こんな本を読みました【2023.9&10】
いまさらですが、昨年の9&10月の読書記録です。
★『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ
なんとも「痛い」小説だった。こんなにも至るところに棘がある小説って、なかなかだと思う。
主人公の貴瑚は、心に無数の棘が生えたような女性。もちろん、自らが望んだわけではなく、親に無理やり棘を植え付けられたのだ。
(虐待に関する描写があります。苦手な方にはおすすめできません)
けれど、そんな貴瑚にも救いがあって。同級生とその知人が必死に棘を抜いてくれようとするのだ。人は人によって傷つけられ、人によって救われるのだと、しみじみ思う。
貴瑚は、幸(救い)と不幸(傷)を片手にひとつずつ持っていた。物語のラストでは、不幸を手放して幸せになるんだという希望が見られて、よかったと思う。そして、人一倍傷ついてきたからこそ、貴瑚が救いたいと願った少年にとっても、光ある未来であってほしい。
2021年本屋大賞受賞作品。2024年に杉咲花ちゃん主演で映画化が決定しており、こちらも気になるところ。
★『京大中年』菅広文
お笑いコンビ・ロザンのボケ担当、菅広文さんの著書。『京大芸人』シリーズの最新作です。
相方の宇治原さんが京大出身ということで、どうしても目立ってしまっているけれど、菅さんも大阪府立大学(現・大阪公立大学)を卒業され、れっきとした「高学歴芸人」。
そのことが、本を読んでいるとよくわかる。地頭がよいというのかな。芸人として鍛えられたユーモアもあるので、話を展開させていくのがうまい。読者を飽きさせない流れになっている。
しかも、ただおもしろいだけではなく、宇治原さんのご両親とのエピソードで、なんと私は泣いてしまった。終始、芸人さんらしいユニークな語りが続くのだけど、そこだけ妙にジーンときちゃったんだよね。
涙あり笑いありの一冊、気になる方はぜひ!
★『さみしい夜にはペンを持て』古賀史健
ライター・古賀史健さんが、中学生に向けて書かれた本。「書くことのすばらしさ」を伝えてくれているのだけど、一言で感想を述べるのはむずかしい。読者の数だけ、受け取り方や共感ポイントがあるんじゃないかな。
この本を読んで、毎日日記を書くようになりました。これまではなかなか日記が続かなくて。なぜなら、私はネガティブなできごとを書くことができないから。自分の失敗やマイナスな感情と向き合うのが怖いし、書くことで嫌なことを思い出したくないんですよね。
でも、つらいできごとに蓋をしているだけでは、何も変わらない。この本に勇気をもらって、なんとかネガティブなことを書いてみたところ、自分でも気づいていなかった感情が見えたり、幾分か心が穏やかになれたりしました。
今でも、ネガティブなことは正直書きたくない。けれど、書くことで頭の中が整理されて、スッキリすることがわかっているから、以前よりは書けるようになった気がします。
さみしい夜、つらい夜、泣きたい夜こそ、ペンを持つことが大事なのかもしれません。
★『未熟なまま輝く キミへ伝えたい 自分を大切にする生き方・考え方』吉井奈々
全国200以上の中学・高校で「心とコミュニケーション」の講演を行ってきた著者が、10代の若者に向けて書いた本。自分に自信が持てない、人間関係に悩んでいる、自分の居場所が見つからないなど、思春期にありがちな悩みについて、答えてくれています。
不登校に悩む娘が読んでくれたらいいなーと思って買ったんだけど、親の私にもめちゃくちゃ響きました。
(私が大人になりきれてないからか???)
(肝心の娘はまだ読んでない)
他人に嫌われるのが怖くて、常に顔色を窺っていたこと。誰も信用できなかったこと。ほしいものをほしいと言えなかったこと。どこにも居場所がないと思い込んでいたこと。学生時代のいろんな感情を思い出しました。あの頃に、この本を読みたかったな。
自分に自信が持てない人、人間関係に悩むすべての人に、おすすめします。
以上、2023年9&10月の読書記録でした!
ではでは、また。
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