臨床1年目から学ぶ ”作業療法のリーズニング” (2024)
さて、今日のnoteは研修会で使用したものをまとめてみたいと思います。
研修会を主催する機会が増えてきているので、そこで考えていることや、実際に作成した資料を文章化してみたいと思います。
本日は作業療法で取り扱う「リーズニングについて」です。
特に新人さん向けの研修会になるので、簡単な概要を新います。
最後に実際に使用したスライドもつけてますがここは有料(300円)にしてます。
誰かの参考になれば幸いです。
自己紹介とお知らせ
某リハビリテーション病院で作業療法士の中堅管理職として働いています。日々、対象者の生き方と向き合いながら、組織の課題やチーム運営にも取り組んでいます。
このnoteでは、医療の中で様々な人の生き方と出会う作業療法士が、医療者・中堅管理職の目線で、社会での働き方、人間関係の考え方、ストレスマネジメント、医療の問題などのテーマに触れながら、日々感じたことを自らの解釈として記録しています。
読んだ方の何かお役に立てれば幸いです。
以下お知らせ。
◾️湘南OT ”超交流会 2nd”
久しぶりの湘南OT対面企画です!今回の対面研修会では、関東会場と九州会場を繋いでそれぞれの会場でのディスカッションを行う予定です。対面とオンラインのハイブリットから生まれる新しい交流をぜひ体験してください。
先着順なので早めの申し込みを(各会場30名まで)!!
◾️第28回福岡県作業療法学会
来年行われる福岡県作業療法学会の学会長を行うことなりました!ホームページが公開されましたのでよかったら!
演題募集は6月1日〜7月31日 8月22日まで!
◾️湘南OT Interaction
「学びたいけどどうしたら・・・」と悩む作業療法士の方と一緒にコミュニティ作りを支援します。定期的に勉強会も行なっているのでよかったら!
8月11日 21:00〜 zoom勉強会を行いますので、参加される方はよかったら。
今回のテーマは「作業のレンズで社会の仕組みを考える」です
それでは本題に入っていきましょう。
研修目的
リーズニングにと聞くと、「それ何?」と思う人もいると思います。
リーズニングは作業療法士の現場ではよく使われれる言葉です。
「臨床推論」とも呼ばれ、普段の実践の中で起こる、作業療法士自身の思考過程がそこで表現されています。
作業療法士の現場は”臨床”と呼ばれていて、そこには、その場その場で対象者の状況に合わせた対応が求められます。
これが大事なことはわかるんですが、ある程度”考える形”がなくては、様々な事象に対応することができません。
なので”リーズニング”を学ぶということは、思考スピードを上げてるということでもあるし、ある程度情報の漏れをなくすためのチェックシステムとしても機能します。
リーズニングの形に関しては早期から習得しておく方が成長を早めてくれると思います。
研修対象
今回の研修対象者は新卒〜学生向けてのものを準備しました。
なのでできるだけ噛み砕いて説明するようにしています。
「新人教育で何やったらいいかわからない!」
という方におすすめです。
参考図書
今回は主にこちらの書籍の内容を使用していますので、よかったら。
研修内容
作業療法のリーズニング:臨床1年目から学ぶ
臨床経験を始めたばかりの作業療法士が直面する課題として、
「患者さんに何をすべきか分からない」
「治療がうまくいっているのに患者さんの反応がイマイチ」
などの問題があります。
これらは、臨床推論(クリニカルリーズニング)が不足しているために起こることが多いです。
臨床推論とは?
臨床推論は、標準化された治療プロトコルだけでなく、個別の状況に応じて臨機応変に対応するための思考過程です。
臨床の場では、患者への対応や治療計画の設計、実施などを詳細に記述することが重要です。
RCT(ランダム化比較試験)による知見が増えるにつれて、どの知見をどの状況で利用するかといった意思決定過程がより重要になります
リーズニングの種類
主に作業療法士が行うリーズニングには5つの種類があります。
作業療法士は、臨床での意思決定においてこの5つを用いて物事を考えている傾向にあるようです。
科学的リーズニング:標準化された評価と介入プロトコルを用いてクライエントの問題を解決する。
物語的リーズニング:クライエントの過去の経験や物語を通して、主観的な体験を理解する。
実際的リーズニング:外的要因や個人的要因を考慮し、文脈に合わせた思考を行う。
倫理的リーズニング:クライエントの利益や自律を尊重し、臨床判断を行う。
相互交流的リーズニング:クライエントと作業療法士のコミュニケーションを通して理解を深める。
言葉だけで表現するとわかりにくいかもしれませんので、少しだけ詳細を図で載せますね。
これら5つのリーズニングについて事例などを通して、確認していくことが必要になりますね。
事例を通しての理解(グループ or 個人ワーク)
具体的な事例を通して、科学的・物語的・実際的・倫理的・相互交流的リーズニングの各要素を理解し、クライエントに最適な支援を提供することが求められます。
リーズニングの各要素を理解するためには、具体的な事例を通じた学びが有効です。
例えば、
脳出血による右片麻痺の90代女性に対して、科学的リーズニングを用いて障害の予測を行い、物語的リーズニングで彼女の過去と現在の感情を理解し、実際的リーズニングで病棟や家庭環境を考慮した上で、最適な支援を提供します。
また、倫理的リーズニングを用いて彼女の自律を尊重するかどうかの判断を行い、相互交流的リーズニングで彼女とのコミュニケーションを通じて目標を共有します。
というようにそれぞれのリーズニングをその事例に当てはめるようなワークを通してリーズニングの種類についての理解を深めていくことが必要です。
※なれない用語がたくさん出てくるので、混乱しやすい人もいます。適宜、丁寧にアドバイスし、参加者で情報を共有するように実施すると良いと思います。
リーズニングスキルを上げるためには
リーズニングを向上させるためのポイントとして、以下のことが挙げられます
自分の価値観を知ること
理論やエビデンスを知ること
アウトプットを積極的に行うこと
リーズニングは作業療法士自身の思考過程でもあるため、それぞれのOTによっても価値や興味が分かれます。
その背景には、それぞれの作業療法士の経験が含まれるため、自分がどんな作業療法士かを客観的に知ることが大事です。
その価値を否定せずに、自分にとって苦手とするものを冷静に見極めて、情報として取り入れるようにすればバランス良くなります。
また、理論やエビデンスを知ることは、リーズニングをさらにやりやすくなります。
様々な考え方を広くみて、それをどのように使っていくかはリーズニングを通して選択できるようになることが必要です。
自分の価値を知ったり、足りない部分や苦手を知るためにはアウトプットが必要不可欠です。
他者からの意見を取り入れたり議論することは間違いなく自己の成長につながります。
アウトプットを通じて自己の思考過程を振り返り、改善することが最も重要です。
さて、以上がリーズニングについての研修資料です。
この研修についての実際の資料(パワーポイント)は有料(300円)にしていますので、資料準備の手間を省きたい方はよかったらどうぞ。
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