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おやきはなすに限る?

 この辺りでなすといえば2種類ある。長なすと丸なすだ。

 長なすは全国共通の長なすだが、丸なすはこの地域特有のなすでまん丸い。長なすに比べると身がしっかりしている。
 丸なすの食べ方の定番は「ふかしなす」。蒸したものを冷やして、辛子じょうゆで食べた。今の私はしょうゆ(ラー油入り)がお気に入りである。
 もう1つが本題の「おやき」だ。おやきの具はなすに限る。そう主張する人はけっこういるらしい。
 
 私は違う。なすの入っているおやきなら何でもいいというものではない。私の母方の祖母が繰り返し作ってくれたおやきがいいのだ。
 というわけで、祖母のおやきの作り方を書いておきたい。

 私が遊びに行くと、祖母は「用意しといたよ」と台所に連れて行ってくれた。祖母がこねて寝かしておいた生地がボールに入っている。乾燥しないように濡れ布巾がかぶせてある。
 祖母は丸なすの用意を始め、私は味噌の用意をする。味噌に砂糖を入れて練る。少し油(使い古したもの)を入れると香ばしくなる。
 祖母は丸なすを切る。0.7mmぐらいに切れ目をいれ、次の0.7mmの時に切り離す。こうやってできた切れ目に味噌を入れる。味噌を入れるとなすから水分が出てきて扱いづらくなるので、ここからは忙しい。
 寝かしておいた生地をちぎって丸め、さらに大きく広げてなすを包む。包んだら直ちにフライパンで焼き目をつける。焼き目がついたものから蒸し器に移す。全部、蒸し器に移したら蒸す。なすに火が通ったら完成である。
 おやき作りは2人以上いた方が作りやすい。1人でやろうとすると、味噌をいれたなすから水分が出てきたり、フライパンで焼いているうちに焦げたり、トラブルがおきやすい。祖母と2人でおしゃべりしながら作るのは楽しかった。
 夕飯はおやきだけ。2人で食べられるだけ食べる。アツアツのおやきをほおばると中から甘じょっぱい味噌が出てくる。これが美味しい。このおやきが一番よい。

 さて、時は移った。祖母は他界した。あのときのおやきを再現しようと、1人でやってみたことがある。生地はのびず、なすを包むことはできなかった。仕方がないから、「なすカレーとナン」にしてしまった。家族は喜んだが、作りたかったのはこれではない。

 今は母と一緒に作る。祖母の話をしながら。このおやきが大好物だった人たちの話をしながら。作る前は面倒だと言っていた母が、作り終わると少し元気になる。
 このおやきが一番美味しい。お盆はおやきの季節だ。

2024年のおやき

今年もおやきを作った。分担はこんな感じ。
あんこおやき担当…娘
なすおやき担当…私
なすの補充、および味噌をはさむ担当…母
焼いて蒸し器に移す担当…妹

おやきの生地は地粉(小麦粉)だ。ピザや餃子を作る時、生地がくっつくことがあれば打ち粉をふるが、おやきでは打ち粉を使わない。おにぎりをにぎるときのように水を用意し、手に水をつけてくっつかないようにする。

今年のおやきはうまくいった。人数が多いとやはり作業が早い。娘もあんこに関しては完璧になり、すばらしいおやきを作った。私もけっこう大きななすでも上手に包むことができて気分がよかった。熱々のおやきをほうばり、中から熱い味噌が出てくる。油で焼いてある地粉の生地も美味しい。
まあ、うまくいった最大の理由は、母が早くから生地をこねておいたからだ。どんなにのばしてもちぎれない、本当に包みやすい生地だった。私が失敗するのは、この生地を作る段階である。どうやって作ったのか聞いてみた。
「そこに粉とぬるま湯の量を書いておいたから持っていってよ。でも、その量だとちょっと硬かったから、少しぬるま湯を足して、まだ硬かったから、もうちょっと足して、粉も足して…なんてやったから、よく分からない」と言われてしまった。うーーーーん、これじゃ分からない。おやきづくりを完全マスターするのはまだまだ先だ。

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