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『斬る(映画)』〜『パトレイバー』後藤警部補の元ネタ?ーー『椿三十郎』と比較して見えた岡本喜八の個性
視聴環境:U-NEXT
【内容】
侍を辞めた源太、百姓を捨てて侍になることを心に決めた半次という、二人の対照的な男を中心に描いた山本周五郎原作の時代劇。
監督:岡本喜八
出演:仲代達也
【感想】
ラジオ『After 6 Junction』の岡本喜八特集を聴き、この作品を観ることにしました。
なんでも、本作に登場する仲代達也のキャラクターが『パトレイバー』の後藤警部補のモデルになっているという話を聞き、興味を持ったのがきっかけです。
主演の仲代達也は、とぼけた味のある演技が魅力的でした。
仲代達也といえば、シリアスで重厚な演技のイメージが強かったのですが、実は本人はこの映画のように飄々とした、とぼけた雰囲気の持ち主なのだとか。その独特な物腰や話し方は、まさに後藤警部補そのもの。改めて、仲代達也がいかに引き出しの多い役者であるかを実感しました。
近場で開催されていた仲代達也出演作の名画座イベントに参加しておけばよかったと、今さらながら悔やまれます。
また、本作は黒澤明の『椿三十郎』と同じく山本周五郎の原作をもとにしています。プロットはほぼ同じながら、岡本喜八と黒澤明の作家性の違いが鮮明に表れているという話も興味深かったです。
映画全体のテンポが非常に良く、むしろ現代的とさえ感じました。
コミカルな展開、斬り合いのゴア描写、お色気シーンなど、大人のためのエンターテインメント作品としての完成度が高い。
庵野秀明が岡本喜八から影響を受けたと公言しているだけあり、構図やカット割り、音の使い方に共通点を感じました。そのせいか、本作自体がアニメ的な作品のようにも思えます。
黒澤明との作風の違いも際立っていました。軽快なエンターテインメント性と、独自の人間観による作品世界。登場人物は誰も信用ならないが、同時に人間臭く滑稽でもある。そのドライな人間観や死生観には、従軍経験のある監督ならではの視点が滲んでいると感じました。
あと、終わり方が、『ルパン三世カリオストロの城』のラストぽかったのは意外でした。去る主人公に、一緒に連れて行ってくれと追っていく展開とか、2人のやり取りとか、結構似ていると感じました。岡本喜八は、庵野秀明や押井守だけでなく、宮崎駿まで、色んな人たちに影響与えているんだなあと感じた1本でした。
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