『詩 ロクデナシの1人』
寡作だがそこそこイイ詩を書くカビ
素敵な1軒家に住むカビ
年に数回ガールフレンドに会うために南国へ出かけるカビ
ロクデモナイ詩人たちの中では生活にゆとりがあるカビ
数万円はするTシャツをいつも着用し、
ピカピカの高価に見える革靴を履くカビ
髪はサーファーのようにセクシーで、
歯は天然塩を使って磨くので歯茎は乙女のピンクのカビ
「どうやってそううまくやってるんだ?」ロクデナシの詩人の1人が言う
「赤い封筒とピカピカのコインさ」カビは言う
伸びた前髪を耳にかけるカビ
鏡に映る自分の姿をセクシーだと思うカビ
引き出しの中でキラキラ光るコインに手を伸ばすカビ
子犬の声であの子の耳へ洒落たグラスビールを注文するカビ
大声は下品だと罵るカビ
テーブルを拭くあの子のケツを眺めるカビ
ウズウズする2つのボールに悪態をつくカビ
運のいいやつを見ると中指を立てるカビ
自分じゃ気づいていないがジワジワ年老いていくカビ
引き出しの中でスヤスヤ眠る赤い封筒に思いを馳せるカビ
馴染みのカフェで懸命に働く女の子たちのケツを眺めるカビ
ケツを眺めているが、膨らんだ胸のほうが好きなカビ
カビの生えたカビ
気がつけば増えている小さな闇を嫌悪するカビ
昔話を聴いて眠りに落ちるカビ
罵って、罵って、罵りまくるカビ
汚れた言葉を吐いてデトックスするカビ
ぶら下がったボールに指示された愛を求めて路頭に迷うカビ
褒められたいカビ
自分の詩を過大評価しているカビ
口には出していないがロクデナシどもの詩を
何度も読み返しているカビ
どこにでもいるカビ
昨日も見かけたし、今日も見かけた、明日も見かけるに決まっている
詩を書くカビ
女の子のケツを眺めるカビ
何を欲していたか忘れたカビ
カビはいたるところにいる