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【リハビリ効果を最大化】 行動変容ステージ別アプローチ

臨床で働いていると、
患者さんの中には、なかなかリハビリに意欲的になれない…というケースも少なくありません。

「なぜこの運動が必要なのか理解してもらえない…」
「モチベーションが上がらず、自主練も全然してくれない…」

このような悩みを抱えた人も多いのではないでしょうか。

今回は学習心理学の知見を応用し、患者さんのやる気を引き出す実践的なテクニックを、行動変容ステージ別に解説していきます!


患者さんの“行動変容”が不可欠!


リハビリテーションの目標は、患者さんが 身体機能を回復し、 日常生活を再び送れるようになることです。

しかし、ただ漫然とこちらが決めたメニューをこなすだけでは、真の意味での回復には繋がりません。

患者さん自身が 「よくなりたい!」と自ら行動を起こし、その行動を継続できるようになること。

つまり行動変容こそが、リハビリ成功の最大の鍵を握っていることになります。

行動変容を促す「行動変容ステージモデル」


行動変容ステージモデルとは、
アメリカの心理学者、ジェームズ・プロチャスカとカルロ・ディクレメンテによって提唱された、
行動変化のプロセスを5つの段階に分類したモデルです。

元々は禁煙治療のために開発されましたが、
その汎用性の高さから、現在ではリハビリテーションをはじめ、ダイエットや運動習慣の定着など、幅広い分野で応用されています。

厚生労働省e-ヘルスネット

1. 無関心期(Precontemplation)

✅特徴:
問題意識が低く、行動を変えるつもりは全くない状態

✅患者さんの声:
「リハビリ?別にいいかな」
「今の生活で特に困ってないし…」

✅理学療法士としての接し方:

・共感
「そうですよね、〇〇さんは今の生活を大切にされていますもんね」

・情報提供
「実は、今のまま放置しておくと、将来的に〇〇さんの大好きな旅行に行けなくなってしまう可能性もあるんです」

・未来への不安喚起
「今のうちに対策しておかないと、後々もっと面倒になるかもしれませんよ…」

※無理強いは禁物!
患者さんのペースに合わせて、まずはリハビリへの意識を向けさせることを目標にしましょう。

2. 関心期(Contemplation)

✅特徴:
問題意識が芽生え、行動変容の可能性を考え始める状態。
ただし、まだ具体的な行動には移せていない。

✅患者さんの声:
「リハビリって、具体的にどんなことをやるの?」
「本当に効果あるのかな?」

✅理学療法士としての接し方:

・傾聴
「〇〇さんは、リハビリについてどんなことを知りたいですか?」

・分かりやすい説明
専門用語を避け、図やイラストなどを用いながら、視覚的に分かりやすく説明する。

・メリットとデメリットの情報提供
リハビリを行うことのメリットだけでなく、デメリットも正直に伝えることで、患者さんの不安を軽減し、納得感を得てもらう。

・成功体験談
「〇〇さんと 同世代の方で、リハビリを頑張った結果、趣味の〇〇に復帰できた方がいるんですよ!」
など、患者さんに近い属性の人の体験談は行動意欲を高める効果がある。

この段階では、
患者さんの疑問や不安を解消し、リハビリに対する理解を深めることが重要です。

3. 準備期(Preparation)

✅特徴:
行動変容を決意し、具体的な行動計画を立て始める状態。

✅患者さんの声:
「いつからリハビリ始められる?」
「目標達成するには、どんな運動をすればいい?」

✅理学療法士としての接し方:

・目標設定のサポート
SMARTの法則(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)に基づいた、具体的で実現可能な目標を、患者さんと一緒に設定する。

・行動計画の作成サポート
「いつ、どこで、どのように」リハビリを行うのか、具体的な行動計画を立てることをサポートする。

・スモールステップ
いきなり高い目標を設定するのではなく、
「まずは週に2回、10分間のストレッチから始めてみましょう!」
など、 小さな成功体験を積み重ねられるような計画を立てることが重要。

この段階では、
患者さんの主体性を尊重しながら、行動に移せるよう背中を押してあげましょう。

※目標設定と行動計画については別の記事で詳しく取り上げます

4. 実行期(Action)

✅特徴:
実際に新しい行動を起こし始めた状態。

✅患者さんの声:
「リハビリ、頑張ってるよ!」
「でも、たまにサボっちゃうこともある…」

✅理学療法士としての接し方:

・行動強化
「〇〇さん、この調子で頑張っていきましょう!」
「〇〇さんの頑張り、私も嬉しいです!」
など、ポジティブなフィードバックを積極的に行う。

・進捗状況の確認と共有
目標達成シートなどを活用し、患者さんのモチベーション維持を図る。

・問題解決のサポート
「リハビリをサボってしまうのは、なぜだろう?」
「何か困っていることはない?」
など、患者さんの困りごとを把握し、解決策を一緒に考える。

・環境調整
自宅での自主練を継続しやすいよう、環境調整を提案する。

この段階では、
挫折しやすい時期であることを理解し、継続的なサポートを行うことが重要です。

※目標達成シートの詳細については別の記事で詳しく取り上げます。

5. 維持期(Maintenance)

✅特徴:
新しい行動を継続し、習慣化できている状態。

✅患者さんの声:
「リハビリが日課になったよ!」
「おかげで、前よりも体調が良くなった!」

✅理学療法士としての接し方

・達成の賞賛
「〇〇さん、目標達成おめでとうございます!」
「ここまで頑張った自分を褒めてあげてくださいね!」
など、患者さんの努力と成果を認め、自己肯定感を高める言葉をかける。

・新たな目標設定
「次は、〇〇を目標に頑張ってみませんか?」
など、さらなる目標を設定することで、モチベーションを維持する。

・自立の促進
「何か困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね」
などと、自立を促しつつも安心感を与え続けることが大切。


応用行動分析学を駆使して行動変容を促進!


行動変容ステージモデルと合わせて、
応用行動分析学(Applied Behavior Analysis: ABA)の知見を取り入れることで、さらに効果的にリハビリを進めることができます。

ABAとは、行動心理学を応用し望ましい行動を増加させたり、
問題行動を減少させるための科学的なアプローチのことをいいます。

最近の研究でも、ABAを用いたリハビリテーションプログラムの有効性が報告されています。

【ABAの基本原理】


行動の三項随伴性

「先行刺激→ 行動→ 後続刺激」
という一連の流れを分析することで、行動のメカニズムを理解する。

【リハビリ現場におけるABA活用例】

⚫︎目的
歩行練習時の疼痛を軽減し、歩行距離を伸ばす。

⚫︎先行刺激
疼痛の少ない歩行方法を指導する、歩行補助具を用意する。

⚫︎行動
患者さんが実際に歩行練習を行う。

⚫︎後続刺激
歩行練習後、疼痛が軽減したことを患者さんと一緒に確認する、歩行距離が伸びたことをグラフで可視化し、達成感を共有する。

☑️ポイント
後続刺激は、患者さんにとって嬉しいことやメリットとなるように設定することが重要です。

まとめ|患者さんの心を動かすリハビリを!


今回は、
行動変容ステージモデルと応用行動分析学を応用した、患者さんのモチベーションUP術を紹介しました。

患者さん一人ひとりの行動変容ステージを見極め、それぞれの段階に合わせたきめ細やかな対応を心がけましょう。

そのためには共感と傾聴を大切にし、
患者さんと信頼関係を築くことが重要です。

行動のメカニズムを理解し、強化や環境調整を効果的に活用することで、
リハビリ効果を最大化することができます。

この記事が、より良いリハビリ体験を実現する一助となれば幸いです!


【参考文献】https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/41/8/41_KJ00009647366/_pdf/-char/ja

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kochireha/5/0/5_KJ00004826658/_pdf


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