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アフターAI時代の必須能力-鳥潟幸志『AIが答えを出せない問いの設定力』

文章添削士がおすすめの本を紹介する「文章添削士が推す! 秋の推薦図書」シリーズ。
今回は、小山透さんによる鳥潟幸志『AIが答えを出せない問いの設定力』の紹介記事をお届けします。

「AIに仕事を奪われるのではないか」という心配がある。メディアは、しばしばAIの進化やその影響をセンセーショナルに報道する。AIが単純作業や定型業務を自動化することで、これらの仕事が減少する可能性があるため、仕事が奪われると感じることもあるだろう。

しかし、そんな心配は必要ない。AIが得意としない「創造的な仕事」は人間にしかできない。AIの影響については多くの誤解や心配があるため、正しい理解と適切な対応が必要である。

『AIが答えを出せない問の設定力』は、AI時代を生き抜くために必要なスキルの本である。創造力・独創力などのクリエイティビティを磨くことができる。日々変化する時代の中で「自分らしく生きていくために問いをどのように役立てることができるのか」を解説している。

この本で一番強調されているのが、タイトルにもなっている「問いの設定力」である。これは「そもそも何を解決するべきなのか?何を理想とするべきなのか?」といった問いを設定する力である。生成AIが強いのは問いに対して答えを発見する力であり、人間がこの力を高めようとしてもいずれ代替されてしまうリスクがある。だから「問いを設定する力」を高める必要がある。

いくらAIといえども「質の良い問い」でなければ「質の良い回答」は得られない。意思に関する問いや「イマ・ココ」の状況判断に関する問いなど、AIにも答えにくい問いが存在する。そうした問いを設定し答えていくのは依然として人間に求められる力である。

アフターAI時代に求められる能力は「『問いの設定力』『決める力』『リーダーシップ』そして『自分らしさ』である」と説いている。良い問いを生み出すのも、物事を決めるのも、周囲を巻き込むのも、本人の内面にある価値観が大きく影響してくると思われる。

もちろん、先例や他人の考えを参考にするときがあってもよい。しかし、常に外部の情報に頼っていては自分で物事を考え、決めて、周囲に影響を与えることは難しくなっていくのではないだろうか。

著者の鳥潟幸志氏は、グロービス提供の動画学習サービス『GLOBIS 学び放題』の事業リーダーを務め、自らもグロービス経営大学院や企業研修で講師を務める。

「自分らしさ」を深掘りし、結論を導くためには自身の内面に向けた「問いの設定力」が必要になる。当書では「問いの設定力」とは何か、そしてその鍛え方を詳しく解説している。

問いの設定力の中でも「イマ・ココ」で答えるべき問の設定はAIが苦手としている。人間にとっても容易ではない。著者の例として、プロジェクトの進捗報告などの経験談がわかりやすい。自分を信じて人間らしく生きるための先人の知恵「致良知」「最善観」「先義後利」などの言葉で自らに問い続けることの重要性を説いているところが面白い。

当書は、特にアフターAI時代を生き抜くために自分を再発見し、自分らしく生きたいと願う人に読んでほしい。「自分らしさ」を再発見する問いの設定力として、過去・現在・未来の視点で方法論や問いのサンプルを基に自分自身を再発見することができる。そして、自分らしい人生を生きようではないか。

(執筆者 小山透)



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