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『リンダ リンダ リンダ(邦画)』〜韓国人留学生がボーカルに…!?ぺ・ドゥナ主演作、ちょっと“もったいない”仕上がり

視聴環境:U-NEXT

【内容】
日本の高校を舞台に、女子高生メンバーによる軽音楽部が、文化祭で韓国人留学生をボーカルに迎え、演奏会を成功させるまでの青春群像劇。

【感想】
韓国人留学生がたどたどしい日本語でバンドのボーカルを務める展開について、最初はなぜそのような設定になったのかよく理解できずに観ていました。しかし、途中で調べたところ、主演が有名な韓国人女優ぺ・ドゥナであることがわかりました。おそらく、ぺ・ドゥナを起用して日本の女子高生バンドを描きたかったのかもしれません。
韓国人留学生をトリックスター的な存在として設定しているようですが、そのキャラクター設定が十分に活かされていないように感じました。その結果、物語全体の推進力が弱くなってしまっている印象を受けました。
韓国人女子高生がボーカルに選ばれる理由が、軽音部の人間関係のもつれからなんとなく流れで決まるという展開になっています。この流れにもっと必然性を持たせ、物語の終わりに満足感を得られるようにするにはどうすればよいのか、と考えさせられました。具体的には、学園祭で歌うことがこの留学生や軽音部のメンバー、あるいは観客にとって意味のあるものとして描けるかどうかです。
たとえば、音楽を通じて留学生自身や家族の問題を克服する要素や、周囲の人々に変化を促すきっかけとして音楽が機能するなどの設定があれば、より説得力が増すのではないでしょうか。留学生がトリックスター的な立ち位置である以上、学校や友人関係といった人間関係の「破壊と再構築」がなければ、物語の構造上、説得力に欠けるのは避けられないと感じました。
一番わかりやすいのは、留学生自身のトラウマの克服や成長、人間関係のピークを描くことだと思います。しかし、この作品では留学生の主人公はもともと気が強く、舞台に立っても物怖じしないキャラクターです。もしトラウマの克服や成長を描くなら、初めは内向的で傷つきやすいキャラクターのほうが、よりドラマとして成立しやすかったのではないでしょうか。
ぺ・ドゥナは、この作品に出演した時点で20代半ばでしたが、高校生役に違和感なく応えていました。彼女なら気の弱いキャラクターも十分に演じられたと思いますし、その演技力をもっと活かすことができたのではないかと思います。
最近は減ってきたようにも感じますが、日本のオリジナル企画の映画には、なんとなくストーリーラインや設定が曖昧なまま進行し、映像化されてしまうケースが少なくありません。これは、均一性を持った国民性という作り手の無意識の前提があるために生じる問題なのかもしれません。
もちろん、制作サイドの立場になって考えると、資金や製作委員会の意向、タレント事務所の関係など、さまざまな制約があるのは理解できます。
それでも、この映画の設定や出演者を考えると、もっと良い作品に仕上がったはずで、なんとももったいないなと感じました。

https://eiga.com/movie/1499/

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