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フジローヤルがくるくるカンカンを作った理由

今や誰でも答えを調べられ、タイパ・コスパが重視される時代。だからこそ、ちょっと難しいことに果敢に取り組み、その先にある楽しさを見つけていく! そんな事を手さぐりで行う「 #てさぐり部 」の挑戦。
 
第1回から6回まで、誰でも本格的にコーヒーの自家焙煎に挑戦できる「くるくるカンカン」を使い、無事コーヒーを完成させたところまでをお届けした。
 
高尾山の麓でバーベキューをしながら、テーブルにはお肉や野菜とお酒、朝から苦労して作ったコーヒーが並ぶ。
 
辺りはすでに暗くなり、遠くで鈴虫の声が鳴り響く中、皆で食事を囲むひと時。
 
自分で煎ったコーヒー豆で丁寧に淹れたコーヒーは格別! 意外とお肉にもよく合い、食事が進む。会話も弾んでくる。
 
#てさぐり部 創刊号「答えのない挑戦のはじまり」特集の最終回となる今回は、くるくるカンカンを世に送り出した富士珈機の思いと開発秘話、全自動や利便性が重視される現代だからこそ得られる「手さぐりの魅力」に迫っていこう。


プロジェクト“トム・ソーヤー”

くるくるカンカンを開発した富士珈機は70年近く、日本最大のコーヒー機器メーカーとして「フジローヤル」ブランドの製品を世に送り出してきた。

フジローヤルは富士珈機のブランド(オフィシャルサイトより)

これまでは専門店向けの機器を作っていたが、くるくるカンカンは個人向けの焙煎器だ。最近では自家焙煎がトレンドになっており、初めての焙煎に挑戦する人が挫折せずに焙煎を完遂できるようにとの想いで開発に至ったとか。
 
「手網を揺らして焙煎することもできますが、初心者にとっては少しコツがいる。でも、手回し焙煎器なら回すだけででき、お子さんも一緒に家族で夢中になれると思ったんです。一度焙煎を楽しめれば、他のことにもこだわりたくなりますしね」(福島社長)
 
福島社長はこの新しい手回し焙煎器の開発を「プロジェクト “トム・ソーヤー”」と呼んでいたそうだ。

くるくるカンカンを開発した富士珈機の福島社長


デザイン、機能、細部にまでこだわり

アイデアを思いつくと、すぐに新たな工場を作り、素材にもこだわりながら、何度も検証を続けた。完成が近づくタイミングでは、デザインも試行錯誤したそうだ。
 
「コスト・デザイン・加工方法など問題は多かったです。でも、これまで築いてきたノウハウや、業者さんとのつながりを活かして、1年間で何とか完成までこぎつけました」(福島社長)

くるくるカンカン(右)にはこだわりがぎっしりつまっている

高い理想を掲げても、形にならなければ意味がない。真摯にコーヒーと向き合ってきた富士珈機の実績、70年近くモノづくりをしてきた技術があってこそ、成し得たことだったに違いない。
 
今回、くるくるカンカンを体験して思ったが、無心でハンドルを回し続ける楽しさと、いざ完成したときに受ける感動は、全自動のコーヒーメーカーでは絶対に得ることはできない。
また「もう少し焙煎したらどうなるんだろう」「もっと浅いとどんな味?」など、好奇心の赴くまま試せるのも魅力だ。
 
そして、焙煎をやってみると、コーヒーを淹れる道具も揃えたくなるし、生豆についてもっと知りたくなるし、コーヒーの美味しさをどこまでも追求したくなる。福島社長の狙い通りだ。


手さぐりで挑戦することの意義とは

くるくるカンカンが掲げる《初めての体験に目を輝かせた彼ら(トム・ソーヤたち)のように、何歳になってもワクワクする気持ちを忘れないでいたい》というメッセージは、 #てさぐり部 のコンセプトとも合致する。
 
あらためて福島社長に「手さぐりで何かをする」ことの意義を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
 
「手をかけて何かをすることの大切さが薄れてきていると思います。利便性が求められれば確かに暮らしやすくなる。でも、そこにドラマは生まれないと思うんです」


手さぐりする意義を語る福島社長


今や当たり前のように使われている携帯電話も昔は存在しなかった。待ち合わせは不便だしすれ違いも生まれた。だからこそ、人との出会いにはドラマがあった。
 
ボタン一つで何でも解決する今の世の中、あえて自分で苦労して試行錯誤した先にある答えに、人は喜びを感じるはずだと、福島社長はその言葉に熱をこめる。
 
「デジタル化、数値化された便利さは、間違いなく生活を豊かにしてくれます。でもそれだけじゃなくて、手間をかけながら手さぐりでやる事で見つかる、精神的な豊かさもきっとあるはず。便利な世の中で、あえて不便さを楽しもうという時代になったら面白いですよね」


後悔は次の挑戦への後押し

全自動コーヒー機が世の中にあふれ、誰もがスイッチ一つで簡単にコーヒーが飲める現代。焙煎からコーヒーを淹れるまでの体験は、何にも代えがたい贅沢なひとときだった! 皆で飲んだ一杯のコーヒーは格別で、一日の疲れを癒すように五臓六腑に染み渡った。

手間をかけた分だけ絶対に美味しい!

今度は別の生豆も試してみたい。くるくるカンカンは、焙煎缶詰以外の豆でも焙煎できる。いまやネット通販でいろいろな生豆が気軽に手に入る時代だ。ただし、今度はもっと慌てずに焙煎しよう。大きな達成感と少しの後悔が、次の挑戦を後押ししてくれている。
 
残り少なくなったコーヒーを大事に飲みながら、ふと考えた。
 
#てさぐり部 には、この時代に残せる価値や存在意義があるのだろうか。そもそも、意味があること以外は無意味なのか?
 
その答えは今日出ないかもしれないけれど、それも焦らず見つけていけばいい。
 
考えて、やってみて、手さぐりで取り組んでいく。好奇心と体験をくるくると回すのだ。その先にきっと便利さだけでは得られない、楽しさがあるはずだから。


表情が喜びにあふれている!


Supported by くるくるカンカン

クレジット

ライター:FM中西
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
カメラ:橋口健志(合同会社ピノグリ)
取材協力:Mt.TAKAO BASE CAMP
制作協力:富士珈機

ライター・FM中西
1990年生まれ、静岡県浜松市出身。中学・高校7年間を韓国ソウル市で過ごす。Web/広告/ゲーム会社を経て、2022年よりフリーライター・編集として活動開始。エンタメ系・ライフハック系の取材やレポが得意で、最近の目標は減量。読者にとって分かりやすく伝わりやすい記事をお届けします♪


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#てさぐり部 は「知りたい・食べてみたい・やってみたい」──そんな知的好奇心だけを武器に、ちょっと難しいことに果敢に取り組み、手さぐりで挑戦する楽しさを見つけようというメディアです。
決まったメンバーを「 #てさぐり部 」と呼んでいるわけではなく、答えのない挑戦を楽しむ人たちの総称として使っています。
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