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【本の紹介】High Conflict 良い対立 悪い対立(アマンダ・リプリー著)

今回は私が読んだ本「High Conflict よい対立 悪い対立」を紹介します。
Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めますよ。


どんな本?

日々、私たちの周りには少なからず「対立」が発生しています。
その対立には「よい(健全な)対立」と「不健全な対立」がある、と著者は言います。

著者はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー作家、受賞歴のあるジャーナリストです。
離婚調停から始まり、政治、テロ組織など、様々なエリアでの膨大な取材量で、著者が考える「健全な対立」と「不健全な対立」の違い、そもそも対立とはどのようなものなのか?そして、不健全な対立を健全な対立に変える方法までを教えてくれる本です。

健全な対立は成長を促すが、不健全な対立は破壊を生むという話なのですが、「健全な対立」とは、どんな状態なのか?を以下のように冒頭で著者は伝えています。

健全な対立は、わたしたちがよりよい人間となれるよう背中を押してくれる。

はじめに より

「わたしが」より良くなる、ではなく、「わたしたちが」より良い人間になる、というフレーズがいいですよね。
そんなことを教えてくれるこの本の構成は以下の通りです。

第1章~第3章:
対立の構造や発生する状況などが書かれています。
今まで、何となく受け入れてきた状況が実は対立の発生源だった、ということに気づかされます。

第4章~第7章:
不健全な対立を防ぐには?という観点で様々な提案がされています。
日々、何気なく通り過ぎてしまうような感覚が、実は不健全な対立を防ぐ手段になりえる、ということに気づかされます。

海外の本の特徴でもあるのですが、とにかく事例エピソード(この本では取材内容)と説明の分量が多く、400ページを超える読み応えのある本ですが、それでも読む価値はあると思います。

私の気づき

至るところに気づきのある本なのですが、特に唸ったのは以下の引用部分でした。

憎しみと怒りは違う。怒りにはよりよい未来の可能性がある。怒りの根底に隠されているのは、他者の行動を正すという目的だ。対して憎しみの論理がもたらすのは、相手を全滅させるという結果だ。

3章 対立の火種 より

憎しみと、怒り。確かに似て非なるものです。

怒りは、アンガーマネジメントのセミナーを受講した時に「より良くしたい」が根底にあるものなんだなと思ったことを思い出しました。

一方で憎しみは、ドロドロドラマでハラハラの追体験ができるような、相手を破滅させようとして、自分も破滅の沼にハマるというイメージです。
「憎しみ」の感情って、「怒り」より苦しそうですね。

となると、憎しみからは、距離を置いたほうがいい。
そして、怒りは、適切にマネジメントしていくことが良さそうだなと思いました。

そう考えて読み進めると、以下の文章に出会いました。

対立を深く理解していないから、何でもかんでもとにかく対立だと思い込んでしまう。そうではなく、背景を探究する。そうすれば、相手とともに会話を深めていける。好奇心を持って相手の言葉の裏にあるものについて考えていける

7章 物語を複雑にする より

そもそも、「憎しみ」や「怒り」が生まれるのは、その対立が何によって生まれているのか?という理解が足りなくて、会話にならず、対立の相手を知ろうともしない、という状況である、ということだと理解しました。

日頃から「会話」を大切にしないと成立しない仕事を本業にし、「会話」には「相手を知る」という事が目的にあることを意識している私にとっては、当たり前のことなのですが、過去の私はどうだっただろう?と、振り返ってみました。

そうすると、やはり、「怒り」が生まれた時は、一方的な目線で文句を言って、コトをこじらせた思い出が蘇りました💦

大抵、コトをこじらせるのは、状況と背景の理解が不足したまま、勝手に相手を悪者にして「私は悪くない」を貫いているときでした。
たとえば、私の都合があるのに、それを明確に伝えられておらず、それを理解していない誰かから何か不本意なことを言われてしまうと、明確に伝えていないことを考慮しないまま、「なによ、その言いっぷり」みたいな感情が生まれてしまう、といった感じの「怒り」が多々あったなと思います。
つまり、相手への理解より、自己主張が強い、という構図ですね。

もしくは、誰かと自分を比較してしまって、「あの人より自分が優れている」という、ちょっと悲しい、というか、寂しい承認欲求のようなケースもあったなと思います。

そういった変な貫きや、寂しい承認欲求は、あってほしいと願う思い通りの状態からどんどん離れていきます。
当然です。独りよがりの自己主張では、なかなかたどり着きたいところには到着しません。
それどころか、どんどんこじれていったと記憶しています。

「憎しみ」については、一方的な被害を受けた時に感じたような、感じなかったような、古く遠い記憶があります。
ただ、私にとって、相手を破滅させたいというところまで行きつく「憎しみ」の感情は、あまり馴染みのない感情で、その遠い記憶さえも、あれは本当に憎しみだったのか?とも思います。
今、もう一度振り返ってみても「相手にこうあってほしい」という「怒り」だったのかも?とも思います。
みなさんは、どうでしょうか?

著者は以下のようなことも本書で伝えています。

すべての人間は複雑だ。そして不健全な対立にはほぼつねに、物語のどこかしらにまとわりついている誤った単純さがある。

7章 物語を複雑にする より

不健全な対立には、誤った単純さがある。
でも、人間は複雑な感情を持つ生き物である。
この2つを前提として持つことで、ずいぶん見える世界が変わるのではないでしょうか?

ただ、ビジネスの世界では単純で明快である事が求められることが往々にしてあります。
それは、大切なことでもあるのですが、あくまで無機質な数字や答えのあることの世界だけに留めてはどうかな?と思います。

「人」が関係したときには、無理に単純化せず、複雑さを受け入れてフラットに話を聞いて、理解するというステップ踏んでみる。

たとえば、顧客と自社、社内の組織間、自組織内で対立が起こり、ギスギスしてしまっているときに、
「あの人(組織)はこういう人(組織)だから」と決めつけて、次の行動や方針を決めてしまわず、様々な可能性を探り(=つまりは対立の双方にフラットな質問し、話を聴く)、まずは「不健全な対立」から抜け出す。
そのうえで、その複雑な状況に対して、当事者だけでなく第三者の意見も取り入れる等して、「健全な対立」に向かうことで、その事案は「新たな着目点」から「新たな目指す方向」だったり、「新たな手法」が生まれるのではないかと思います。

そうすることで、著者が言うところの「誤った単純さ」からくる「不健全な対立」を防ぎ、「健全な対立」にしていく方法になるなと思いました。

おすすめポイント

誰かのことを決めつけてしまっている心当たりのある方、誰かに怒りの感情をお持ちの方にオススメします。
今、もし、そこまで気づいておられるならば、この本で、きっと脱出できるヒントを得られると思いますよ。


「怒りの感情があって、何とかしたい」と思われた方、
「誰かを決めつけて言ってしまった事を修復させたい」と思われた方、
私でよろしければ、壁打ちのお相手を
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以下のURLにてご相談依頼してくださいね。
インテグリティ合同会社お問い合わせページ

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