見出し画像

質問119:「ボールから目を離さない」「考えない」事とどう折り合いをつけていけば良い?

こんにちは。
先日ダブルスの試合がありました。
ドロー運もよく4回戦まで進みましたが、そこで同じくらいのレベルの相手と当
りタイブレで負けてしまいました。


実力を出し切れずに負けたということではありません。
全て出し切って、どっちに転ぶかわからない試合が向こうに転んだって感じでした。

質問が2つあります。

1.リターンは相手のトスアップからボールを見て集中するようにしているので
すが、自分がサーブの時は上手く集中し切れません。何かコツはありま すか?

2.私が後ろにいてラリーをしている時(相手も雁行陣)のことを指して、ペアの
人に「あのボールを相手はぜんぜん嫌がっていなかった。リスクを 負ってでも
相手を見て嫌なボールを送ったほうが良かった」と言われました。
  確かに私はミスを減らすことを重視して「ボールだけを見て、相手がどこに
いるかやどんなボールが行くかは気にしていなかった」です。考えたの はスト
レートかクロスかぐらいでした。

  これから先、強い人と当ることが増えれば、ますます相手の立ち位置や体勢
を見てショットの選択をしなければいけなくなってくると思うのです が、
「ボールから目を離さない」「考えない」事とどう折り合いをつけていけば良い
のでしょうか?

回答


▶「切磋琢磨」すると化学反応が起こる

 
ダブルスの試合、お疲れさまでした。
 
惜しい負け方をすると悔しいものですが、そういう一つひとつの経験が、実力を育む真の力になると思います。
 
楽勝ばかりでは、あるいはボロ負けばかりでも、「切磋琢磨」の化学反応は起こりません。
 
ロジャー・フェデラーもラファエル・ナダルもノバク・ジョコビッチも、誰一人として欠いては奇跡は起こりませんでした
 
グランドスラムを、ライバルがいなければ「もっと獲れたのに」と考えるのは早計で、ライバルがいたからこそ、一生に1つでも獲るのが難しいというのに、3人で60超ものタイトルを分かち合えたのです。

全て出し切って、どっちに転ぶかわからない試合が向こうに転んだ

こういう経験こそ、テニスプレーヤーにとって幸せ。
 
楽勝でもなくボロ負けでもなく、切磋琢磨できるバランスが見合ったステージに属する選択も、強くなっていくうえで大事です。
 

▶パッと瞬間的に入れるわけではない

 自分がサーブの時は上手く集中し切れません。何かコツはありま すか?

集中状態には、パッと瞬間的に入れるわけではありません。
 
サーブの構えに入る前から集中状態に入るようにします
 
構えに入ってからだと、時間が短くて、なかなか集中状態に入れません。
 
ましてや打つ瞬間だけ集中しようとしても、それは後述するとおり、テニスを職業としているプロでさえ難しいのです。
 

▶「ボールセレクション」も集中の手続き


集中状態へ入るには、人や環境などにより程度の差こそあれ、時間が必要です。
 
具体的な方法としては、手元のボールをよく見ます。
 
ボール全体を広く眺めるのではありません。
 
特に毛羽などの細部を注視してみてください。
 
人間は、「一時にひとつ」の対象しか認識できませんから、毛羽を見つめていると、ほかの考え事ができにくくなる=集中します。
 
こちらで紹介したボールセレクションは、もちろん毛羽立ちや内圧のコンディションを確認する作業ですが、集中のための手続きとも言えるのです。
 

▶「ボールバウンシング」、やらないプロはいない


コートサーフェスにポンポンと弾ませるボール突きのときも、毛羽を見ます。
 
ボールバウンシングで集中する
 
私が知らないだけかもしれませんけれども、ボールバウンシングをやらないプロはいません。
 
換言すれば、プロでさえ、パッと瞬間的に集中状態へ入れるわけではないと言えます。
 
リンク先で紹介してあるジョコビッチのボールバウンシングはフィクションだとしても、主観的にじわじわ笑えますし、大いに参考になります
 

▶テニスは「楽器演奏」


またテニスは、スポーツと言うよりどちらかというと楽器演奏などに近いですから、ポンポンポンの「バウンド音」を聞くのも有効です。
 
このときも「この一球は絶対無二の一球」
 
とても似てはいるかもしれないけれど、音程も音の大きさも、「同じ音は2度とない」違いを聞き分けるくらい、よく聞きます。
 
音だけではなく「リズム」も集中の拠り所となります

こちらでは楽器演奏の例としてギター習得を取り上げ、「大局から小局」が学習サイクルを加速するメカニズムについて説明しています。

テニスもまったく同じです。
 

▶意識できなくても、「潜在意識」が集中する


毛羽を見ると、バウンシングの音は聞こえません。
 
バウンシングの音を聞くと、毛羽は見えません。
 
先述したとおり、認識できる対象は「一時にひとつ」だからです。
 
ですが、それはそれで、プレーヤーにより、あるいは状況により、やりやすいほうで、構わないのです。
 
見るか聞くかすれば、両方は意識できなくても、潜在意識がボールに集中してくれます
 

▶体がボールを追ってくれない


「テニスはスポーツというより……」という言い方をしましたけれども、もちろん、遠いボールにギリギリ追いついたりするのは、スポーツとしてのフィジカルパフォーマンスが試されます。
 
高速ボレーボレーの応酬や、対戦相手に打ち込まれたポーチのダイレクトキャッチなどは、反射神経を駆使するスポーツとしての醍醐味と言えるかもしれません。
 
一方では、追いかければ捕れたかもしれないのに、「なぜか体が追わなかった」という経験も、きっとあると思います。
 
ダブルスで逆サイドに振られたとき、あるいは浅いボールを落とされたとき、走れば捕れたかもしれないにも関わらず体が走ってくれないのは、「現実に対するイメージのズレ」があるから
 
これは、スポーツ万能かどうか、運動神経があるかどうか、反射神経が優れているかどうかとは、別です。
 
イメージが現実どおりだと、足が遅くても、体がボールに合わせて動いてくれるので、距離と速さの閾値を超えない限り捕れる。
 
私はここに、フィジカル差だけでは越えられない、あるいは埋められないテニス独特の面白みがあり、ほかのスポーツにはない希少性を感じます。

▶コースを狙うのも「タイミング」しだい

 考えたの はストレートかクロスかぐらいでした。

  これから先、強い人と当ることが増えれば、ますます相手の立ち位置や体勢
を見てショットの選択をしなければいけなくなってくると思う

これは、打ち返すコースを早く決定すると、できるようになります。
 
上級者ほど、相手の打った直後にはもう、どのコースへコントロールするかを決定しています。
 
ところが狙えないプレーヤーほど、ボールが手元に近づいて来てからコースを決めて(あるいはコースを決めずに)打ち返そうとします。
 
前者は、打つコースを早く決定できるので、余裕をもって対応できます。
 
また、ボールが手元に飛んで来たときにはすでに狙うコースのイメージはあるので、意識しなくてもそのコースにコントロールできるのです。

意識しなくても、舌が天津飯になるのです。
 

▶狙うとボールに集中できない


後者の狙えないプレーヤーは、振り始めながらコースを決めてしまうような遅い狙い方をしがちです。
 
これでは狙うほうに意識がいきすぎて、打つときに、ボールに集中できなくなってしまうのです。
 
ダブルスで、クロスとストレートを打ち分けられないプレーヤーは少なくありません。
 
しかしたとえば、2人対1人で打ち合う練習で自分が1人のストローク側に入ったとき、相手の2人へ交互に打ち分けるコントロールは、ご自身のレベルだと難しくないですよね。
 
言ってみれば、クロスとストレートへ、コントロールしているのとシチュエーションは同じです。
 
これは、狙いが早い段階で定まっているから、できます。
 
つまり、技術的には難しくない
 
ただコース決定のタイミングが遅いと、パッと瞬間的にはボールに集中できないから、途端に難しくなるのです。
 

▶面白いように狙えるようになる「宣言練習」


上級者ほど、相手に読まれないように打つコースをギリギリまで決めないと思われがちですが、逆です。
 
上級者ほど、打つコースを早い段階で決定し、打つ時には狙わずボールに集中し、余裕を持って打つようにしています。
 
面白いように狙えるようになるには、「宣言練習」をします。

下記に説明がありますので、よろしければご参考にしてもらえればと思います。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
https://note.com/tenniszero

無料メール相談、お問合せ、ご意見、お悩み等は
こちらまで
tenniszero.note@gmail.com

スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero