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大きなせいろ、小さなせいろ
今、せいろブームらしいですね。先日のNHKのあさイチでも取り上げられていました。
今持っている道具(主にル・クルーゼにセットされたスチーマー)で十分に蒸し料理は楽しんでいるし、置くところもないので、今のところせいろを買う予定はないのですが、子どもの頃はよく使っていたので、せいろの思い出を書きたいと思います。
大きなせいろの話
実家には蒸し器がいろいろあった。
私が小学生くらいの時期は、せいろをよく使っていた。
1つは和せいろで、餅つき用のもち米を蒸すために使っていた。一升用の大きなものだ。1年に1度しか出番がない。
餅つきをやめてもう十数年になる。あの和せいろはもう使えないだろう。
もう1つは中華せいろで、こちらは日常的に使っていたが、正月には10人以上の茶碗蒸しを一気に蒸していたのだから、こちらも相当大きかった。
ふだんはどんなふうに使っていたのかといえば、夏は「ふかしなす」である。このあたりの名産、丸なすを2つに切ってふかす。大量にふかしておいて、冷やして食べる。からし醤油で食べるのが定番だった。(今の私ならしょうゆにラー油を垂らして食べるけれど。)
また、「鶏肉の酒蒸し」もよく作られた。もも肉を観音開きにしたものを大皿に並べ、酒をふって蒸す。これも冷やしておいて、わさび醤油で食べた。(これはわさび醤油ではなくて、すりゴマとラー油と醤油でもおいしい。)
冬になると「白菜の蒸し煮」がよく作られた。大皿に白菜が大量に盛って蒸す。これは蒸したてのアツアツをいただく。せいろから皿を出し、かつおぶしをかける。あとは醤油かポン酢で食べる。今考えると白菜を蒸すだけの地味な料理だけど、子どもの頃はこれがごちそうに見えた。
「あさりの酒蒸し」もよく食べた。庭で野生化していた三つ葉を摘んできて散らした。この汁を飲むのが祖父の楽しみだった。こちらは本当にごちそうだった。
今でも実家では蒸し料理をよく作っているが、大量に作るわけではないので、あの大きな中華せいろは出てこない。納戸にあると思うけど、今でも実用に耐える状態かどうかは分からない。
小さなせいろの話
さて、高校生だった頃、小さな小さなせいろもあった。ミルクパンに乗せて使う。おもちゃみたいなせいろだったが、よく使うから台所の隅にいつも置いてあった。
祖母と母は、昼食に食べる冷やご飯をこのせいろで温めていた。当時、我が家には電子レンジはなかった。朝と夜に炊くご飯が余ると、丼用の器などによそって皿をかぶせておいた。これを温めて昼に食べていたんである。
もう1つの使い道が、祖父と私と妹のおやつ用だった。冷凍のあんまんをこのせいろで温める。
小さなせいろに入るあんまんは1つだけ。三人は別々の時間に帰宅するから、それで十分で、大きな蒸し器を出すのは面倒なんである。
誰かが帰ってくるとミルクパンで湯をわかし、あんまんの入ったせいろを乗せる。着替えて居間に戻るとあつあつのあんまんがある。
紅茶が添えられている。本当にちょっとだけブランデーが垂らしてあった。
祖父はけっこう多く垂らしていて、祖母に注意されていた。
あんまんとブランデー入りの紅茶って、今思い出すとなんだかおかしい。当時はそんなふうに思わなかったけれど。
この小さなせいろはよく使われた。ミルクパンから火がはみだすこともあり、せいろのまわりはだんだん黒焦げになった。私は大学進学と共に家を離れ、祖父は亡くなった。いつのまにか小さなせいろは消えた。
せいろは使わなくなったけれど、蒸し料理自体は好きだ。
また何か蒸してみよう。
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