#1504 学力の三層構造と創出・受容・転移
文部科学省による『育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と 評価の在り方に関する検討会-論点整理-【主なポイント】 (平成26年3月31日取りまとめ)』では、学校教育で育成すべき資質・能力を以下の三点にまとめている。
ア)教科等を横断する汎用的なスキル(コンピテンシー)等に関わるもの
①汎用的なスキル等としては、例えば、問題解決、論理的思考、コミュニケーション、意欲など
②メタ認知(自己調整や内省、批判的思考等を可能にするもの)
イ)教科等の本質に関わるもの(教科等ならではの見方・考え方など)
ウ)教科等に固有の知識や個別スキルに関するもの
簡単に言えば、「汎用的認知スキル」「教科等の見方・考え方」「個別具体的な知識・技能」の三点である。
※ここで言う「汎用的認知スキル」とは、
①具体化・抽象化する力
②比較する力 ※共通点、相違点、一般法則
③批判的思考力 ※客観的、論理的、多面的な評価
④問題を見出す力
⑤情報を収集・処理する力 ※情報の収集、整理・分析、新情報の創造
⑥関連付ける力
⑦他者に伝える力
⑧先を見通す力 ※自分の経験の活用、判断・行動も含める
などを指す。
※ここで言う「教科等の見方・考え方」とは、
①教科等ならではの知識や価値や美の生成方法
②教科等に固有の知識や技能を統合し包摂する主要な概念
を指す。
これまでの学校教育では、ウ)の「個別具体的な知識・技能」が優先的に取り扱われてきた。
その成果を測るのが「ペーパーテスト」である。
しかし、このような「個別具体的な知識・技能」を重視することは「コンテンツベースの教育」である。
これからは、VUCAの時代であり、「コンピテンシーベースの教育」を推し進めていかなければならない。
上記のような「個別具体的な知識・技能」は「個別最適な学び」で習得すればよいのだ。
そのような膨大な知識・技能よりも、ア)の「汎用的認知スキル」やイ)の「教科等の見方・考え方」を重視する必要がある。
それが結果的にウ)の「個別具体的な知識・技能」をカバーすることになり、授業時数の削減、カリキュラムオーバーロードの解消につながる。
したがって、「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」は、「協働的な学び」の中で、創出・受容・転移を繰り返し実現していくことが重要となる。
なぜなら、子どもたちは「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」を無自覚に使っているからだ。
それを教師が見取り、自覚させることが必要となる。
教師が教材提示を工夫したり、子どもに意図的に問い返したり、板書に残したり、明示的な指導をしたり、振り返りを促したり、転移できそうな課題を設定したりする。
それを重ねることで、「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」を子どもたちは自覚することができ、別の文脈や場面でも転移させることができるようになるのである。
その実現には、教師の意図的な介入が求められるので、「個別最適な学び」だけではなく、「協働的な学び」を仕組む必要があるのだ。
「個別最適な学び」だけだと、「子どもができない→教師が伝達する→子どもは一時的にできる」の繰り返しとなる。
しかしこれでは、場面や文脈が変わると自分で学ぶことができない学習者となってしまう。
やはり、「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」の創出・受容・転移を繰り返し促し、粘り強く指導していくことが重要となる。
それを可能にするのが、教師が意図的に組織した「協働的な学び」である。
また、「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」を子ども自身の言葉や姿で捉えることも重要だ。
これにより、教師の指導に一貫性が生まれる。
さらに、各教科等の特質に応じた学習活動を充実させることができる。
そして、「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」に関わる子どもの言葉や姿に敏感になり、それを取り上げ、価値付けられるようになっていく。
子どもは無自覚・無意識的に「汎用的用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」を働かせるときがある。
そのときに、その子どもの「思考の背景」を追究することで、思考の着眼点や対象を認識させることができる。
これが「汎用的認知スキル」や「教科等の見方・考え方」の創出・受容・転移を実現させてくれるのである。
以上のような三層構造の学力を身に付けた子どもは、「転移する学力を備えた子ども」と言うことができる。
このような子どもは、「学び続ける存在」「自立した学習者」となっていく。
そして、正解のない問いに最適解を見つけ出し、よりよい社会を創り上げていくことができるだろう。
ぜひとも、このような学力の三層構造を意識した学習デザインをしていきたい。
では。