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質問169:試合になると打つのが怖くなる。メンタルを鍛える良い方法は?

私はメンタルが弱くて試合になると打つのが怖くなって上にとんでいきます。
メンタルを鍛えられる良い方法ありますか?

回答


▶メンタルを鍛えても悩みは解消しない


打つのが怖い現状を、メンタルを鍛えることでどうにかしようとする試みは、難しいと思います。
 
逆で、打つのが怖いから、上に飛んでいくのではなくて、上に飛んでいくから、打つのが怖くなっているのです。
 
本来的には楽しいはずのテニスなのに、「ボールを打つのが怖い」という人は、実は少なくありません

落語「まんじゅうこわい」といって、まんじゅうをせしめるための冗談ではないのです。

なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?

メンタルを鍛えても、上に飛んでいくミスは変わらないから、やっぱりお悩みは解消しません

▶試合と練習との間にある「違い」


「試合になると」とおっしゃるからには、「練習では」、上に飛んでいくこともなく、怖がらずに打てていらっしゃるのだと思います。
 
ここがポイントです。
 
であれば、試合と練習との間に、何か「違い」があると疑われそうです。
 
それが、私の言う「現実に対するイメージのズレ」なのです。
 

▶楽しいときは「あっという間」の理由


普段はあまり気にしませんけれども、私たちの保有している「イメージ」というのは、状況しだいでグラグラ揺らぎます
 
たとえば同じ「1時間」に対する時間の長さに関するイメージをお持ちだとする。
 
そうであったとしても、楽しい時は「あっという間」なのに対し、暇だったり、退屈な会議や授業だったりすると、「ひどく長い」と感じられたりしないでしょうか?
 
これと同じように、試合と練習とでは、ご自身の中で保有しているイメージが、変わるのです。

会議や授業でも、それらが楽しいと、「あっという間」になりますからね!
 

▶『我慢して生きるほど人生は長くない』


ちなみに『あっという間』に関して。

自分に「合わないこと」「苦手なこと」、あるいは自分の「好きなこと」を見つける手段としてこちらの著書我慢して生きるほど人生は長くない』(鈴木裕介著、アスコム刊)では、「体感時間」の活用をすすめています。

つまり、「あっという間」に感じる場合は好きで、自分に合っている目安になる。
 
逆に「時間が経つのが遅く感じる」ような仕事、場所、人は、できるだけ自分から遠ざけた方がいいとする、心地よく生きるために習得すべき「必須技術」を伝えています。
 
体は精緻ですから、「体感時間」を目安にするこの方法は、私も実に理にかなっていると思います(関連記事「体は精緻。そのシグナルを役立ててアクションを妨げない」) 。

「頭の声」ではなく、もっと「体の感覚」を信じていいのです(関連記事「頭で考えない。体に委ねて『選ぶ人生』を生きる」)。

▶「練習のつもり」は意味がない


よくやりがちかもしれませんけれども、「試合も練習のつもりで打とう」などと思っても、上手くいくものではありません。
 
試合と練習は別物だからです(関連記事「練習と試合は『別物』だから」)。 

また試合になると毎回ボールが上に飛んでいくからといって、そのぶんを計算して下を狙おうとすると、かえってコントロールの振れ幅が大きくなって、ますます安定しなくなるのです(関連記事「だからコントロール力が身につかない」)。
 

▶これで打つのが、怖くなくなる!


さてどうすればいいかというと、メンタルを鍛えるのではなくて、「現実に対するイメージのズレ」をなくすこと。
 
そうすれば、打ち出すボールの軌道も安定するから、メンタルを鍛えなくても「全然怖くなくなる」のです。
 
むしろ、打つのが楽しくなりますよ。
 
それはたとえば、一輪車に乗るのが怖いとすれば、それは転ぶ恐れがあるからであって、転ばない技量が伴えば、乗るのが楽しくなるのと同じです。
 

▶下手な人と上手い人の差は「これだけ」


イメージのズレについて、拙著『テニス・ベースメソッド~あなたのテニスがドラマチックに改善するたったひとつの方法~』では山道でトグロを巻いたロープを踏みつけそうになったら、“思わず”跳びよけようとする衝動的な反応と、述べています。
 
山道でトグロを巻いた細長い物体を見ると、「蛇だ!」と思い込むイメージのズレがあるからですね。
 
しかし現実どおりに「ロープはロープ」と認識すれば、メンタルをわざわざ鍛えなくても、怖くも痒くもありません。

ただのロープだからです。

だけどイメージがズレていると、そのせいでわざわざ必要のない「跳びよける動き」を、“思わず”してしまうのです。
 
“思わず”ですから、衝動的であり、自分でも防ぎようがありません
 
テニスが未熟なプレーヤーも、逆に上手なプレーヤーであっても、多くの人が気づいていないけれど、これと同じことが、テニスコートでも起こっています。
 
未熟なプレーヤーは、現実に対するイメージのズレがある、上手なプレーヤーはそれがない、だけです。

▶ボールに集中しても上手くいかない理由


“思わず”ですから、自覚がないままに誤った動き方をしてしまうせいで、打球タイミングが合わずにボールが意図せず上のほうへ飛んで行ってしまっているだけです。
 
差し当たって、メンタルを鍛える必要はありません。
 
いえ、集中力もメンタルですから、そういう意味ではレベルアップするに従い鍛えていただきたいのですけれども、現実に対するイメージがズレている現状のまま、どんなにボールに集中しても、具体的にはよく目を凝らそうとも、ボールの毛や回転を見ようとも、どうしても打球タイミングは、合わないものは合わないのです
 
そしてテニスでミスする原因について、それこそ「面が上を向いている」だの「ひざを曲げていない」だの「最後まで振り切っていないからスピンがかからない」だの「力を入れすぎている」だの言われるかもしれませんけれども、真因は唯一「打球タイミングのズレ」でしかありません(関連記事「大発見! テニスでミスする原因は、『たったひとつ』しかなかった!」)。
 
これは、今までミスする原因は「ひざ」だの「ひじ」だの「体の開きすぎ」だのと、挙げればキリがない「不適切なフォーム」にあると思い込んでいた人たちにとっては、にわかには信じられないかもしれないけれど、テニスでミスする原因は、実は「たったひとつ」に集約されるシンプルな理由だったのです。
 
シンプルだから、いつまでも指摘され続けるフォームについて意識する必要がなくなり、ボールに集中できるようになるのです。
 

▶順序は「イメージ→集中」


何事も順序が大事

まずは「現実に対するイメージのズレ」を修正し、その次に、「ボールに対する集中力」を高めるのが得策です。
 
そうしないと「ボールに集中しているのに上手くいかない!」思いが支配的になり、余計にテニスで苦しむハメとなってしまいかねません。
 
今は、ボールが上に飛んで行くから、インパクトで面を「垂直にしよう」、あまつさえ「少し伏せ気味にしよう」などと、意識されているかもしれませんけれども、そういった意識がまた、ボールへの集中を妨げます
 

▶インパクトで面の向きを意識しても……


インパクトで面が上を向いてしまうのはなぜか?
 
打球タイミングが合っていないからです。
 
ワンスイング中に、ラケット面が地面に対して垂直になるタイミングが、必ずあるのですけれども、その瞬間とはズレたタイミングでヒットすると、ボールが上へいったり、あるいは下へいったりしてしまいます。
 
とはいえ、1000分の4秒と言われるインパクトの刹那に、意識的にラケット面を垂直に合わせようとしても、そのような操作は人智の及ぶところではありません
 
常識的なテニス指導ではこういう場合、「インパクトで面を垂直にせよ」「そのために手首をコッキングせよ」などと、まことしやかにささやかれるかもしれませんけれども、そのような現象をどうにかしようとする試みで、恒常的にボールの軌道が安定し続けたという話は、聴いたためしがありません。

▶これでショットは恒常的に安定する!


そうではなくて、イメージがズレているのです。
 
イメージのズレとは何か?
 
下記関連記事では端的な例として、「鉄の玉」を用いてご説明しています(関連記事「あなたのテニスボールに関するイメージは?」)。
 
「そんなわけあるか!?」というツッコミは覚悟の上ではあり、端的ではありますが、これくらいインパクトのある例だからこそ、記憶に残していただける狙いがあります。
 
そしてイメージのズレを正せば、ショットの軌道は恒常的に安定し続けるのです。
 
「現実に対するイメージのズレ」がなくなると、体は誤った動きをしませんから、勝手にインパクトでラケット面が垂直になるタイミングでボールをヒットしてくれるのです。
 
つまり、テニスでミスする唯一の原因が解消されるから、「原因と結果の法則」にしたがい、ボールの軌道は安定する。
 
すると打つのが怖くなくなります。

むしろ楽しくなるのです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero