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【読書】残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

皆さんこんにちは。

橘玲さんの「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」を読みました。この本は、2010年発売の約14年前の本ですが、ずっと読みたいと思いながらも未読でした。
この度、Kindle unlimitedで読めるようになっていましたので、ついに読了。

14年経っても全く色褪せない素晴らしい本だと思いました。

勝間和代と香山リカの論争

「努力によって自己実現は可能である」(勝間側)と
「努力したくないひとがいてもいいじゃないか」(香山側)を

序章で述べ、「人は努力によって自己実現が出来るのだろうか?」という命題について、様々なデータと橘さんの主張がキレイなストーリーで描かれていく。

後半に行くにつれて、一人称の小説を読んでいるかのような感覚を抱きました。面白かったですねー。

私なりの理解としては、この本で述べられていることは、以下の4点かと。

  • 人の可能性は無限などではなく有限。それどころか、遺伝的にほぼ決まっていると言っても良い。

  • しかし、このこと(人の可能性は極めて限定的)は、人は幸せになれないということではない。

  • 現代における幸福とは、万人に分かり易い成功ではなく、限定的な環境で「認められること」かもしれない。

  • そして、限定的な環境を上手く(適切に)選ぶことが出来れば、十分に認められる可能性はある(幸せになることが出来る)。

人的資本の話

アメリカの経済学者ゲイリー・ベッカーの「人的資本論」からの流れ。

ベッカーはまず、人はだれでも働いておカネを稼ぐ能力を持っていると考える。これが「人的資本」で、ぼくたちはみんな人的資本を労働市場に投資して利潤(報酬)を得ている。

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

端的で分かり易い。更に続きます。

さらに人的資本理論は、ライフステージによる経済的な戦略のちがいも上手に説明できる

同書

つまり、若いときは金融資本(お金)がなくて、
時間と体力があるから、人的資本を汗水流して働く(人的資本の投資)。
年を取ると、人的資本は極小に(誰も雇ってくれなく)なるから、金融資本(年金など)から生活する、
ということになる。

この辺りは表現こそ違えど、最近の啓発書でも似たような論旨が多い様に思います。

「信頼」や「経験」というキーワードで同じように説明されることも多いですね。

信頼の話

面白いな、と思ったのは「人は変われるのか?」に関する章で(結局、変われないという主張ですが)、

チンパンジーと同様、ヒトも大人になれば性格は安定するし、変わらない(一貫している)ことが信頼を生む。

同書

と書かれていた場所です。確かに大人になって、相当頑張らないと性格は変えられないと思います。
そこは常々感じていたのでOK。

変わらないことが信頼を生む」。

なるほど。確かに、ずっと明るくて社交的だと思っていたのに、突然無口で閉ざしていたら周りが不安になりますよね。

高校時代にある女性が「xxxさんは情緒不安定だから」と言われていたのを唐突に思い出しました。思春期は皆不安定ですが、確かに大人で情緒不安定だと警戒されますよね。

いつも同じトーン、いつも同じムードというのは確かに信頼を生みます。なるほど。

この後、本書は自分のエリアでの「信頼」という核の部分に入りますが、その際にもこの要素は効いてきそうですね。

社会形成の話

ここも単純に面白かったです(興味深かった)。

日本人は集団主義的で、アメリカ人(欧米人)は個人主義的という一般常識(?)に対して社会心理学者の山岸俊夫さんの実験ではむしろ逆、日本人はアメリカ人よりもずっと個人主義的で一匹狼的だ、という結論から。

安心社会でクラス日本人は、仲間内では集団の規律に従うが相互監視・相互帰省のくびきから離れれば個人主義的(というか自分勝手)に行動する。
それに対してしっぺ返し戦略を基本とする社会で育ったアメリカ人は、仲間であるかどうかとは無関係に、人間関係をとりあえずは信頼(協力)からスタートさせる。

同書

これはアメリカで生活しているとものすごく腑に落ちます。
日本人は結局、周りの評判を常に気にしているので規律に従う(本当はその規律自体はどうでも良いと思っている)。
周りが気にしそうだから従う。

アメリカ人は、規律云々よりも、やって欲しいのかどうか?を聞く。
必要ならば規律がどうでも良くてもやる(もちろん加減と限度はあります)。

アメリカでは、警戒しているからこそ親切にしているという感じますね。

私も郷に入って、そのように行動することが増えました。
上手く言葉にはできませんが、日本とは別の行動様式であることは間違いありません。

例えば、お客として入った店(レストランでもサービスでも)でも、可能な限り「良い客」として振舞っている自分がいます。
そうしないと、良いサービスをしてもらえないからです(しっぺ返し)。

ロングテールとショートテール

結局これが結論かなと(終章ですし)。

『上級国民/下級国民』をベルカーブとロングテールで説明する (橘玲公式BLOGより)

上級/下級国民という話は一旦置いておいていただき、レコード店の話が分かり易いです。

ショートヘッドとは、いわゆるミリオンセラーのCDです。オリコンランキング1位みたいな。レコード店は場所と在庫に限界があるから、どうしてもショートヘッドで営業をすることになる(書店も同じ)。
一方で、最近はもうデータでハードディスクの容量も凄いですから、スペースなんか気にしなくて良い訳です。
インディーズでもなんでも置いとけと。

そうするとマニアックなジャンルが好きな人はロングテールを買うことになる。ロングテールにも当然価値があるわけです。

私も14年も前の本を買って読んでいる訳で、普通の書店では、なかなか14年も前の本をずっと置いておくわけにはいかないですよね。

でもそういう世の中になっている。

自分は、ショートテールには中々なれないとさっさと悟って(メジャーリーグのホームラン王にはなれない等)、どんなジャンルのロングテールなら、信頼を獲得できるのか?という戦略を取るべきだ、と読みました。

だいぶ違う話だとは思いましたが、配られたカードで戦う、という話とも根っこでは通じるかもしれませんね。

つらつらと書いてしまいましたが、非常に面白かったです。

学びにもなり、雑学も知れて、何度も読み直すと思います(Unlimitedではなく、買うと思います)

ではまた!

Have a good day!

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