質問097:リターンをどのコースに返すかは最初から決めておいていい?
回答
▶結論「考えて選択する必要はない」
① につきまして。
アプローチを仕掛ける1球前、すなわち対戦相手が返球する瞬間の「ボール」は見ていますよね。
だとすると、次に移動する相手のポジションも、おおよそ分かります。
自分から見てコートの左側で返球した相手がまさか、いきなり右側まで移動していた、というテレポーテーションはないはずだからです。
ですから、相手のポジションはおおよそ分かるのですから、自分が打つときに、コースをストレートかクロスかと、「考えて選択する」必要はありません。
▶集中を向ける「対象物」も、集中を向ける「時間軸」も、ズレる
事前に分かっているのだから、改めて考えて選択しようとすると、時間のロスが生じます。
そればかりではありません。
狙うコースを考えている最中、ボールに対する集中力もロスしています。
意識が「今のボール」ではなく、これから狙おうとする「未来のコース」へ向かうから、集中を向ける「対象物」も、集中を向ける「時間軸」も、ズレてしまうのです。
手に持つボールを的中させるにあたって、そのターゲットのある場所が事前に分かっていれば、投げながら右を狙うか左を狙うか、「考えて選択」しません。
投げるか打つかの違いは確かにあるにせよ、理屈は同じです。
▶「ロス」がないぶん「余裕」ができるから「狙える」
相手が打つ瞬間のボールを見ていれば、相手のいるポジションは、もちろんピンポイントではなくとも、自分が打つときにはおおよそ事前に分かっています。
ですから、打つときに改めて狙うコースを「考えて選択」しなくていいのです。
そうすると何が起きるか?
相手が打ち返したときも、自分が打ち返すときも、その間も、ずーーっとボールに集中力を絶やさずい続けられます。
すると、右か左かなどと考えて選択しようとする、さきほど確認した「ロス」がないぶん「余裕」ができるからリンク、アプローチショットを「狙えるようになる」のです。
▶2手先ですでに「最低6パターン」の想定が必要
②につきまして。
よく言われます。
「先のことは分からない」。
ご質問①が「この場合はシングルス」とあてえ断り書きがありましたので、②は、ダブルスで話を進めますね。
雁行陣のデュースサイド展開で、ご自身がリターンを担うと想定。
2手先というと、リターンが最初の1手で、おおまかにフォアに来た場合と、バックに来た場合を想定しましょう。
リターンを、相手のサーブがフォアに来たらクロスに打ち返す場合と、バックに来たらストレートに打ち返す場合が1手目。
2手目は、サーブがフォアに来たから、自分はリターンをクロスに打って、次に相手後衛がストロークをクロスに返してくる場合と、ストレートに返してくる場合が想定されます。
一方サーブがバックに来たら、自分はリターンをストレートに打って、相手前衛がボレーでクロスに返してくる場合と、ストレートに返してくる場合が想定されます。
2手先ですでに6パターンの想定が必要になります。
▶シミュレーションしながらプレーできる?
「何も考えずに漠然と構えるのが一番いけない」とコーチはいうけれど、構えに入ってから2手先を考えると、最低6パターンをシミュレーションしなくてはならなくなります。
確かにテニスは、見た目は簡単そうに映ります。
だから「6パターンをシミュレーションしながらでもプレーできる」などと、侮られがち。
ところが実際にやってみると、「どうしてあんな広い相手コートに入らないのか?」と不思議になるくらい難しく感じるプレーヤーも少なくありません。
果たしてボールに集中できるでしょうか?
▶面白いのはここから!
いえ、6パターンだけではありません。
「最低6パターン」と言いました。
そして面白いのは、ここからなのです。
ここでは「おおまかに」と先述したとおり、ストレートとクロスのコースだけを取り上げています。
しかしほかにも、2手目で相手後衛にストレートロブを打たれた場合は、自陣はサイドを入れ替えるポジションチェンジか、味方前衛がロブ処理するかの2想定が追加されます。
また自分がリターンをクロスへ返したのち、相手後衛がネットアプローチを仕掛けてきた場合は、自分は相手の足下に沈めるのか、ロブで抜くのか、突き球で応戦するのかの3想定がさらに追加されます。
構えの段階で2手先を考えると、最初の6想定にプラスして、この時点で11想定。
▶想定が音を立てて崩れるとき
いえ、ここではそもそもの1手目で、あえて相手サーバーが(そしてご自身も)ステイバックすると決めつけて話を進めていますが、相手がサーブ&ボレーを仕掛けてきた場合の想定も、2手先を考えるとなると、しておかなくてはなりません。
そればかりではありません。
1手目のリターンで、相手サーブがフォアに来るかバックに来るかと決めつけて話を進めていますけれども、ボディを突かれたら、その先のすべての想定が、サザンの歌ではないけれど、音を立てて崩れます。
もちろん1手目のリターンで、フォアに来たら、バックに来たら、ボディに来たらと3想定しておくこともできるかもしれませんけれども、その先の想定はさらに、コチラでご紹介した曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)の例ではありませんけれども、指数関数的的にシミュレーションしなければならない想定パターン数が爆発します。
まだまだ控えめなほうです。
たとえば自分がリターンをクロスへ打ち返したあとの相手後衛によるストロークは、クロスかストレートかだけではなく、センターもあるもしれませんし、文字にするには限界があるのでこの程度にとどまりますが、実際のコート上では、相手の打ってくるボールは、スピードも回転もさまざまです。
ショットも、ドロップショットもあれば、アングルショットもあり、さまざまです。
▶不確実な未来を考えるせいで「不安」になる
「何も考えずに漠然と構えるのが一番いけない」とはいうものの、「2手先くらいまで考える」と、こうなります。
さらに2手先想定が、リターンの1球目のときだけならまだしも、「つねに2手先」を考えるとなると、1球打ったあとには、また新たな2手先が指数関数的に用意されます。
意味があるでしょうか?
意味があるどころか、むしろ不確実な未来について「ああなったら……」「こうなったら…」などと考えるせいで、不安にならないでしょうか?
不安は、現状が安全ではないことを知らせてくれる心からの機能的なアラートですが、このように不安視するせいで、メンタルが不安定になり、むしろリターンの現状が「危険に脅かされる」とすれば本末転倒です。
▶「木を見て森を見ず」になる
よく言われます。
先のことは分からない。
分からないことを分かろうとするから、ますます不安になって、現状が危険に脅かされます。
もちろん、「大まかに考えておけばいい」という言い分もあるでしょうけれども、大まか以外の想定のほうがほとんどなので、それはまるで「これがすべてだ」と決めつける視野狭窄になりかねません。
おおまかに想定すればするほど、相手のサーブ&ボレーや、ボディサーブ、ストレートロブの可能性が、見えなくなるのです。
またご自身がリターン ダッシュする積極性も、くじかれるのです。
「木を見て森を見ず」なのです。
▶能力が最も高まる「今」。そのための「お助けアイテム」はコレ
テニスに限らず仕事などでもそうですけれども、私たちは今に集中するとき、最も能力を発揮します。
2手先を考えると、「今」ではなく「先」が気になり、せっかくの持てる能力を発揮できないのです。
ですから構えに入ったら、いえ構えに入る前から、今に集中する。
とはいえ、対象が何もないのに今に集中するのは、だれにとっても至難のワザです。
テニスではボールが、その今に集中するための「お助けアイテム」となってくれるのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
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