『アルバレシュの伝統と象徴』~異郷で生き続ける文化~リテラ探求学習研究レポート
大学では史学科に進むT・Nさんは、イタリア移民について興味を持ち、「アルバレシュ」をテーマに研究することにしました。
アルバレシュとは、イタリアに亡命し定住したアルバニア人のコミュニティのことを指します。
アルバレシュの食文化・宗教・伝統衣装について調べながら、自国の土を追われたアルバレシュたちに思いを馳せました。
この研究をしたのは、卒業生のT・Nさんです。
■プレゼンテーション動画
■リテラの先生からのコメント
アルバレシュという、これまで知らなかった世界の魅力を教えてくれてありがとう。
彼らの衣装には、国を追われた人々の祈りが込められているように感じました。
その土地の人々に根づく大切なものを、これからも研究してほしいと願っています。
■テキスト資料
アルバレシュとは、オスマン帝国のバルカン半島への進行や、アルバニアの社会主義化により、イタリアに逃げて、定住したアルバニア人のコミュニティのことを指します。
イタリアの各地にこのコミュニティがありますが、今回はシチリアのアルバレシュのコミュニティに絞って話をしていきたいと思います。
そもそも、なぜアルバレシュについて研究するのか。
私の進学する大学には、イタリア移民について研究している教授がいます。
私は、教授の著書を通して、イタリアの移民について興味を持ちました。
また、私は「服」が好きで、大学では服装史を中心とした文化史を学びたいと思っています。
そこでイタリアの伝統衣装を調べたいと思い、見つけたのがアルバレシュでした。
アルベレシュのコミュニティは、多民族国家に溶け込みながら、自らの文化的特色維持していました。
たとえば、アルベレシュ料理には、トゥマクト・ミー・トゥレスという、トマトソースをトッピングしたパスタ料理など、イタリアとアルバニアの食材と伝統を組み合わせたものがあります。
アルバレシュの宗教はキリスト教であり、一応カトリックの一派とされていますが、カトリックともプロテスタントとも言えない特徴を持つ特殊な宗派を信仰しています。
そんなアルバレシュの人々ですが、何といっても目を引くのが女性の伝統衣装です。
使用される色は、既婚、独身、未亡人など、女性の状態も示します。
ここではウェディングドレスを例に紹介していきたいと思います。
衣装は金の花の刺繍が施された赤、稀に紫のシルクのスカートと胴着で構成され、貴金属で加工された1キログラムを超える重さの銀のベルト、ブレジで区切られています。
2つの幅広の刺繍が袖と身頃に施され、その下には同じく刺繍が施された白いシャツがあります。
頭にはベールと頭飾りがあります。
ベルトの下上には、4枚または3枚の花びらを持つ、全体に金色の刺繍が施された、緑色のリボンがつけられています。
伝統衣装の中で特に目を引くのは、美しい金の刺繍です。
その品質は、アルベレシュの刺繍職人の職人技に支えられています。
かつてのアルバレシュの人々は、子どもの頃から、刺繍の訓練を受け、その技術を身に着けてきました。
しかし、次第に家庭で訓練されるものから、刺繍学校で学ぶ専門的な分野になっていきました。
金の刺繍の他、大きな型押しのシルバーのバックル、ブレジも、特徴の一つです。
ブレジの中央には、尊敬される東方の聖人、通常は、サン・デメトリオ、またはマリア・オディギトリアの像が浮き彫りで彫られています。
しかし、洗礼や公現祭などの特別な機会に着用され、今日でも、花嫁はアルバニアの衣装を着ています。
この島のアルバレシュの結婚式では、豪華な伝統的な衣装を着た花嫁介添人の行列を見ることができ、観光客の注目を集めています。
ビザンチン様式とは、6世紀頃に栄えた東ローマ帝国の文化様式であり、ギリシャやローマと東洋の様式が混じり合っていることが特徴です。
アルバレシュとアルバニアの衣装に共通する特徴としては、金の細かい刺繍と赤を基調とした配色です。
おそらくこの特徴は、ビザンチン文化の影響を色濃く受けていると考えられます。
しかし、アルバレシュとその他の決定的違いは、大きな聖人達が彫られた大きなベルトバックルの有無です。
これはあくまで私の想像ですが、異なる土地へ移っても、自分たちの信仰してきたものを大切にした結果なのではないでしょうか。
彼らが移民先の文化に押しつぶされることなく、共生していくことができたのは、自分たちの文化や信仰を大切にし、衣装という形で次世代へと継承していったからだと感じます。
彼らは、多民族の侵略や独裁によって、国を追われた人々です。
その時、見知らぬ土地で継承できる自分たちのアイデンティティは、信仰や服などの文化だけなのではないでしょうか。
自国の土を追われたアルバレシュたちの立場を想像することは難しいのですが、私はふとそんなことを考えました。
今回、研究で感じたのは、資料の少なさと、言語の壁です。
見つけられた資料はごくわずかで、イタリア語のものばかりでした。
より深く研究するには、その土地に行って、その土地の言語で文献を読み、考察する必要があるのだと強く感じ、研究の難しさと楽しさを感じました。
幸いなことに、私は史学科に進学します。
また、大学にはイタリア移民史を研究している教授がいます。
より深く研究し、長さも内容も一段階上の研究発表をできる日を楽しみにしております。
聞いてくださって、ありがとうございました。
■研究の振り返り
◇これはどのような作品ですか?
文化の大切さが伝わったらいいな。
◇どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
史学科に入るにあったってそろそろまともな研究をしたほうがいいなと思ったから。
◇作品づくりで楽しかったことは何ですか?
いろんな写真を比較しながらみたこと。
◇作品づくりで難しかったことは何ですか?
資料が極端に少なかったこと。
◇作品作りを通して学んだことは何ですか?
真面目に研究しようと思ったらネット上の情報だけでは全く足りないということ。
◇次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
もうちょっと詳しくやりたかった。
◇来年、研究したいことはありますか?
世界の飯と服
◇この作品を読んでくれた人に一言
文化は国の宝です。
この記事を書いた生徒さん
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?