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質問143:運動連鎖を使うには?

自分はフォアのフォームで下半身の力がうまく使えていないと言われます。もっとしっかり運動連鎖がつかえる打ち方にしたいのですがどうしたらいいのでしょうか?

回答


▶確かに運動連鎖は行われている。ただし「行なう」のではなく


専門家はスイング解析ソフト等を駆使して、「プレーヤーの下半身から上半身への動きには時差があり、地面を蹴った力を増幅させながら体幹から末端へとエネルギーを伝達させている」などと分析します。
 
確かに、そのような運動連鎖によるエネルギーの伝わり方になっているというのは事実です。
 
とはいえそれと、プレーヤーが「意識してそうしているか」どうかというのとは、まったく別の話です。

▶お箸の扱いさえ「意識」すると……


ですから見た目の現象を表面的になぞらえて、スイングやフォームを参考にしてみても、なかなか上手くいかないのではないでしょうか。
 
確かに私たちは食事をする時、親指と中指の連係によりお箸を動かし、人差し指のつけ根で支持しながら、なおかつ適度に脱力して口元へと食べ物を運ぶのですけれども、そんな身体動作は「意識してない」という話です。
 
この話には元ネタがあって、ある外国人著者のゴルフ教則本には「食べ物を口にインさせるなら、意識しなくても百発百中成功させることができるのに、手の動かし方を意識したら口元を外してしまった!」というようなエピソードが紹介されていました。
 
身体動作を意識するということが、何かしらの目的を持って行う事情があるのでもない限り、とても不自然な行為であることを示唆しています。
 
まさに画像のブランコのイメージ。

ブランコに乗るのに、「手振り」で揺すろうとする子どもはいません

教えられなくても体幹から末端へエネルギーを伝える「運動連鎖」になっているのです(参考記事「自然上達が起きるとき」)。

▶運動連鎖のポイントは「イメージの書き替え」

 
ですから、「下半身から上半身への動きには時差があり、地面を蹴った力を増幅させながら体幹から末端へとエネルギーを伝達する」という運動連鎖の体づかいを意識しながらスイングするというのは、ものすごく不自然で、強烈なギクシャク感を招くわけです。
 
有り体に言えば、ボールを打つ時に運動連鎖は、意識してもできません。
 
では、手打ちの人が運動連鎖を使うにはどうすればいいかというと、身体動作を変えようと意識するのではなく、身体動作が自然と変わるようにイメージを書き換えるのがポイントです。

▶フォアの「飛びすぎ」を怖れている


フォアを打つ時に運動連鎖ができていないというのであれば、恐らく「フォアが飛びすぎる」のを怖れ、「フォアを入れたい」と強く思っている
 
つまり潜在的に「結果」を気にしてしまっていると想像できます。
 
そうすると、バックアウトさせたくないイメージが、スイングを手打ちにさせるということが起こります。
 

▶運動連鎖が生じる「イメージづくり」


さて運動連鎖を使ったスイングを行うのであれば、たとえば相手コートのバックフェンスに、ライナーで突き刺さるボールを打ってみてください。
 
手打ちでは到底無理だから、下半身との連係が取れた運動連鎖のスイングに、否が応にも改まる可能性があります。
 
「下半身から上半身への動きには時差があり、地面を蹴った力を増幅させながら体幹から末端へとエネルギーを伝達する」というスイングに、意識しなくても自然とそうなるということです。

結果的に腕で振らなくても、体幹がエネルギーを生み出し、手は振られる役割を担う運動連鎖のスイングに改まります

▶バックアウトはこうして防ぐ


だけど「運動連鎖を使えても、バックアウトしたら意味がない」とお考えであれば、あとは打球タイミングを見直すことで問題は解決されます
 
意図的にオーバーするボールを打つのでもない限り(もう穿って言えば、コートの空間認知が歪んでいない限り)、バックアウトしてしまうというのであれば、その原因は打球タイミングを外して打った、ただそれだけです。
 
「ラケット面が上を向きすぎていた」「ふかした」などというエラーも、打球タイミングを外したのが原因の本質。
 
なのに「ラケット面を伏せよう」「ふかさないように体の開きを抑えよう」などとすると、またスイングからは運動連鎖が失われ、手先だけの打ち方になるという堂々巡りを繰り返すのでご注意ください。
 

▶スイングの「引っかかり」「詰まり」「窮屈感」を取り除く


私たちの体は本来目的を遂行するにあたって、淀みなく、滑らかに動くようにできています

なのに引っかかったり、詰まったり、窮屈だったりする感じを覚えるならば、それは何かしらの誤ったイメージに基づき動いているからです。

いつも出す例ですけれども、「トップスピンのスイングは下から上」を意識しすぎると不自然な動作になって、スイングに引っかかり、詰まった感じ、窮屈感が出ます。

もしそういった気持ち悪い感じをなくしたい場合は、ボールを打たない素振りで滑らかにスイングできるようにします

あるいはボールを打つ場合でも、ショットが入るか入らないかの結果は気にしないように練習します。

運動連鎖の話からは逸脱しますけれども、常識的なテニス指導が伝えるトップスピンの打ち方につきまして、前から水平方向に飛んで来るボールに対して、下から上へラケットを垂直方向に振り上げてボールを捕えるというのは、あえてテニスをハードモード化しているようなものです(参考記事「『スピン信仰』と『フォーム神話』が、日本の才能をスポイルした」)。
 

▶常識的なテニス指導がスイングを「気持ち悪く」する


ですから運動連鎖を覚える際、「トップスピンは下から上へスイングする」や「打点は体の前にする」などの常識的なテニス指導で伝えられているフォームは、意識しなくて構いません。

それらを意識すると(意識するから)、引っかかったり、詰まったり、窮屈だったりする気持ち悪さが出てしまうのです

型にはめると、罠にはまります

ご自身の体が感じる滑らかに振りやすいスイングに任せて、ただ振るのです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero