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需要と供給

「結局は需要と供給なんよ」

「なんか嫌な会話の仕方ですね」

「アホに諭すみたいだろ」

「誰をアホ扱いしてんすか」

「いやな、昨日の豆乳を置く置かない問題あっただろ?あれだってな、そういう話って事でさ」

「さっぱり意味が分かりません」

「例えば、街にコーヒー屋が一軒も無かったら、俺は何でもやってると思う」

「カフェラテ屋ですらないと?」

「そう。ドリップもするし、豆乳どころかオーツも置くし、席もあれば焙煎すらしてるかもしれない」

「そんなに変わります?」

「自分のやりたい事よりもさ、その街に何が必要かを考えるべきだと思うんだよ」

「そうっすかね」

「街に根付こうと思うなら」

「根付く必要は?」

「ある。インバウンドに全振りするなら必要ないかもしれないけど、基本的にリピーターで成り立つ商売だからな」

「やりたい事よりも、街に必要な事のほうが大切だと」

「そう。うちがね、やれカフェラテ屋だ、やれオーツなんていらない、ドリップが飲みたい人は他の所に行ってくれって言えるのは、近所に他があるからなんだよ」

「なるほど」

「だから、俺は怒っている」

「何に?」

「あれもやれこれもやれと言われる事に」

「オーツを用意しろ、キャッシュレス対応しろって事に?」

「席はないんか、フラットホワイトを提供しろ、サンドウィッチをだせとか」

「色々言われるんですね」

「だから俺は何回も言ってるの。呼んでないと」

「そんな事を言ってるカフェの店主なんていないっすよ」

「でも、思ってる店主は俺以外にもいると思う」

「そうかな〜」

「だから代表して怒っている」

「でた、頼まれてもないのに代表ヅラするやつ」

「呼んでないのに来てさ、あれをだせこれをだせっておかしくない?」

「田舎の寄り合いでも冷たい視線を向けられますね」

「だろ?お金を払ってるかもしれないけど、その為にやってる訳でもないしな」

「そこを勘違いしてるお客さんは多いでしょうね」

「だよな。お金の為にやってると思われてるから、お金を払えば何でもしてくれると思っている」

「頼んでもないのにアドバイスしてくるとかも」

「そう。売上を伸ばす為なら何でもすると思われている」

「実際は違う?」

「絶対に違う」

「そこが難しいですね。お金の為じゃないって言ってるなら無料で提供しろってなりそうですし」

「何でアホは極論になっちゃうんだろう」

「アホだからです」

「フォローが入ると思ったのに」

「僕、アホには厳しいんで」

「優しさは必要だぞ」

「エイジさんに言われるとは思いませんでした」

「とりあえずな、他に選択肢があるんだから、わざわざ来て文句を言わないでくれって話」

「コーヒー激戦区だからこんな店になっていると」

「そう。何でもやってたら埋もれちゃうし」

「選択と集中ですね」

「供給過多だからこそ、少ない需要をがっちり掴みにいってる」

「それをアホは理解出来ないですもんね」

「ちょっとアホアホ言い過ぎだぞ」

「でも、関西では褒め言葉でもあるんやで?」

「取ってつけたような関西弁を使うな」

「ほんまやて」

「それよりも急なタメ口!」

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