万葉びとの「季節感」を描く
中公新書『古代日本の四季ごよみ』の回想 ‥藤井一二
先日、検索サイト「カーリル」「CiNii Research」から、同書が全国公共図書館に1200余館(北海道46、埼玉67、千葉57、神奈川60、東京65、都内大学88,大阪50の図書館‥)に架蔵されるのを知った。増補版の構想もあって、20年前の保存フアイル中に、同書のPDFデータを「発見」し安堵した‥。
「古代の人々は季節の訪れにどんなに敏感だったか。季節に合わせてどのように活動したのか。
‥季節の訪れを告げるのは花や鳥、風の肌ざわり、空模様などだ。当時の人たちはそれらに対してとても注意深く、いつも五感をはたらかせていた。
季節の訪れに敏感だったのは、来るべき生活の準備をしないといけなかったからだという。
‥気候を人工的につくったり制御したりする時代だ。鈍麻する一方の季節感。季節を軸にしてひろがる古代の人々の暮らしの、おおらかさとみずみずしさにたじろぐ」(田)
これは『週刊読売』1998年2月1日号に掲載された『古代日本の四季ごよみ』(中公新書)の「ブックレビュー」。
あのとき、私はその洗練された言葉づかいと形容の鮮やかさに‥たじろいだ。本書・帯のメインコピーは「季節感豊かな日本の風土の中で、古代の人々はいかに生きたか」と問いかけている。
出版社の宣伝力に支えられた同書は、全国公共図書館数1200余、大学図書館数240(都内の大学88を含む)、このうち北海道の公共図書館が46を数える。‥同書の架蔵分布を初めて知った。
あらためて同書の「あとがき」に目を通した。
‥近くを流れる川の土手の草花や、竹藪と杉木立を飛び交う鳥の声などから、季節の変わり目を実感するのもそんなに珍しいことではない‥と。
あれから20年余。いま、あらためて週刊「ブックレビュー」を読み返しながら、「詩語」のような評語の巧みさに胸うたれている‥。
〇付記:中公新書『古代日本の四季ごよみ―旧暦にみる生活カレンダー』は『和同開珎』『大伴家持』とともに「天平の3部作」となりました。
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