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質問147:相手の深いボールと弾まない短いボールが苦手

今さら?という感じなんですが、
・バックハンドを打つとき、「薄く」握ったほうがいいでしょうか?
今の私のバックハンド球質は「どフラット」ではないですが、「すごくスピン」
というわけでもありません。
チャンスボール等の攻めるボールはストレートもクロスもある程度打てますが、
相手の深いボールと弾まない短いボールが苦手で、しのぐボールつなぐボールの
安定が課題です。
意識すれば足元に落ちるボールも打てますが、気を抜くと「浮いた速いボール」
になってしまいます。

ボレーとサーブは薄く握っています。
今年の目標は試合での結果を出すことと、引き出し(球種やタッチ)を増やすことです。

回答


▶「握り方」を頭で考えない


薄く握ったほうがリーチが広がるので、相手の深いボールや弾まない短いボールに対しても、しのいだりつないだりするボールを安定させやすい、というお考えなのかと想像します。

しかし、得策ではありません。
 
どういうショットを打つのかのイメージに従い、その時々の状況、※※さんのスイングの傾向や慣れ、得たい打球衝撃の強弱、タイミングなどから、体は総合的に判断して、ベストの握り方を自動的に選択してくれます
 
頭で考えて(意識して)、握り替えるという操作をやっても、なかなか上手くいくものではありません。
 
ただし、練習の中で薄い握りと厚い握りをいろいろ試す経験は有効で、そのイメージの蓄積があると、冒頭で申し上げたとおり、体は自動的に握りを、その時々の状況に応じて変えてくれます
 

▶グリップ問題はテニス上達の「本質」になり得るか?


ご質問にお答えするならば、プロでもグリップの厚さ薄さは千差万別
 
そのグリップは、その時々の状況、そのプレーヤーのスイングの傾向や慣れ、得たい打球衝撃の強弱、タイミングなどから総合的に判断して、形として自然に現われたひとつの「結果」です(いいショットが打てる「原因」ではない)。
 
なので薄く握るべきかどうかに、「これが正しい」と言える答えは存在しません。
 
厚い握りでのほうが上手く打ち返せるプレーヤーがいる限り、グリップの問題は「本質ではないということですね。
 
本質ではない問題(現象)を意識し始めるのが、テニスがハードモード化する原因です(関連記事「ボレーは『横向き』って言ってなかった!?」)。
 

▶「速記」と「習字」、持ち方は変わるのでは?


鉛筆の持ち方を変えたからといって、筆跡を美しく変えられるわけではないのと同じです。
 
その時々の状況、その書き手の傾向や慣れなどから、手が総合的に判断し、持ち方を変えると思います。
 
たとえば速記するならこの持ち方、習字の時にはこの持ち方、塗り絵で色をつけるならこの持ち方と、試してみると、意識しなくても、持ち方は自然に変わっているのではないでしょうか?
 
それは、どういう字を書くのか、どういう色の塗り方をするのかのご本人のイメージに従い、筆使いの傾向や慣れ、得たい筆圧の強弱などから体が総合的に判断して、ベストの持ち方を自動的に選択していると言えます。
 

▶感覚を「ないがしろ」にするとチグハグになる


このとき、自分の傾向や慣れに従わず、言い方を変えると感覚をないがしろにして、強引に持ち方(形や見た目)だけを変えたとしても、全体としてはチグハグになりやすい
 
それは「部分限定」のフォーム矯正ですから「全体」としてのバランスを崩すのです(関連記事「ロボ化するプレーヤー『ふたつにひとつ』の正体」)。

▶見えるものが見えなくなるとき


深いボールと短いボールを、しのいだりつないだりするのが上手くいかないという場合には、今一度平常心でボールを見られているかどうかを、こちらのリンクでご確認してみてください。
 
あるいは、「ボールの見方に迷子になったら、『矢吹ジョー』を真似する」です。

グリップをどうするか考えるよりも、きっと上手くいくと思います(動かされると、「ヤバイ!」「何とかしなきゃ!」等の思いから、つい心が動揺し、見えるものも見えにくくなります)。
 
見ることができると、それに応じた反応を体は示そうとするので、グリップが変化するかもしれないし、別に変化しないかもしれません。
 
でもそれはそれで構わないこと。
 
タイミングが間に合わないのに持ち替えようとしても、やっぱりミスします。
 
意志でどうにかするのではなく、体による自動的な反応に身を委ねるのです(その引き出しを多くするために、練習では色んな厚さのグリップを経験しておきます)。
 

▶「質の高いフットワーク」の正体


あるいは浅いボールと深いボールの対応に苦慮されるというのであれば、ポジショニングとフットワークを見直すことで改善される可能性が高そうです。
 
基本的には深く追い込まれたボールがいちばん難しいので、このボールが楽に捕れるようにポジショニングするのが望ましい。
 
そのためには当然、基本のポジションは(ライジングショットで打ち返すのでない場合)ベースラインよりも後方に下がる必要があります。
 
下がって構えておけば、浅いボールを落とされたら前に走らなければなりませんが、そのようにして前後にポジションを入れ替えられる移動が、「質の高いフットワーク」の正体です(関連記事「テニスも『ヒット&アウェー』」)。

もちろんベースライン上や内で構えておいて、相手の浅いボールを警戒し、深いボールを打たれたら下がるという逆のやり方でも構いませんけれども、一般的には前方へのダッシュのほうが、後方への移動よりも素早く行えます

▶ボールの「出どころ」から見るために


注意したいのは、相手のインパクトからボールの出どころを見ておくこと。
 
これが見えないと、「スタートダッシュ」が遅れます。

この遅れが、簡単なはずの「弾んでこない浅いボール」を捕り損ねる原因です。
 
「出どころ」から見るそのためには、基本的には自分は動かず、止まって見るスプリットステップが有効。
 
スプリットステップは、常識的なテニス指導が伝える「素早く動き出すためのアクセル」というよりも、「止まるためのブレーキ」です(関連記事「相手が打つ時はスプリットステップ?」)。
 

▶イメージ×ボールに集中=自動的に動く体


ただしポジションやフットワーク(あるいはスプリットステップ)に関しても、プレー中に意識しすぎると、ボールが見えづらくなります
 
なので、練習ではいろんな深さのボールを出してもらい、フットワークだけ前後に移動してポジションを変えるトレーニングを試すのがおすすめです(ラインの存在を気にしなくてもいいフリースペースなどで、ボールを前後に連続してどんどん出してもらい、キャッチするなど)。
 
そのようなイメージの蓄積があれば実戦では、あとはボールに集中すれば体は意識しなくても、自動的に、ポジションを前後に取ってくれるようになります
 

▶目標を設定すると、必要な情報を「RAS」がどんどん見つける

 
なお先ほど、「ポジションやフットワーク(あるいはスプリットステップ)
をプレー中に意識しすぎると、ボールが見えづらくなる」と書きましたが、逆に言えば、意識しなければ、ボールをもっと見やすくなるということも、もちろん付け加えておきます。
 
結果を出すことと、引き出しを増やすことの目標設定、承知しました。
 
そのような目標設定がすでにイメージ作りの一部になっていますので、あとは集中して取り組めば、目標がかなう確率は高まります
 
イメージに従い、脳は必要な情報を、無意識的にどんどんキャッチするからです(関連記事「どんな情報を入れるかで人生は決まる」)。

▶スマホの画面に「気づかないアプリ」がある理由


「RAS」について卑近な例で言うと、購入予定の赤い車をイメージすると、赤い車がたくさん目に入るようなものです(関連記事「人に言うとツキが落ちそうな気がして怖い W.A.さん」)。

私たちは視界に入っているものを、すべて見ているわけではありません。

それが証拠に、スマホの画面全体を視野に入れたとしても、気づかないアプリのアイコンもあるはず。

見ていても、興味のある対象しか脳は認識しないのです。

▶プレー中は「今・ここ・この瞬間」!


目標を設定すれば、目標に関して興味のある情報を「RAS」はフィルタリングして私たちに見せてくれるでしょう。

ただしプレー中は、未来の目標に意識を向けるのではなく、あくまでも「今・ここ・この瞬間」に粘り強くとどまり続けるよう、精進なさってください。

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(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero