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『アンメット ある脳外科医の日記(ドラマシリーズ 8話〜最終話)』〜医療ドラマの新たな金字塔――ミヤビの記憶が紡ぐ奇跡

視聴環境:U-NEXT

※ネタバレします。


【内容】
事故により記憶障害となって、2年前以降の記憶が、その日のことしか残らなくなってしまったミヤビ。
ミヤビは、変わり者の脳外科医である三瓶友治との出会いをきっかけに 、脳外科医として立ち直っていく。


【感想】
医療ドラマとして、しかも主人公の医師が持病を抱えているという設定を持つ本作は、連続ドラマとしての完成度が非常に高いと感じました。ミステリー要素で視聴者を引き込みながらも、人間ドラマをしっかりと描いている点が見事です。また、物語が進むにつれて、出演している役者たちがそれぞれの見せ場を持つ構成になっているのも印象的でした。
全11話の中でも、特に最後の4話は圧巻でした。ミヤビの事故の真相が明らかになり、それをきっかけに劇的な展開が始まります。それまでに丁寧に配置された伏線が一気に回収されていく構成には深い感動を覚えました。
特に9話のラスト近くで描かれた、三瓶とミヤビの二人の会話シーンは圧巻です。間の取り方や表情、セリフの自然さがまるでドキュメンタリーを見ているかのようでした。まさに名シーンと呼ぶにふさわしいもので、役者に自由な演技をさせ、それを複数台のカメラで撮影しているのではないかと想像しました。このように数々の名シーンを積み重ねながら迎える最終話への展開は感動的で、さらにその感動を揺さぶるような複雑な感情の動きが織り込まれています。
この急展開は、もし演じる役者が未熟であれば、作品全体の積み上げを壊しかねない危険な場面です。しかし、本作では役者たちの卓越した演技力によって、むしろドラマをさらなる高みへと昇華させていました。視聴しているこちらとしては、まるでとんでもない現場に立ち会っているかのような感覚に襲われました。
そんな印象的な9話を観ていたのが、たまたま東京駅地下でスープカレーを注文しているときでした。ちょうど配信サービスで観ていたのですが、その名シーンが終わった直後にカレーが運ばれてきました。配膳してくれた若い女性店員が、スマホ片手に涙目になっている中年のおっさんをちらりと見て、少し冷ややかな視線を投げかけて去っていきました。
心の中で、「ちょっと待って、違うんだよ」と言い訳しながら彼女の後ろ姿を見送りました。まさか、あんなに普通の会話シーンが、ここまで感動的なものに発展するとは予想していなかったのです。動揺したまま食べたスープカレーが、いつもより少し塩辛く感じたのは、そのせいかもしれません。
このシーンを思い返すと、改めてこのドラマがいかに複雑で難しい役を求めていたかを実感します。役者たちにとっても、演じる前には相当なプレッシャーがあったに違いありません。そして最終話となる11話、ミヤビの脳手術のシーンでは、多くの人々の記憶や想いが重なり、極めてエモーショナルな場面が描かれました。
「人間ドラマとはこう描くものだ」と言わんばかりの圧巻の出来栄えで、日本のドラマ史に確実に残る医療ドラマだったと思います。
そして、なにより性愛的な描写がないのに、もっとも男女の愛とか絆を描いている点が、最も優れた点だとも感じました。

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