質問099:ボレーに自信がないけど、前に出た方がいいと言われる
回答
▶公式は「速さ=道のり÷時間」
ダブルスだからといって、必ずしもネットプレーにとらわれなくて構いません。
とはいえ、パートナーの言い分にも理がありそうです。
ボレーに出れば、ストロークの約半分の距離で、相手に返球できます。
公式は「速さ=道のり÷時間」なので、距離を詰めるだけで返球タイミングを早め、ボールが相手に到達するまでの返球時間を短縮できます。
たとえ緩いボールしか返せないとしても、「距離を半分にできる」というのが大きいのです。
プロの世界では強力なストローカー同士がペアを組んだとしても、ダブル後衛でいつづける例は、皆無ではないとしても、あまりない。
https://youtu.be/vR5ykbDSV-4?t=32
やはりネットを取るだけの合理性があると言えます。
▶ヒンギスは言った。「ボレーはあまり自分のすることがない」
もちろん、自分にとっても相手後衛から返ってくる距離は半分になり、素早い対応が求められますけれども、一方がラケットをある程度振る必要のあるストロークに対して、もう一方が小さめなスイングでも構わないボレーです。
なぜストロークはある程度振る必要があって、ボレーはそれがあまりないのかというと、前者がワンバウンドしてその後勢いの緩まるボールを打ち返すため、より積極的なスイング出力が必要となるのに対し、後者はノーバウンドの勢いあるボールを打ち返すため、自らの出力は控えめでよいためです。
ショットを成功させるにあたって飛ばす距離も、ストロークは(打つポジションにもよるけれど)最低でもテニスコートの縦半分以上のドライブが必要となるのに対し、ボレーの場合は端的に言えば、ネットさえ越えれば「すぐそこ」でも構いません。
いえ相手ペアが雁行陣だとした場合、もし本当に「すぐそこ」の配球ができれば、相手前衛の逆サイドでなおかつ、相手後衛にとっては最も遠いネット際にコントロールされます。
なので仰せの「決め球のような強いボールを打てる」必要もないのです。
マルチナ・ヒンギスは言いました。
「ボレーはいちばん簡単なショットよね。あまり自分ですることがないから」
当たり前の話ですが、整理してみるとこういう見直し方もできそうです。
▶テニスは「時間の綱引き」合戦
相手のストロークに対して距離を詰めたボレーでは、グリップチェンジが必要最小限で済むのも大きいでしょう。
何しろテニスは時間の綱引き合戦ですからね。
速いボールを打つのは、相手の時間を奪うため。
遅いボールを打つのは、自分の時間を稼ぐため。
相手の遠いところに打つのは、ボールに届かせるまでの時間を長くするため。
相手の近いところに打つのは、ボールに届かせるまでの時間を短くするため。
相手から遠いところへ打つばかりが、有効打なのではありません。
なのでポーチは、相手前衛の体に最も近い、あえて足元を狙ったりしますね。
時間を駆け引きするなかで、自分がウイナーを奪ったり、相手の打球タイミングを狂わすエラーを引き出したりしながら、ポイントをやり取りします。
この場合の公式は「時間=道のり÷速さ」です。
返球タイミングを早めて相手から時間を奪う目的のためにも、距離を自ら縮められるボレーは理に適っていると言えます。
前に出るポジションが、時間に関する優位性を高めるのです。
特にダブルスは、雁行陣であれば抜かれてもパートナーが後衛で控えているのだから、このメリットは大きいと言えるでしょう。
並行陣のフォーメーションについては後述します。
▶相手の返球に「高さ制限」を強いることができる
またボレーに出ると相手ストローカー側に対して、返球を沈めるなり、打ち上げるなりしなければならない「高さ制限」を強います。
すなわち、通常ストローカーに対してよく使うネット上1メートル付近の高さの返球は、相手にぶつける意図でもない限り、ボレーヤーが手の届く範囲に打つのは基本的にタブーで、そうした高さ制限を強いるプレッシャーを与えられる点でもボレーに出るメリットはあります(ボレーに出たら、相手に自滅のミスを誘えることが多いのは、こうした「高さ制限」のプレッシャーを感じさせるからでもありますね)。
▶ボレーヤーの存在が、すでに「圧」
もちろん、「コース制限」も強います。
相手のストローカーに対して、クロスかストレートに的を絞らせます。
センターはポーチに捕まる危険性を示唆。
また相手ストローカーにとってストレートは狙える幅が狭いので、それもプレッシャーを強いています。
クロスに打つにしても、ボレーヤーを避けるべくよりワイドを意識させやすいため、相手のボールに対する集中を脅かす圧をかけられるのです。
換言すれば自分がストローカーのときにも、相手ボレーヤーと対峙する場合、気にせず打てる集中力を備えなければ、ネットに立ちはだかられる圧に屈します。
▶「逆の立場」から見ると、180度違って見えること
逆の立場として、相手前衛を避けたいあまりにストロークを打ち損じるケースもあるのではないでしょうか?
テニスというのは面白いもので、立場を逆にすると見え方が180度変わったりします。
すなわち、自分が前衛でいるとストレートを「抜かれそう」な気がするし、自分が後衛でいると、ストレートを「抜けそうにない」感じ方になったりもします。
▶ボレーはポジションそのものが、すでに強み
「自分のことがいちばん分からない」などと、よく言われます。
「ボレーが苦手だから、自分が前に出ても意味がない」などと思い込みがちです。
だけど前にいるポジションそのものが、ボレーの巧拙・自信の有無に関わらず、すでに強みになっています。
逆に言えばダブル後衛だと、これらの強みがすっかりなくなります。
つまり相手ストローカーにしてみれば、高さもコースも制限を強いられず、ノンプレッシャーで打ち放題。
ボレーに出れば、相手に普通に打たせない。
通常よく使われる高さとコースの返球は許さない。
このあたりに、パートナーの方がボレーに出るように勧めるメリットがあると考えられます。
ダブル後衛だと、もちろん守備力が高まる強みはあるかもしれないけれど、そもそも時間を相手に掌握されては、後手後手に回りかねません。
▶並行陣はだれのもの?
ところで並行陣は上級者向きの布陣とよく言われますが、初級レベルから使っても有効だと思います。
特に試合本番になると、未知なゲーム展開についてあれこれ考えて不安に見舞われがちですけれども、並行陣なら考える隙を与えず反射感覚でプレーできます。
懸念するとすれば、頭上のボールに対する処理でしょう。
ボールが浮いてきたらチャンスとはいうもののそれも程度しだいで、ロブで抜かれた場合の、抜かれないための、処理能力は上げておく。
そのためには、疎かになりがちなハイボレーやスマッシュの練習機会を確保します。
何しろこれらが、ポーチとともにダブルスでは得点源となりやすいですからね。
またポジションの取り方やコンビネーションについても確認しておきます。
▶並行陣と平行陣?
並行陣とはいえ、2人がネットと「平行」に並ぶのではなくて、パートナーと前後差をつけるミニ雁行陣。
2人のポジションに前後差がないと深さの対応に苦慮しますし、相手ペアの雁行陣に対して前後差の取り方が逆になる、逆ミニ雁行陣だと、センターが手薄になってしまいます。
▶アマチュアこそ、「サーブアンドボレー」が強みになる!?
ちなみに上記のセオリーはダブルスだけではなくて、シングルスでも通用するところがあります。
確かに今は、軽量化に伴うラケットの操作性、高剛性化による反発性、面安定性を始めとする各種フレーム性能が昔に比べて格段に向上して引っ叩けるため、プロのツアーではストロークが主流です。
ですが自他ともにそこまでハードヒットしないアマチュアであればこそ、ネットに出れば高さやコース制限を強いることができるサーブアンドボレーは強みとなる可能性がありそうです。
▶サーブアンドボレーに「足の速さ」は必要条件ではない
とはいえサーブアンドボレーは、素早く前へ出るための「足の速さ」が必要でしょうか?
そのためハードルが高く感じられがちかもしれませんけれども、案外そうではありません。
むしろ出足はゆっくりで構わないのです。
急ぐとその前進する勢いを止められず、相手レシーバーに左右、または後方へ打たれた返球対応に苦慮します。
速いほうがいいとばかりに、サービスダッシュを急いでサービスライン内へ仮に走り込めたとしても、あっさりロブで頭上を抜かれます。
出足はゆっくりで構わないので、いえゆっくりにしたほうが、相手に打ち返された直後の対応力が上がります。
コチラで取り上げたSABRと同じです。
ヘビのようにニョロニョロと出ていき、その後、一気に噛みに行きます。
https://www.youtube.com/watch?v=OOZZdGVRIsU&t=23s
▶決めつけすぎずに、柔軟に対応する
もちろんボレーも、返球が緩すぎては距離を縮めたメリットを活かせる機会が減り、相手に叩き返されてしまいかねません。
この場合の公式は「時間=道のり÷速さ」。
ショットが遅いと、距離を詰めても時間を奪えない場合もあるのですね。
なのでストロークに自信がおありであれば、そちらを主とするのも攻守のバランスしだいです。
あまり決めつけすぎずに、対戦相手ペアとの力関係や、プレースタイルとの相性、そのときどきの戦況等により柔軟に対応されるとよいと思います。
先のロジャー・フェデラー/ラファエル・ナダルのダブルスも、結局はネットを取りにいく展開が多用されるものの、リターン時などはダブル後衛を敷いているシーンもありました。
ダブルスだからといって、必ずしもネットプレーにとらわれなくて構わないと先述したのは、決めつけがプレッシャーにもなるし、プレーの幅を狭めかねないからです。
▶いちばん大事にしたいのは「コミュニケーション」
そしていちばん大事にしたいのが、パートナーとのコミュニケーションです。
「パートナーのほうがテニスが上手だから、そのアドバイスに従うべき」などというのとは、まったく次元の違う話です。
立場は対等。
「もっと前に出た方がいい」というパートナーによるアドバイスは、それが日常生活であれば些か領域侵犯のように主観的には思えますけれども、なにぶん試合では勝つ目的を共有する(その背後には楽しむ目的もあるにせよ)運命共同体ですから、無碍にはできません。
そこはご自身の「ボレーが苦手」「当てて返すだけの緩いボールしか返す自信がない」などの気持ちを誠実に伝えて、あとはパートナーがどう解釈するか、だと思います。
▶自己肯定感を育み、持続可能なパートナーシップを
そしてこれは、日常生活でも同じなのです。
お互い自分の気持ちを、いいも悪いも素直に伝えて、ありのままを受け入れ合えるリスペクトのインタラクティブな関係性であれば、互いに自己肯定感を育んでゆく持続可能なパートナーシップが叶います。
遠慮して自分の気持ちを伝えないのが、ディスリスペクト。
自己肯定感を損なうのです。
相手を慮るつもりで婉曲的に「なるべく早くお願いね」などと伝えるのは、人間関係がザラつくきっかけです。
「なるべく早く」は、1時間後なのか3日後なのか、受け取り方は人それぞれだからです。
1時間以内に対応してほしいなら具体的にその事情を、気持ちとともに伝えるのがリスペクトだと思います。
▶自己肯定感は、閉ざされていた「才能」をも開花する
「幸せ」にはいろんな定義があると思いますし、人それぞれ。
私はその根幹をなすのが、自己肯定感だと、感じています。
もちろん、「お金さえあればそれで幸せ」という人もいるかもしれないけれど、自己否定してばかりだとしたら(その裏では正比例の相関である他者否定がある)、やはり生きるのはキツいと思うのです。
自己肯定感が育まれると、もともと備わっていた(だけど自己否定してきたために閉ざされていた)才能が開花し、豊かさにも恵まれると感じます。
▶豊かなテニス人生を歩む
試合に出るのは、何も勝つことだけが目的ではありません。
ダブルスであればパートナーと、そして対戦相手とも、苦楽をともにして、喜びを分かち合い、悲しみを慰め合って、豊かなテニス人生を歩んでいきたいものです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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