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12泊13日の東インド・ウエストベンガル~いまどきムスリムA氏の実家の食卓1


まずは、お米が基本中の基本

泊まらせていただいたのはイスラム教徒のお家です。A氏はオーディオと釣りとバイクが大好きで、奥様Rさんはいつも華やかな衣装に身を包み、宗派問わずのインド系ダンスミュージックが大好き。そして息子のA君は2歳9か月にしてすでにスマホのYouTubeやゲームを使いこなすデジタルキッズ。

A氏は38歳、Rさんは28歳。実に若々しく明るい、いまどきのヤングファミリーなのです。

A氏の職業は料理人。北インド料理、パンジャブ料理、南インドのティファン類、そしてここウエストベンガル料理を得意としています。が、お家でのご飯は基本的にRさんが作っているそうな。

彼らの普段の食事はどんなものなのか。ムスリムはいわゆるノンベジ、とのことで、日本ではまるで毎回肉を食べているといったイメージを持つ人が多いようですが現実はまったく違っていました。

「肉は食べても月にせいぜい2,3回。チキン、ビーフ、マトンの順でマトンは高級過ぎて年に数えるほどしか食べません。でも魚なら週に2,3回。多ければ一度の食事に2種類の魚を食べることもあります。普段からよく食べているのは豆と野菜、そしてライスです」

A氏のお宅のお米。「Silky Sortex Rice」と呼ばれるもの。パーボイルドライス。


そのライスも日本人のイメージとはちょっと違っていて、バスマティライスのような長粒種を食べることは殆どなく、基本的には日本と同じような短粒種。でも日本のそれとは食感も味も違っていて、やや黄味がかっており籾のような特有の香りがあり、いくら茹でても粘りがなく、プチプチとした歯応えがします。

これはパーボイルドライスと呼ばれるもの。一度A氏が作るところを見せてくれたことがあるのですが、籾ごとボイルまたはスチームしてから天日干しして脱穀した米のことです。こうすることで病害虫除けにもなるし、高温多湿でなおかつ冷蔵庫などない環境でも保管が利くわけです。

2021年、元農家のA氏がパーボイルドライスを仕込んでくれました。

「少なくともこの地域では、パン類はチャイ屋やレストランなどでよく食べるものの、家で食べることはまずありません。家ではみんなパーボイルドライスが殆ど。たまに日本と同様の白いロウライスを食べることもあります。とにかくライスがみんな大好き。そこにカレーやおかず、漬物などを載せて食べていきます」とA氏。

「この地域」とは、A氏が生まれ育ったベンガル湾沿いの農村一帯のこと。ウエストベンガル州都コルカタから南へバスで約5時間のところ。7キロ西はもうオリッサ州です。

今回は4月25日から5月5日までの11泊12日泊めていただき、そのうちの全食の記録をドキュメントします。ほな。

ウエルカム・フレッシュビーフ

お客用ではなくできるだけ普段通りの食事をとお願いしていたのですが、初日25日のお昼は貴重なビーフのカレーを作っていただきました。また驚くのはこのビーフが今朝の〆たての超フレッシュだということ。同じ村の中で早朝4時頃にト殺したばかりの肉を買ってきてくれたのだと。

ハラールの牛〆についての詳細はこちらに書きました。

インドと言えば牛肉も豚肉も食べないイメージがありますが、通常言われるノンベジはヒンドゥー教徒のそれで、この場合は牛肉は食べず、主にマトン、チキンを食べます。が、イスラム教徒のノンベジはそこにビーフが加わるわけですね。これほどの贅沢はありません。

牛肉の前に置かれたドロップは子供さんのおやつ

RさんがBonti(またはBoti)と呼ばれる独特の包丁で肉を細かく切っていきます。肉は日本のように細かく部位分けがあるのではなく「背中、足、それ以外」などと3パターンだけだと言います。たまにリクエストで限定的に購入する客もいるようですが、家庭で使う分には大雑把なようです。

ところでこの包丁はウエストベンガル独自のものだとA氏は言いますが、よく似たものを僕はカトマンドゥの魚市場で見たことがあります。聞けば肉だけでなく魚やたまに野菜にも使うそうですが、発祥はともかく、主に魚に使う道具であることは間違いなさそうです。

フレッシュビーフのカレーや魚とマンゴーのカレーなどで出迎えてくれました

さていよいよA氏ご実家での初の食事の始まりです。出していただいたのは、フレッシュビーフのカレー、青マンゴーと魚のカレ、サラダ、ピックル。お米はもちろんパーボイルド。

肉はしっかりとした歯応えがあり、脂の臭みは一切なく、カレーの中に骨のいい出汁が染み出ていました。やや酸味のある青マンゴーにも魚の出汁が染みておいしいです。ぷちぷちとしっかりとした歯応えのお米でも出汁がすぐに染みこんでいくのですね。この出汁の感覚が日本人にもとても馴染みやすいですし、インドの他エリアの味のベクトルとはまったく違うもんだなと思いました。

この後は昼寝。夕方になってA氏と共に仲良しのバイク屋へ行ったり村の市場へ行ったり。日が暮れてからhA氏の可愛い愛息A君も連れて村のイスラム教のお祭りにも行きました。

アルーダム、卵入。バングラデシュやベンガル地域の名物ストリートフード。
眩しいイルミネーションと耳を劈くイスラムのなにやら教えのようなマイク


おもちゃ屋や鉄砲ゲームなど日本でもお馴染みの露店も何軒かありました。また人力の周るブランコとかインドならではの乗り物も。一回10ルピーとなかなかの高額だったようです。

家に戻り、夜12時頃に晩ご飯をいただきます。なぜこんなに遅い時間かというとそれは昼間が暑過ぎるから。僕が邪魔する1週間ほど前から、インドの中でもここウエストベンガル地区が異常気象に見舞われ連日40℃を超す猛暑。

僕が行った翌日は42℃にもなり、また40℃を超す時間が長いこと。最低が30℃ということですがそれは朝4時頃の一瞬だけの話で、朝7時にはすでに38℃くらいになっているというヤバさです。

毎年4〜6月は夏ということで暑くなるそうですがそれでも40℃を超すことはそれほど多くはないようで今年は本当にきついのだと。そこで毎年日中は寝るのだそうですが今年は暑過ぎて昼寝が長くなったというわけで。

オクラの炒め物はすっきりとしたおいしさ

晩ご飯では夕方我々が市場で買ってきたオクラの炒め物が出てきました。タマネギ、トウガラシ、ガーリック、ジンジャーを炒めたものです。やや水分を加え柔らかく火を通して、味は塩のみ。

これと昼に出していただいたフレッシュビーフのカレー後半戦。

この後家族と共にしばし団欒し、ぼちぼちとベッドに入りました。エアコンはないので蚊帳を張っての就眠です。暑い!ほな。

ベジ豪華版。でも夜は。

ワイルドな暮らしを支えるRさんのご飯


へ続く

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