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フル規格三線軌条による強靭な在来線の運行体系 ー 九州を舞台に ー

今は台風の季節で、雨も多くなりました。地球温暖化で、水害のリスクがかつてになく高まってきているのは確かでしょう。それに加えて、踏切事故も今までになく多くなっているなという印象ですね。

さて、そんな時に鉄道にとって必要となるのは何でしょうか。
それはズバリ、タイトルにもある「強靭な在来線の運行体系」ですね。

私の出身である九州地方は殊に大雨の被害が多い地域です。というわけで、今回は九州の新鳥栖~武雄温泉小倉~大分を舞台に考えてみたいと思います。

さあ皆さんはこの2つの区間を見て何を思うでしょうか?
そう、「特急が充実しすぎて新幹線いらないじゃん」と思うのではないでしょうか。前者は特急かもめ、みどり、ハウステンボス、かささぎ などの特急が博多~佐賀を40分くらいで結んでおり、後者も特急ソニックが1時間あたり片方向2本で小倉~大分を80分くらいで結んでいますね。特急ソニックに至っては在来線特急で表定速度2位を誇ります。この区間は今までの記事で札幌~旭川や岡山・高松~松山と並んで「フル規格対応で高架化して三線軌条にすべき」と主張してきた区間です。

つまり、在来線と別個にフル規格新線を作るのではなく、
フル規格(青函トンネル規格)の建築限界の高架線路を使って、在来線の連続立体交差化をやっちまおう!
というものでしたよね。建築限界を大きめに作るので、いわば「デカい在来線」です。

というわけで、新鳥栖~武雄温泉小倉~大分はいずれの場合も「デカい在来線による高規格化」且つ「三線軌条」にしてしまうべきです。

なぜフル規格対応にするのか、をおさらいしましょう。
どうせ高架化するなら、狭軌専用(湖西線や北越急行のイメージ)だとしてもかなりの建設費になります。新鳥栖~武雄温泉は50kmと割と距離が短いですが、それでも全区間高架化しようと思うと今の価格では1兆円を超えるのではないでしょうか。(従来のフル規格新線だけでも少し昔に6000億円かかると言われていたくらいなので、やはり1兆円を超えてしまうかもしれませんよね。) 小倉~大分の場合は130kmほどあるので、倍以上かかります。
狭軌専用にしてしまうと、既存の新幹線への直通の可能性を断ってしまうことになるので、建設費が多少安かったとしてもただの金の無駄です。例えば「1兆円かけて高架化したのに、武雄温泉乗り換えや新鳥栖乗り換え(小倉~大分の場合なら小倉乗り換え)が続いてしまう」みたいなことになります。それでは高架化した意味が全くもってありません!どうせ巨額の金をかけて高架化するなら、既存の在来線網だけでなく既存の新幹線網にも直通できるようにすべきです!!!
佐賀区間の高架化にもどうせ巨額の費用がかかるので、それなら武雄温泉と新鳥栖の乗り換え(小倉~大分の場合なら小倉乗り換え)を無くして新大阪直通も一緒にできるようにしちゃおうよ、ってことですね。
従って、青函トンネルと同様の「フル規格に対応した三線軌条」にしましょう!!


ごめんなさい、長々と説明してきました。
それでは本題の「フル規格三線軌条による強靭な在来線の運行体系」とは何ぞやという説明をしましょう。

新鳥栖~武雄温泉と小倉~大分を三線軌条で高架化したとして、具体的にどういう列車運用になるのでしょうか。

答えは以下です。
1. 新鳥栖~武雄温泉の場合
・博多/新大阪~長崎
 → 標準軌のミニ新幹線 (車両はフル規格)
・博多~佐世保/ハウステンボス/肥前鹿島
 → 狭軌のスーパー特急 または 885系の160km/h運用

2. 小倉~大分の場合
(小倉~行橋だけは直方付近で山陽新幹線から分岐してくる新線になる)
(柳ヶ浦~亀川は在来線と別個に三線軌条の高速新線を作ることを許容する)
・新大阪~大分
 → 標準軌のミニ新幹線
・博多~大分
 → 狭軌のスーパー特急 または 885系の160km/h運用

※三線軌条の共用区間では、標準軌車両を180km/h、狭軌車両を160km/hで走らせるとします。


列車ごとの走行区間を説明するとこんな感じですね。
[かもめ]
・新大阪/博多~新鳥栖:山陽新幹線/九州新幹線 (標準軌)
・新鳥栖~武雄温泉:長崎本線/佐世保線 (三線軌条の高架在来線)
・武雄温泉~長崎:西九州新幹線 (標準軌)

[みどり/ハウステンボス/かささぎ]
・博多~新鳥栖:鹿児島本線/長崎本線 (狭軌)
・新鳥栖~武雄温泉:長崎本線/佐世保線 (三線軌条の高架在来線)
※かささぎ の場合は新鳥栖~江北:長崎本線 (三線軌条の高架在来線)
・武雄温泉~佐世保/ハウステンボス:佐世保線/大村線 (狭軌)
・江北~肥前鹿島:長崎本線 (狭軌)

[ふじ] ← 新大阪~大分のミニ新幹線
・新大阪~小倉~行橋:山陽新幹線/アプローチ新線 (標準軌)
・行橋~柳ヶ浦:日豊本線 (三線軌条の高架在来線)
・柳ヶ浦~亀川:高速新線 (三線軌条)
・亀川~大分:日豊本線 (三線軌条の高架在来線)

[ソニック]
・博多~小倉~行橋:鹿児島本線/日豊本線 (狭軌)
・行橋以南はミニ新幹線「ふじ」と同じ
※博多~大分をミニ新幹線じゃなくてスーパー特急にする理由は、博多~小倉がJR西日本の管轄であること、及びミニ新幹線だと黒崎や折尾や赤間などの客を拾えないことなどである。


この列車運用にすると何が良いのでしょうか?
まずは西九州方面の場合で考えてみます。
博多~新鳥栖の在来線で何らかの災害や踏切事故があったと仮定しましょう。すると、スーパー特急みどり/ハウステンボス/かささぎ に影響が出ます。佐賀の三線軌条の高架区間そのものは普通の在来線区間に比べれば強靭なはずですが、博多~新鳥栖の在来線に乗り入れるスーパー特急が運休または遅延になってしまうでしょう。そんな時に、博多~新鳥栖の九州新幹線を経由する「かもめ」が唯一の救いとなります!ここがポイントです!!
(図1参照)
定時運行制を確保するためにJRが在来線経由のスーパー特急を運休にする措置を取ったとしても、バックアップとして定時運行できる標準軌の新幹線が生き残ってくれます。佐賀~新鳥栖の三線軌条の高架在来線区間と新鳥栖~博多の九州新幹線区間を直通できる列車が存在してくれるだけで、佐賀県にとってもかなりのメリットがあるのではないでしょうか?しかも定時運行がやりやすくなるので、JRにとってもメリットでしょう。

図1 西九州方面イメージ図
経路1がスーパー特急を使った経路、経路2が標準軌新幹線を使った経路


次に大分方面の場合でも考えてみます。
小倉~行橋の在来線で何らかの災害や踏切事故があったとします。すると今度は、スーパー特急ソニックに影響が出ます。行橋~大分の三線軌条の高架区間自体は強靭でも、博多~小倉~行橋の在来線に乗り入れるスーパー特急が運休または遅延になってしまうと想定されます。そんな時に、行橋~小倉のアプローチ新線を経由する「ふじ」が救いとなります。行橋~大分の沿線民が在来線で博多に行きにくい状況が発生するのを防ぐことができます。スーパー特急ソニックがダメになってもミニ新幹線「ふじ」で小倉まで出て、そこで山陽新幹線に乗り換えれば博多に行けます。(図2参照)
というわけで、こちらの場合もバックアップとして定時運行できる標準軌の新幹線が生き残ってくれるというわけです。行橋~大分の三線軌条の高架区間と小倉~行橋のアプローチ線区間を直通できる列車が存在してくれるだけで、福岡県東部と大分県にとってかなりのメリットがあるのではないでしょうか?

図2 大分方面イメージ図
経路1がスーパー特急を使った経路、経路2が標準軌新幹線を使った経路

「強靭な在来線の運行体系」とは何か?
それはズバリ、
「在来線の三線軌条による高架化」+「既存の在来線と既存の新幹線の両方への直通」
→ 「在来線がダメでも『生き残った』標準軌の新幹線路線を利用して大都市まで出られる」

ということです。

これから日本は人口が減ります。
従って巨額の費用をかけるなら、こういうふうに既存の在来線路を三線軌条で高架化し、強靭な在来線の運行体系を構築することに金を使うべきです。


沿線自治体の関係者・住民の皆様、及び鉄道会社の皆様はこちらの記事に興味を持っていただけたのであれば大変嬉しいです。


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