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思い込みからの脱却-ハンス・ロスリング(他2名)『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』

文章添削士がおすすめの本を紹介する「文章添削士が推す! 秋の推薦図書」シリーズ。
今回は、小山透さんによるハンス・ロスリング『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の紹介記事をお届けします。

この本の著者からの質問。「世界の人口のうち極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったか」 A.約2倍。B.あまり変わっていない。C.半分になった。答えはC.である。

あなたは正解できただろうか。世界の正解率は平均で7%であった。「世界の貧困は増えている」というのは誤解である。実際には、極度の貧困は過去数十年で大幅に減少している。このように、初歩的な世界の事実でさえ知られていない。データや事実に基づかない認識が多く存在していることに著者は嘆いている。

『FACTFULNESS』は、社会科学や経済、統計に関する書籍である。ファクトフルネスとは、データや事実に基づき世界を正しく見る習慣のこと。つまり、私たちが持っている「思い込み」を乗り越える方法を紹介している。

この本を読めば、自分の「思い込み」を認識し、公平で包括的な視点を持つことを学ぶことができる。私たちは「偏見」や「思い込み」によって生きている。これは、新しい情報を受け入れる能力を制限し、私たちの視野を狭める可能性がある。

「偏見」は、事実を十分に調べずに、先入観をもって判断を下すことである。人々が情報を処理し、理解するための心理的なショートカットとして機能する。しかし、偏見は誤解や不公平を生む原因となる。また「思い込み」は、特定の事実や状況について、証拠に基づかずに固定した信念を持つことをさす。自分の経験や観察に基づいて形成されることが多く、誤った情報や誤解を広める原因となる。

内容は、教育、貧困、環境、エネルギー、医療、人口問題などの幅広いテーマを取り上げ、最新の統計データを用いて世界の正しい見方をわかりやすく紹介している。

著者のハンス・ロスリング氏は、賢い人ほどとらわれる偏見や思い込みから解放されれば、世界を正しく見るスキルが身につくと述べている。教育やビジネスなど、さまざまな分野で活用することができる。たとえば、教育では事実確認の重要性など、ビジネスでは投資判断やマーケティングなどに活かすことができる。

ファクトフルネスは、私たちが世界を理解するための新しい視点を提供し、データに基づいた事実を通じて世界をより正確に理解するための一助となる。偏見や思い込みをなくすには、与えられた情報のみでなく、自ら情報を取りに行き、データで世界を見ることが重要である。

序盤で「10のドラマチックすぎる本能」を挙げている。これらの本能がもたらす偏見や思い込みについて、豊富な図表とデータや著者の人生経験を交えて詳しく解説するとともに、これらの本能を抑えるためのさまざまな方法を紹介している。

私たちが普段無意識に持っている偏見や思い込みについて、具体的な事例とデータをもとに明らかにしてくれるところが面白い。また、それらの偏見や思い込みをどのように克服すべきかについての具体的なアドバイスも提供している。

当書は、偏見や思い込みが強いと感じている人に読んでほしい。自分自身の思考パターンを見つめ直し、より現実に基づいた世界観を持つことができるようになる。世界の全体像がデータをもとに理解できるようになり、知識不足の解消につながる。これは、個人的な成長だけでなく、より公正で平等な社会をつくりだすためにも重要なことである。

(執筆者 小山透)


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