薬剤師批判にのっかって職能をアピールする話
はじめに
調剤薬局の薬剤師に対する某お笑い芸人さんの発言は、悲しくはあるものの気持ちはわかる薬剤師です。
発熱外来受診→調剤薬局にいく→薬をもらう
病院ではインフルエンザ・新型コロナ検査等も含めると待ち時間は長くなり、調剤薬局にいくころには体調だけでなく機嫌も悪くなります。
そこで薬剤師が病院と同じ質問をする理由もわからないのであればイライラしますよ。
現状の医療体制では、患者さんは「元気でないと病院にいけない」状況です。
「なぜ薬剤師が病院と同じようにいろんな質問をするのか」
この問題は、薬剤師の職能を国民に理解されていない薬剤師側に問題がありそうです。
国民への周知徹底は職能団体である薬剤師会の出番ですね。
一応私も会員ではあるので、多少貢献しようと思います・・・
調剤薬局では健康保険を使えるか確認しています
医療費は社会保障費の一つで税金です。
その税金を患者さんの治療費や薬剤費にあてていますので、無駄に使うわけにはいきません。
無くした薬を再度もらうための処方箋であったり、承認された病気や用法とは異なる薬の使い方であったり、貼付剤が1ヶ月に63枚までのような処方制限があったりすると保険は使えず自費となります。
先発品と後発品(ジェネリック医薬品)では成分が同じであっても、前者は保険適応できるが後者は保険適応できない薬も存在します。
ジェネリック医薬品を希望される場合は特に「病名」に気をつかいます。
病院の処方箋の内容が誤っていないかダブルチェック機能を果たします
医師も完璧な人間ではありません。すべての病気や薬を把握している訳ではなく、得意な専門分野があります。専門分野から離れるほど誤りは多くなります。
入力作業は専門のスタッフが行う医療機関では、指示受けの単純な入力ミスもあります。
これを素通りすると不利益を被るのは患者さんです。
例えば以下のような誤りをチェックしています。
食後・食前・食間・食直前・食直後服用の誤り
単純なミスであり、保険上のルール以外では特に問題の無い場合も多くあります。
ただし、以下のような問題のあるケースも少なくはありません。
・食事の影響で薬の効果が半減する(薬が効かない)
・食事の影響で薬の吸収が上がる(副作用発現リスクが上がる)
服用回数の誤り
抗生物質を例に挙げるとPK/PD理論というものがあります。
抗菌作用が「最大血中濃度に依存する薬」であるか、「最小発育阻止濃度以上の血中濃度を維持することで効果を発揮する薬」であるか、で飲み方が異なります。
前者であれば1日1回、後者であれば1日複数回服用ですね。
これを誤ると、効果が出ないだけでなく耐性菌の要因にもなります。
他にも、同じお薬であっても高血圧症の場合は1日1回服用するけど心不全の場合は1日2回服用する薬もあります。
1回量や1日量の誤り
病気によって同じお薬を使用しても飲み方が変わる薬があります。
この場合、何の病気で薬が処方されたか確認する必要があるんですね。
また、同じ薬でもいろんな規格(10倍散、100倍散)があり、通常の量の10倍以上の量を服用してしまったケースも存在します。
患者さんの健康状態によって薬の量は変わります
年齢や体重、腎機能や肝機能に異常がないか等によって、お薬の1日量や服用回数が変わることもあれば、薬自体が変更になることがあります。
患者さんは伝える情報を選ぶんです
病院には話してないけど薬局では話すという情報や、薬局で思い出す情報があります。
よく考えると、不思議な質問を患者さんにしているなって思うこともありますね。
以下、一例です。
お薬手帳見せてるのに他の病院の薬飲んでますかって聞かないで
薬剤情報提供書を渡してお薬手帳に記載しない病院もあります。電子お薬手帳に対応していない医療機関もあります。
お薬手帳をみせているのに「他の病院で薬もらっていませんか?」と質問するのは、お薬手帳に書いていない薬を飲んでいないか確認するためです。
知らなければ「手帳みせてるやん」って思いますよね。
これで同系統の薬を発見し処方が変更になることがあります。
市販薬や健康食品や普段の食事とか薬と関係あるの?
市販薬で同成分の痛み止めや解熱剤を飲んでいて過剰服用したり、同系統の薬を飲んで胃腸障害のリスクが上がったりする場合があります。
通常は市販薬をやめてもらい対応します。
健康食品(セントジョーンズワート、鉄・亜鉛・カルシウム等のミネラル含有食品、納豆菌が配合された整腸剤、胃薬、青汁等)、スムージーやジャムに含まれる柑橘系の果物(グレープフルーツ、ハッサク等)と飲み合わせの悪い薬があり、併用すると効きすぎたり効かなくなったりするケースがあります。
処方箋の変更はありませんが、健康食品の中止や服用時間の変更、柑橘系は温州ミカンやバレンシアオレンジやレモンに変更してもらうケースがあります。
まとめ
いかがでしょうか?
今回は「なぜ薬剤師が病院と同じようにいろんな質問をするのか」をご紹介しました。
一言で言うと「安心・安全」のために行っています。
こんな内容を書く機会を与えていただいた今回の騒動は、薬剤師にとってありがたいご意見だったと思います。