Netflix『極悪女王』
日々、息が吸えなかった。
目に映る全てが色を失い、耳に届く音も、口に含む味も、すべてが虚無に変わった。
「You are what you eat(あなたはあなたが食べたものでできている)」と言うが、そうであるならば自分自身を失ってしまったのだろうか。
見渡すと、恐怖に覆われた世界の中でポツンとしていた。
比喩じゃない、現実だ。
そんな絶望の中、『極悪女王』の鎖が世界に亀裂を刻み込んでくれた。
昔、アナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーに堕ちたとき、『帝国のマーチ』と共に歓喜した。
今、松本香が罵声に浴びせられながら、ダンプ松本へ生まれ変わる人生に触れたとき——心が芯から震えた。
夢を踏みにじられて喜ぶ者はいないが、人は簡単に他者の夢を食い潰す。
それが残酷で美しいと言うなら、それはただの傍観者だ。
闇の中でも光を求めて生き続ける。
夢がある限り、生きる意味がある。
そしていつか、自らが光となるために。
女子プロレスラーたちの生き様は熱演を超えている。
わずか全5話の輝きは、鑑賞後数日経った今も、恐れに包まれた世界の中で、赤い灯を灯し続けている。
人生のスリーカウントは取らせない。
少しだけ、息が吸える。
【予告編】
谷口賢志
【谷口賢志の独演会】
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