「T-city」「氷の花火」表現者 山口小夜子の世界
昨年秋、第23回アートフィルム・フェスティバル(愛知芸術文化センター)にて山口小夜子さん出演の93年作品「T-city」が上映された。
撮影・編集・音楽・美術・演出・監督
勅使河原三郎(ダンサー)
コンテンポラリーダンスとビデオアートというコンセプトで制作されている。
舞台でしか出来ないことがあるように、映像でしか出来ない表現。35mmフィルム制作。
この作品は難解なシーンがほとんど。
何故なら半分以上、山口小夜子さんの顔がぼやけている。
頭の中のイメージをそのまま映像化した、まさに芸術家が制作した究極の作品だった。
その後、山口小夜子ドキュメンタリー「氷の花火」も上映された。松本貴子監督。95年作品。
異次元な美しさ。
ケンゾー、ゴルチェ、サンローラン、コシノジュンコ、Dior、山本寛斎などのどんなハイブランドもさらっと着こなす「山口小夜子」。
この作品は小夜子さんの遺品を開封するというシーンから始まる。開封したのは小夜子さんが通っていた洋裁学校の後輩で、小夜子さんの存在を知らない若い子ばかり。
パリコレモデルとしては低い170センチの身長をカバーする存在感、本当はくりっとした丸い目。
目をわざと細めて切れ長の目をクリエイト。
何もかもプロ意識が高く、さすが世界の頂点に立ったモデルだけある。
晩年はモデルだけでなく舞台でも活躍、パフォーマーとして山海塾とコラボした映像も素晴らしかった。
美しい事が苦しい。
体はもういらない。
体は傷を運ぶ船。
彼女は言葉まで美しい。
この作品はDVD化が不可能らしいが、デザイナーやモデルを目指す方に見て欲しい作品。洋服に対する愛が溢れている。
上映終了後は、山口小夜子さんと親交のあったBATIK主宰のダンサー黒田育代さんのトーク。
私は、彼女の作品「ラストパイ」のワークショップショーイングに友人が出演すると聞いて観に行っていたので黒田さんの名前だけは知っていた。
あの狂気じみた舞台を作ったのはどんな人だろう?
黒田さんは清楚で美しくおとなしい感じの女性だった。自然と溢れたものが作品になったと聞いて鳥肌だった。
「ラストパイ」の初演を小夜子さんが見ており、衣装も小夜子さんから提供されていた。
小夜子さんが黒田さんにボロボロになるまで使ってね!と渡したオレンジの衣装。
あまりにもボロボロだから作り直して欲しいと依頼すると、ボロボロで消えてなくなるまで着て欲しいといわれたそう。
世界に白とオレンジ合わせて2着しかない。
本来ならヴィヴィアン・ウエストウッドの博物館に展示される予定だった。
現在はラストパイの再演の時だけその衣装が使用されている。
ずっと記録映像が観たいと思っていたが、衣装の関係でラストパイを映像で観ることは不可能であることがわかった。
https://www.art-it.asia/top/admin_ed_pics/192819
昨日は山口小夜子さんの命日でもあり、DOMMUNEで特集されていたので過去にSNSに投稿した記事をリライトした。
嗚呼、私も魂が撮りたい。
どうやったら魂を撮ることができるのだろう。
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