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『ある閉ざされた雪の山荘で』の感想と考察
アマプラで『ある閉ざされた雪の山荘で』を観たので、短めに感想と考察を書きますよ。ネタバレ気にしていません。
どんな作品?
東野圭吾原作のミステリーで、劇団の合宿オーディションに参加した7人の役者達が、ひとり、またひとりと消えていく、所謂“クローズド・サークル”の恐怖に怯えながらも、その謎を解くことで主役の座を勝ち取ろうとする、若者群像劇です。
まずは感想
また東野圭吾にやられた!というのが一番大きな印象です。大枠については序盤から中盤にかけての材料から予想した通りに展開していくので、終盤になって『本当に予想通りで終わるの?東野圭吾も平凡になったなあ』と思わせておいて、ラストで声を上げてしまう仕掛けに少し驚きました。
いつもそう!いつも東野圭吾はラストに凄いのを置いてるのに、まんまと騙されて得意気になった挙句に、最後に「あっ」と言わされています。上手すぎる。
演技については劇中劇的な展開なのと、ラストの仕掛けのせいで常に芝居がかった雰囲気ではありますが、森川葵がまあ白眉。興を削ぐ感じの演技をしている出演者もいるにはいますが、“そういう役どころ”だと考えれば、とても優れた演技だったのかも知れません。総じて飽きたり飛ばしたり、といった事はなく、始めから終わりまでじっくりと鑑賞できる作品だと思います。
そして考察へ
外部の人間である久我のオーディション合格、という違和感で始まる物語ということもあり、「どこまでが仕組まれていたのか」が一番に気になるところです。
全ては東郷と久我の仕掛けだった、としたらどうでしょう。
雅美の落選と事故の情報を耳目にした久我が、憧れの女優の再起のために脚本を仕立てて本郷の元に持ち込んだ。
本郷は、本来は落選させていた久我を「4重構造」のラストピースとして追加し、最終オーディションの「3重構造」を本多に託したのではないでしょうか。
そうして本多は雅美を騙して3重構造のミステリーを完成させ、翌日に稽古場で全員を揃わせたところで、雅美にも真実を明かして説得するつもりだったのではないでしょうか。
そこに真の仕掛人である久我が謎解きを披露することで、本多のプランを崩しつつ雅美を立ち直らせる、という荒業に打って出ました。実に演劇的な結末です。
この劇的な結末から舞台へとクロスフェードしていくことで、全ては東郷と久我の掌の上だったことを示しています。
本来であれば劇団に加入させても良いほど活躍したとは言え、キャスティングボードの表記を見ても分かるように完全に外様扱いです。久我としては「最高の思い出づくり」になったでしょうし、東郷としては雅美の復帰に加えて素晴らしい脚本を得られたので、実にWin-Winのプロジェクトになったのではないでしょうか。(了)