
【イベントレポート】「第9回なぜ青梅でアートなのか 」(ゲスト:茂木あかね)
こんにちは。
合同会社ARTの地産地消は、「アートの力でクリエイティブで豊かな市民生活を実現する」をビジョンに掲げ、地域住民の皆様と地域で活動するアーティストの交流を積極的に推進していきます。
その一環として、「なぜ青梅でアートなのか?」というテーマのもと地域で活動するさまざまなアーティストと代表の井上がお話しするトークイベントを定期的に開催しています。
今回は、9月14日(土)に開催されたトークイベントの様子をまとめました。東青梅でネイリスト兼チョークアーティストとして活躍されている茂木あかねさんのお話をお楽しみください。

ネイリストになるまで
井上正行:それではよろしくお願いします。初めに簡単な自己紹介からお願いします。
茂木あかね:はい、初めまして。私は茂木あかねと言います。現在青梅市に住んでいて、 自分のお店でチョークアートの教室と作品制作をしています。元々ネイリストですので、ネイルのお仕事も行っています。
井上:生粋の青梅人なんですよね。そんな青梅人がどうやってネイリストになっていくのか、教えていただけますか。
茂木:はい。私は、20年以上ネイリストとして仕事をしてきました。
初めてネイリストになろうと思ったのは、高校生の時です。多感な時期で、おしゃれもいっぱいしたい年頃ですよね。
当時、私は自分の爪にコンプレックスがありました。そのため最初は、自分で自分の爪を手掛けたいと考えました。だから、高校を卒業したらネイルの学校に行こうと決めていましたね。
井上:今はご自身の爪を好きになりましたか?
茂木:今は好きです。コンプレックスを隠せるほほ方法を見つけたので、 爪に対してコンプレックスは感じていませんね。
井上:専門学校などに行かれたのでしょうか?
茂木:ネイリストになるためには国家資格などが必要ないんですよ。教習所のように、自分で団体に申し込みをして、お金を払えば入れてもらえるんです。
井上:すると、ネイリストの協会などから免許をいただくようなイメージですか?
茂木:そうです。ネイリスト協会があります。検定が1年に2回、春と秋にあって、 そこで検定を受けて、ライセンスをいただきます。例えば、1級ならば、これくらい、2級だったらこれくらいのレベル、と決まっているんです。
井上:逆に検定を受けていない方でもネイリストとして働くことができるということなのでしょうか。実際に、検定を受けた人とそうでない人とで明確な違いなどはありますか。
茂木:できないことはないですけど、資格があると信頼につながるので、受けた方がいいかなと思います。私が受検した20年前は、取得して当たり前でした。違いについてですが、あると思います。そう信じたいですね(笑)
今は色々な人たちがいるのでなんとかなるのかもしれませんが・・・
井上:資格取得を目指したのはいつくらいだったのでしょうか。また、どれくらいの頻度で通われましたか。
茂木:高校を卒業してからは、ネイル学校に行くための資金を貯めていました。2年くらいフリーターをして、学校に入ってからは1年くらいで取りましたね。
通う頻度は様々ですね。週1回の人もいれば、週2回の人もいます。会社に勤めながら、 土日に通うなどして、1年半とか、2年かけてとる人などもいます。
井上:1年くらいで取得したと聞きましたが、資格取得に向けてどれくらいの時間が必要なのでしょうか。
茂木:資格取得にあたって、時間が決まっていました。例えばこのコースは200時間とか、この検定を通りたかったら300時間とか。
私はオーソドックスに、プロとしての技術を身につけるために、週1回、1年かけて、数100時間のコースに行きましたね。
井上:それが、19歳か20歳くらい頃のお話ですか。
茂木:20歳くらいですね。
井上:その後に、ネイルサロンの会社に入社するのでしょうか。
茂木:そうですね。私が通っていたネイルスクールには、ネイルサロンが併設されていました。スクールを卒業した人たちは、大体そこでジュニアネイリストとして研修していました。そこでキャリアを積んだら、それぞれ旅立っていくといった感じでしたね。
井上:茂木さんはその後、どのようなキャリアを積んでいったのでしょうか。
茂木:私は併設のネイルサロンで働いていましたが、サロンが、スクールに力を入れることになりネイルサロンを閉めることになりました。その時、一緒に働いてた人が自分で国立にお店を出すということだったので、お声がけいただき、13年ぐらいそこで働きました。
井上:最初は自分のコンプレックスからスタートして、今度は他人の爪を扱う仕事をするようになると、これまでとは違う感覚を持つことになると思うのですが、その辺りはどうですか。自分の爪に対する関心から他人の爪を扱うようになっていく際の感覚の変化のようなものを知りたいです。
茂木:元々は自分の爪さえできればいいやって思っていましたが、 いよいよ就職となった時にこれは接客業だと感じるようになりました。やり出してみて、初めて気づいたのですが、楽しかったんですよね。人の爪を綺麗にするっていうことが。
私はこういうところが嫌だと思ってても、そう思っていない人がいることにも気づきました。
井上:逆に、素敵だと思ってくれる方がいることに気づいたということですね。
茂木:はい。お客様から私の爪に対して「すごくきれいですね」と言ってくれることがありました。
そういう気づきを得ることで、人の爪をきれいにすることが楽しくなってきました。
井上:逆に全然楽しくないことはありましたか。
茂木:基本的にはないですね。
井上:そうですよね。楽しくないと20年も続けられないですよね。
茂木:基本的に喜んでもらえることの方が多かったです。「こんなにきれいにしてくれてありがとうございます」とか、「これでまた明日から仕事頑張れます」と言ってもらえていました。
仕事と対人関係について
井上:自分は今まで一つの仕事を続けることができなかったので、お話を聞けてよかったです。
組織にいると複数人の人たちと関わらなければいけないので、どうしてもいざこざが生じてしまうと思うのですが、ネイリストは基本的に1対1の関係でお仕事をしますよね。ここに仕事を楽しむ秘訣があるようにも感じます。
茂木:それはありますね。ネイリストも組織では動くけど、結局は1対1ですね。だから、楽しいです。1時間半とか2時間ぐらいずっと対面でいるので、いろいろなお話を聞けますし。
井上:占いのような雰囲気になることもありますか。例えば急に「私はこんなに辛い人生を送ってきました」みたいな話を聞いてしまうとか。
茂木:そういうこともありますね(笑)
そこまでのお話を聞くことはないですが、基本的に聞く側の方になるのでそうですね、多分ちょうどいい距離感なんだと思うんですね。
月に1回ぐらいしか会わないし、そこまで親しい関係でもない。女性同士だから、家事の家事、育児のこととか、恋愛のこととか、そういうことを気軽に話せるような雰囲気があるのだと思いますね。
井上:お客さんがいて、茂木さんが施術をして、そしてメインの爪がある。モテギさんは爪を見ているけれど、お客さんは茂木さんを見ている。こうした3つの関係があることによって、変な雰囲気が生まれないようになっているのかもしれませんね。邪魔してはいけないと思って、少し遠慮するのかもしれないですね。
井上:今ふと思いついたのですが、10年間も同じ人の爪と向き合っていると、その間に爪の形や特徴が変わってくることはありますか。
茂木:変わってきます。
井上:それは、どういう理由で変わるのでしょうか。そもそも変わってしまうものなのでしょうか。
茂木:爪の形が整っていきますね。
井上:それは、年齢を重ねることによってですか?
茂木:というよりも、定期的にお手入れをすることで見栄えが良くなってくるということですね。
井上:歯の矯正や整体のようなイメージでしょうか。
茂木:そうですね。
チョークアートとの出会い
井上:ところで、20年のネイリスト生活の後に、チョークアートと出会ったようですが、そのきっかけはなんだったのでしょうか。
ちょうどコロナの時期でしたよね。
茂木:チョークアート自体を知ったのは、おそらく今から10年前くらいのことでした。当初は趣味感覚で始めようとしていましたね。例えば、高校生の時はネイルチップを作ることなどが趣味だったのですが、それがなくなってしまったんですよ。趣味が仕事になってしまったので。
それで、何か趣味になるものが欲しいなと思って、出会ったのが「大人の塗り絵」だったんです。これにしばらくハマっていたんです。
井上:確かに、一時期流行りましたよね。やはり、何かを塗るということが好きなんですね。
茂木:そうなんですよ。子どもの頃から塗り絵が好きだったんです。
それで、30色や50色ある色鉛筆を買ってきて、ずっと塗り絵をしていたんです。しばらくやっていたのですが、さらにもっと別のことをやってみたいと思うようになりました。
それである時近所のジョイフルホンダにいったんです。何か見つかると思ったんですね。その時にチョークアートのキットと出会いました。でも、その時は買わずに、チョークアート教室に興味を持ったんです。
井上:後の師匠との出会いに繋がるんですよね。
茂木:はい。ジョイフルホンダで、チョークアートのお教室をやっていることを知れたので、参加することにしました。それが師匠との出会いですね。師匠は、私と同じネイリストであったので、私にもできるのではないか、という気持ちにさせてくれました。同じような道を辿ってきているのだと思えたので。
新しい趣味を見つけられたので、それから教室に通い続け、今に至っています。
井上:チョークアートを教えるには資格などが必要なのでしょうか。
茂木:はい。チョークアートを教えるための資格を取りました。協会があり、そこに資格制度があります。
井上:そうなんですね。チョークアートにはどのようなルーツがあるのでしょうか。
茂木:私のチョークアートのルーツは、オーストラリアですね。
元々は、イギリスから移民と共に渡ってきたという歴史があります。イギリスはパブの文化がありますから、黒板に白いチョークで描いたり消したりをしていたんですね。
それが、よりアーティスティックで耐久力のあるチョークアートに発展していきました。ちなみに、チョークといっても、実際はオイルパステルというクレヨンのような柔らかい素材を用いて描いています。
井上:すると、オーストラリアではメジャーなアートといえるのでしょうか。
茂木:そのようですね。例えば、看板を作るとなった時は、描く手段の中にチョークアートが入っています。
井上:々の生活の中にもうしっかり根付いているということですね。黒い板に描くのは、やはりルーツとなっている黒板がいまだに影響しているということなのでしょうか。
茂木:そうだと思います。ですが、現在では様々なカラーバリエーションが生まれているようです。でも黒の方がパキッとして映えるので、基本は黒になっていますね。
井上:先駆者的な方がいらっしゃったのでしょうか。
茂木:1990年代に、モニーク・キャノンという方がお教室を始めて、チョークアートを広めはじめたんですね。
それからは、日系企業がPRに関わるようになりました。そのため、たくさんの日本人がチョークアートを学ぶようにもなりました。チョークアート留学のような形で、数週間住み込みで学ぶ方もおります。私の師匠も、モニークさんから直接指導を受けました。
井上:ありがとうございます。話が少し戻りますが、2022年にチョークアート事業を開業するに至った決め手はなんだったのでしょうか。
茂木:コロナですね。この頃、私は吉祥寺で働いていました。国立で働いていた時よりも、遠くなっていましたし、コロナの影響で接客がしづらくなっていました。通勤やコロナの不安もあって、何か別の職を身につけようと思ったんです。これをきっかけに本格的にチョークアートを学びましたね。
井上:コロナ禍で不安がつのる中、開業するには勇気が必要だったと思いますが、なぜ一歩を踏み出せたのでしょうか。ネイルとチョークアートとを両立しようと思えた理由などあれば教えていただきたいです。
茂木:なぜでしょうね。ネイルはネイルで楽しかったのですが、十分やってきた、という感覚もありました。次のステップを踏み出す機会を探していたのかも知れません。
ネイルとチョークアートの違い
井上:ありがとうございます。
ネイルとチョークアートを比較して似ているところなどはありますか。
茂木:私は全く違うと思っています。
井上:どういうところが違いますか。
茂木:まずは、大きさが違いますよね。爪と黒板とではだいぶスケール感が変わります。
よくネイリストだからチョークアートもできるんだねなどと言われることがありますが、 私自身、ネイリストとしてのアートは不得意なんですよ。
井上:ネイリストとしてのアートとはどういうものですか。
茂木:例えばネイルにお花を描いてください、とか。そういうのは苦手なんですね。できるだけ避けるようにしていました。
井上:なるほど。チョークアートでは、豪快に筆を進めることができるということですね。
茂木:そうですね。それと、かかる時間も違いますね。例えば、今日お持ちした作品は40時間くらいかけて制作しています。

井上:どのようにして描き始めるのでしょうか。
茂木:私は右利きなので、左上から描いていきますね。そうしないと、手などが当たって擦ってしまうんですよ。
井上:この絵の場合、何色くらい使用していますか。
茂木:7、8色くらいですね。
井上:一般的に何色くらい使用するのでしょうか。
茂木:私は29色あるセットの中から色を選んでいきますね。チョークアートを描く際、色を塗った後に指で混ぜるようにしてグラデーションを出していくんです。
たくさん色を使った方が鮮やかになるような気がするかも知れませんが、たくさんの色を混ぜるときれいな色にならないんです。そのため、色数は絞ったほうがはっきりとした色合いになります。
緻密な作業と「1ミリ」のこだわり
井上:チョークアーティストとして活動する中で、茂木さんの得意分野や、茂木さんらしさが発揮される瞬間にはどのようなものがありますか。
茂木:似顔絵だと思います。最初はやるつもりがありませんでしたが、やったことのないことにチャレンジしてみようと思い、師匠のレッスンを受けましたね。今は似顔絵が売りの一つになっています。
井上:似顔絵が得意になってから、お仕事の幅も広がりましたか。
茂木:そうですね。ウェルカムボードを制作するときなどは、似顔絵を入れてくれる方が増えた気がしますね。似顔絵は自信はあるけど、うまいでしょ、みたいには思っていません。
でも、似顔絵を渡したときにお客さんが笑ってくれるんですよ。それが嬉しいですね。

井上:実際、かなりそっくりですし、特徴を捉えていますもんね。今回お話し会にお呼びしようと思ったきっかけも似顔絵でした。旦那さんの似顔絵をみて、びっくりしたんですよね。これは上手だな、と。ただうまいだけでなくて、その人の特徴というか、表情の機微みたいなものを正確に捉えているなと感じました。
似顔絵を描く際は、どのようにしていますか。
茂木:私は対面で似顔絵を描くことができないんです。よくあるじゃないですか。ショッピングモールとかでも見ながら、ぱーっと描いてしまうのが。あれはできません。
井上:写真をみながら描くのでしょうか。
茂木:携帯をイーゼルに挟むなどして、大きくしたり小さくしたりしながら描きますね。
井上:結構緻密な作業をされているんですね。
茂木:そうですね。1ミリ単位で違いが出てしまうので。口角が1ミリ下がっているだけで、違ってしまうんです。そこは試行錯誤しますね。
井上:極小と極大を行ったり来たりできるのは、個人的には結構重要なスキル、考え方だと思います。
茂木:ネイルをやっていた時に、例えばお客さんからこういう感じにしてほしいんですよって画像を見せられることがあるんですね。
その時、瞬時に何色を使ってるんだろうとか、この色はどうなっているのか、など頭の中ですぐ考えていました。
チョークアートを描く時にもこのような経験が活きているのだと思います。観察する力が役立っていますね。
だから、あえて逆向きにして描くこともあります。普段見慣れていると勝手に脳が補正してしまうので。
井上:逆向きに描くテクニックは、チョークアートで培ったものですか。
茂木:そうですね。こうしたテクニックも師匠に教えてもらいましたね。そのため、1日でかけるものでも、1日では絶対終わらせないんですよ。 今日これでいいなと思っても、次の日の朝見たらなんか違うとかがあるんですよね。
井上:こういう作業をしていると、40時間にもなってしまいますね。
茂木:そうなんです。しかも、似顔絵は何日かに分けて描くことなどもあります。
井上:描きにくい対象などはありますか。
茂木:美肌加工がしてある画像などは、あえて解像度を落として描くなどしていますね。シワやたるみがあった方が、人間らしさが出てくるので。そのため、赤ちゃんは難しかったですね。つるんとしているので。
あとは、透明感を表現するのは難しいですね。ガラスなどはいいのですが、うどんのつゆなどは難しいですね。
井上:興味深いお話を聞かせていただきました。本日は、ありがとうございました!
茂木:ありがとうございました。
お知らせ
アトリエ利用者募集中!
現在、「THE ATELIER」の利用者を募集しています。2024年の8月1日以降から利用可能です。見学するだけでもとても嬉しいです!
随時募集を受け付けております。
トークイベント「なぜ青梅でアートなのか?」
10月12日、26日にはシネマネコ代表の菊池さんとなぜ青梅で映画館なのかについて、開業してから地域にどんな変化が生じたのかについてなどをお話しします。
そして、写真家の奥村さんとは青梅とバリ島を行き来する生活について、自身のルーツであるフラメンコダンサーの写真や、現在のバリ島での写真撮影についてなどをお聞きします。
THE ATELIERで開催しますので、見学も兼ねてぜひいらしてください!
■第11回ゲスト:菊池康弘氏
日付:2024年10月12日(土)

■第12回ゲスト:奥村よしひろ氏
日付:2024年10月26日(土)

いずれも
時間:14:00開始 15:00終了予定
場所:THE ATLIER(青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204)
定員:15名
参加費:1000円(資料代)当日お支払い
主催:合同会社ARTの地産地消
連絡先:lplc.of.art@gmail.com/0428-84-0678(喫茶ここから内10:00-18:30/担当:風間真知子)
おわりに
イベントのご案内はもちろん、その他会社の詳しい内容は直接私たちにご連絡いただけると幸いです。
会社の拠点となりますTHE ATELIERには、同じフロア内に喫茶店を併設しております。基本的には定休日なしで営業しておりますので、お気軽にご来店いただき、お話出来たら嬉しいです。