みすず書房を通じて良書を探す
今日は自分の備忘録として記事を書きたい。
みすず書房といえば、ヴィクトール・フランクル『夜と霧』が最も有名であろうか。人文系に限らず、良書(特に良質な翻訳本)を多く取り揃えているように思う。『100分de名著』にて、ハンナ・アーレント『全体主義の起源』が取り上げられたのも記憶に新しいだろう。
新進気鋭の学者を探す
しかし、みすず書房の刊行物を読むだけでは少々もったいない。より重要なのは、そこから刺激的で面白い本を書く著者を見つけることだ。そういう著者は他の出版社でも面白い本を出していることが多い。
特に、海外の新進気鋭の学者を探すのに重宝する。(新進気鋭といっても、”古典に比べれば”である。)
が、この点を見逃している読書家は少なくない(ように感じる)。アーレント、レヴィ・ストロース、ハイデガー……みすず書房と聞くと、どうしても哲学書のイメージばかりが先行するせいだろうか。現代において勢いのある経済書や科学書が刊行されていることに気づきにくい。ただ、そういった本を逃してしまうのは惜しい。
ここからは、刺激的な本を刊行している著者を紹介したいと思う。
アレックス・ペントランド
アレックス・ペントランドは情報科学者である。ビッグデータとAIを活用したコミュニケーションや組織の解析が主たるテーマだろうか。ビッグデータ解析によって組織内の情報やアイディアの流れを定量化・モデル化することで、創造的な組織・活躍しやすい個人の特徴を探っている。
みすず書房では『正直シグナル』という本が刊行されている。本書では、個人の視点から非言語的なコミュニケーション・情報のやり取りを解析している。
ただ、後年に草思社から刊行された『ソーシャル物理学』の方が面白かったように思う。こちらは組織論に近いだろうか。組織全体や外部に視野を広げてアイディアの流れを解析することで、創造的な組織/閉鎖的な組織の特徴を炙り出している。とりわけ、エコーチェンバー現象の要因に対する考察は興味深い。
マルク・レビンソン
読みたい著者として名前を挙げておきたい。
マルク・レビンソンは『コンテナ物語』(日経BP社)の著者として知られているだろう。本書は西村博之氏が紹介したことで有名になった。コンテナの発明により国際物流がいかに発展していったのか。コンテナの普及によりいかに運送費が安くなったのか。そういった点を扱った書籍らしい。
『コンテナ物語』自体も面白そうな本であるが、実はみすず書房にて経済書が翻訳されていたらしい。その名も『例外時代』。「WWII後の高度成長期は”例外的な”ものであり、低成長の時代が普通なのだ」という視点で、経済史を語っていくようだ。こちらも読んでみたいが、読めるのはいつになるのだろうか。