質問119:「ボールから目を離さない」「考えない」事とどう折り合いをつけていけば良い?
回答
▶「切磋琢磨」すると化学反応が起こる
ダブルスの試合、お疲れさまでした。
惜しい負け方をすると悔しいものですが、そういう一つひとつの経験が、実力を育む真の力になると思います。
楽勝ばかりでは、あるいはボロ負けばかりでも、「切磋琢磨」の化学反応は起こりません。
ロジャー・フェデラーもラファエル・ナダルもノバク・ジョコビッチも、誰一人として欠いては奇跡は起こりませんでした。
グランドスラムを、ライバルがいなければ「もっと獲れたのに」と考えるのは早計で、ライバルがいたからこそ、一生に1つでも獲るのが難しいというのに、3人で60超ものタイトルを分かち合えたのです。
こういう経験こそ、テニスプレーヤーにとって幸せ。
楽勝でもなくボロ負けでもなく、切磋琢磨できるバランスが見合ったステージに属する選択も、強くなっていくうえで大事です。
▶パッと瞬間的に入れるわけではない
集中状態には、パッと瞬間的に入れるわけではありません。
サーブの構えに入る前から集中状態に入るようにします。
構えに入ってからだと、時間が短くて、なかなか集中状態に入れません。
ましてや打つ瞬間だけ集中しようとしても、それは後述するとおり、テニスを職業としているプロでさえ難しいのです。
▶「ボールセレクション」も集中の手続き
集中状態へ入るには、人や環境などにより程度の差こそあれ、時間が必要です。
具体的な方法としては、手元のボールをよく見ます。
ボール全体を広く眺めるのではありません。
特に毛羽などの細部を注視してみてください。
人間は、「一時にひとつ」の対象しか認識できませんから、毛羽を見つめていると、ほかの考え事ができにくくなる=集中します。
こちらで紹介したボールセレクションは、もちろん毛羽立ちや内圧のコンディションを確認する作業ですが、集中のための手続きとも言えるのです。
▶「ボールバウンシング」、やらないプロはいない
コートサーフェスにポンポンと弾ませるボール突きのときも、毛羽を見ます。
ボールバウンシングで集中する。
私が知らないだけかもしれませんけれども、ボールバウンシングをやらないプロはいません。
換言すれば、プロでさえ、パッと瞬間的に集中状態へ入れるわけではないと言えます。
リンク先で紹介してあるジョコビッチのボールバウンシングはフィクションだとしても、主観的にじわじわ笑えますし、大いに参考になります。
▶テニスは「楽器演奏」
またテニスは、スポーツと言うよりどちらかというと楽器演奏などに近いですから、ポンポンポンの「バウンド音」を聞くのも有効です。
このときも「この一球は絶対無二の一球」。
とても似てはいるかもしれないけれど、音程も音の大きさも、「同じ音は2度とない」違いを聞き分けるくらい、よく聞きます。
音だけではなく「リズム」も集中の拠り所となります。
こちらでは楽器演奏の例としてギター習得を取り上げ、「大局から小局」が学習サイクルを加速するメカニズムについて説明しています。
テニスもまったく同じです。
▶意識できなくても、「潜在意識」が集中する
毛羽を見ると、バウンシングの音は聞こえません。
バウンシングの音を聞くと、毛羽は見えません。
先述したとおり、認識できる対象は「一時にひとつ」だからです。
ですが、それはそれで、プレーヤーにより、あるいは状況により、やりやすいほうで、構わないのです。
見るか聞くかすれば、両方は意識できなくても、潜在意識がボールに集中してくれます。
▶体がボールを追ってくれない
「テニスはスポーツというより……」という言い方をしましたけれども、もちろん、遠いボールにギリギリ追いついたりするのは、スポーツとしてのフィジカルパフォーマンスが試されます。
高速ボレーボレーの応酬や、対戦相手に打ち込まれたポーチのダイレクトキャッチなどは、反射神経を駆使するスポーツとしての醍醐味と言えるかもしれません。
一方では、追いかければ捕れたかもしれないのに、「なぜか体が追わなかった」という経験も、きっとあると思います。
ダブルスで逆サイドに振られたとき、あるいは浅いボールを落とされたとき、走れば捕れたかもしれないにも関わらず体が走ってくれないのは、「現実に対するイメージのズレ」があるから。
これは、スポーツ万能かどうか、運動神経があるかどうか、反射神経が優れているかどうかとは、別です。
イメージが現実どおりだと、足が遅くても、体がボールに合わせて動いてくれるので、距離と速さの閾値を超えない限り捕れる。
私はここに、フィジカル差だけでは越えられない、あるいは埋められないテニス独特の面白みがあり、ほかのスポーツにはない希少性を感じます。
▶コースを狙うのも「タイミング」しだい
これは、打ち返すコースを早く決定すると、できるようになります。
上級者ほど、相手の打った直後にはもう、どのコースへコントロールするかを決定しています。
ところが狙えないプレーヤーほど、ボールが手元に近づいて来てからコースを決めて(あるいはコースを決めずに)打ち返そうとします。
前者は、打つコースを早く決定できるので、余裕をもって対応できます。
また、ボールが手元に飛んで来たときにはすでに狙うコースのイメージはあるので、意識しなくてもそのコースにコントロールできるのです。
意識しなくても、舌が天津飯になるのです。
▶狙うとボールに集中できない
後者の狙えないプレーヤーは、振り始めながらコースを決めてしまうような遅い狙い方をしがちです。
これでは狙うほうに意識がいきすぎて、打つときに、ボールに集中できなくなってしまうのです。
ダブルスで、クロスとストレートを打ち分けられないプレーヤーは少なくありません。
しかしたとえば、2人対1人で打ち合う練習で自分が1人のストローク側に入ったとき、相手の2人へ交互に打ち分けるコントロールは、ご自身のレベルだと難しくないですよね。
言ってみれば、クロスとストレートへ、コントロールしているのとシチュエーションは同じです。
これは、狙いが早い段階で定まっているから、できます。
つまり、技術的には難しくない。
ただコース決定のタイミングが遅いと、パッと瞬間的にはボールに集中できないから、途端に難しくなるのです。
▶面白いように狙えるようになる「宣言練習」
上級者ほど、相手に読まれないように打つコースをギリギリまで決めないと思われがちですが、逆です。
上級者ほど、打つコースを早い段階で決定し、打つ時には狙わずボールに集中し、余裕を持って打つようにしています。
面白いように狙えるようになるには、「宣言練習」をします。
下記に説明がありますので、よろしければご参考にしてもらえればと思います。
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(テニスゼロ)
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