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読書記録 ルビンの壺が割れた(宿野かほる)
それは出張2日目のこと。行きの飛行機に乗る前に、「むらさきのスカートの女(今村夏子)」を購入したが、サクサクと読了。今度は帰りの便で手持ち無沙汰になってしまう。またも空港の本屋で手頃な文量の本を物色する。
すると、最近本屋でよく目にする本をみつけた。厚みもちょうどいい。帯を見ると、どうやらどんでん返しが面白いそうだ。
私は昔から、「どんでん返し」の展開がとても好きだ。一時期はそういった本を漁るように読んでいた。果たして、この本はどれだけワクワクさせてくれるのか。
ルビンの壺が割れた(宿野かほる)
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あらすじ
水谷一馬は、Facebookで偶然にも大学時代の後輩を見つける。それは当時付き合っており、婚約もしていたが、結婚式の前日に失踪した女性だった。返ってこないとは思いながらも、何通かメッセージを送ってみると、返事が来る。そこから、30年ぶりにポツポツと2人のやりとりがはじまるが、徐々にその内容は不穏に変容していく…。
「日本一のどんでん返し」というのは些か盛り過ぎではあると思うが、たしかに途中で感じていた違和感の正体が、最後に暴かれてスッキリした。
そして、読了後に再度軽く読み返すと、ところどころで「あっ!」という伏線を見つけてゾクリとする。
「ルビンの壺が割れた」というタイトルの意味を考える。
ルビンの壺とは、壺のようにも見えるし、向き合う2人の横顔のようにも見える有名な図形だ。この小説の文中にも、同じタイトルの演劇が出てくる。(2人は演劇部で出会ったのだ)
約30年前という同じ時間を振り返っていながらも、彼が見ていた(思っていた)ことと、彼女が見ていたことは全く違っていた。壺が「割れる」=真実が明るみになる?という意味だろうか。
SNSの時代にありそうな、ゾッとする話であった。一度読んだ人は、是非もう一度読み直してほしい。