なるほど」
「スケルトン返しなんて無駄な費用、こいつがいつまでも働いてくれる訳がない、日本の未来が明るいだなんて思えない」
「お先真っ暗」
「これが株ならな、売りたい時に売れて、誰の顔色を伺う必要もなく、社会保険料だ厚生年金だとかを考えなくていいわけ」
「あらゆる面で楽だと」
「そう。お金だけのリスクリターンだけじゃなくて、従業員とのコミュニケーションコストとか、国の制度の改悪とかを考えると、市場との会話のほうが楽でさ」
「エイジさんらしい考え方っすね」
「そもそも一店舗やっててな、それがやりたい事のはずだったのに、自分の目の届かない所で誰かにやってもらう意味って何なのとも思うし」
「多店舗展開の所を敵に回しますよ」
「雇われ店長もさ、売上も利益も色々と分かる訳じゃん?その利益と給料を比べてみなよ。ずっと続けようと思う?」
「まともなお店だったらちゃんと給料に反映されるはずですけど」
「そんなお店がどれぐらいあるよ。近所のコーヒー屋なんて店長でもバイトなんだから」
「時給店長」
「安い給料で自分以外を働かせないと成り立たないなら、なぜ店を出すんだと憤ってるぐらいだ」
「カフェで働きたいって人の足元を見てますね」
「ただぁ!例外もある」
「ようやく昨日の続きか」
「俺の知り合いに、働いている人の為に店を出してる人がいる」
「働いている人の為とは?」
「しっかりきっちり話した訳ではないんだけど、働いてくれてる子が挑戦したいという時に出店するんだってさ」
「社長都合じゃないと」
「そう。店長やりたいとか、新しいお店でゼロから挑戦してみたいって人がいると、店を出すと」
「変わってますね」
「変わってると思う。でも、これがお店を増やす時の一番の正解な気がする」
「何でですか?」
「まず、働かされてる感がないでしょ、きっと。自分でやりたいって言い出したんだから、そこで必死に頑張るはずだし」
「まあそうか」
「現場と経営者との距離も出来づらいと思うしね。だから組織が崩壊する確率がぐっと低くなるはずでさ」
「人間不信で人を雇わないエイジさんの対極ですね」
「そうね。信頼してる人が声を上げた時にだけ出店するって理想だと思う」
「人手不足は信頼関係不足で起きると」
「無理な出店、現場との距離、やりがい搾取→人手不足」
「他にもあります?」
「あとは、やりたい事が明確な人は店を増やすしかないかなとは思う」
「ちょっと抽象的っす」
「俺はさ、あくまでも自分の財布で考えた結果、店&S&P500ポートフォリオ論を提唱してるのね」
「&が多いやつっすね」
「でも、お店をやる人って財布ばっかり気にしてる人も少なくてな」
「やりたい事が最初にきますもんね」
「ただ、続けていく過程で色々と学び、財布の紐が固くなったりするんだけど、ブレない人も中にはいてね」
「こだわり強男ですか?」
「真面目にやってる人をちゃかすな。でも、そんな感じ」
「俺の味を広めるんだ!みたいな?」
「そんな人もいれば、浅煎りの文化を広めたいとか、小規模農園を救う為もあるだろうし、街の発展の為にとかって人もいる」
「エイジさんの小ささが浮き彫りになりますね」
「そうなんだよ。でも志の高さと、背負えるリスクはきちんと考えたほうがいい」
「どちらかが正解ではないと」
「そう。行き着く所は『何の為に生きてるか』みたいな壮大な感じになるから、志が高いほうが勝ちで、財布の紐が固いのが負けってわけではない」
「人生は勝ち負けじゃないっすもんね」
「Tomorrow never knowsみたいなこと言うな」
「心に桜井さんを宿してるんで」
「店を増やすのが成功って価値観に捉われず、何の為にとか、どう生きたいかの軸で考えましょうねって話」
「エイジさんの小ささをごまかす為の言い訳ではないと」
「断じて」
「自分さえ良ければいいと思ってないと」
「丸っ切り」
「ふーん」
「これが信頼関係構築に失敗した例」
「多店舗展開が出来ないわけだ」