目黒区のハクビシン

花山多佳子歌集『三本のやまぼふし』(砂子屋書房、2024年)を読んでいると、このような歌があった。

目黒不動尊の夜の電線をわたりゆく影 タヌキのやうな
参道の店の人らがいつのまにか出てきてあれはハクビシンと言ふ

花山多佳子『三本のやまぼふし』

これを読んで「あれ?」と思い、書棚を漁ってみると、やっぱりあった、あった。

目黒区の電線にハクビシン居りたりとメールをくれるをんな友達

小池光『梨の花』(現代短歌社、2019年)

歌集の刊行年は違うが、収録されている短歌の制作時期はほぼ同じ。こうして小池光の歌に出てくる「をんな友達」は花山多佳子のことだろう、ということがわかるのである。
小池と花山に交友関係があることは本人らも様々なところで語っているのであるが、こんなメールのやり取りをしているのかと思うと可笑しい。しかし、何ら打算のない心の交流である。

その夜の花山多佳子が受信せし「Re:ハクビシン」のメールを思ふ/寺阪誠記

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