映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ
恋は美しき誤解に始まり、悲しき理解に終わる。惨憺な状況に置かれても理解できないままに取り残されるヘジュン。
目を覚ませ! 緑は緑、青は青だろ。
直観で始まった恋は、言葉に輪郭を与えられると、砂でつくった山のように儚く、波にさらわれて跡形もなくなってしまう。
言葉には、いつも複数の意味が隠れていることを知っていたはずなのに…。
真実はひとつしかない、目を凝らせば、自分はその真実を掴める人間なのだという誇りが、人を決して追い詰めずに許すということの信が、僕を狂わせていく。
目の前にあった事実も、言葉にすれば砂のようにサラサラと掌から零れていってしまうことを忘れていた。
僕にはもう見えなくなってしまった砂でできた山の墓標。あなたは海の水と砂山が混ざり合い永遠にひとつになったという。
真実は探り当てるもの。真実は見えないもの。
私に見えたあなたは、決してぶれることのない軸のある人形をした魂。それが、僕の求めていた答え。
真実のあなたは、水のように変幻自在。容れ物が変われば、善にも悪にもなる。
坍塌、붕괴、崩壊
嗚呼。ヘジュンの嘆きが聞こえた。
ソレが、真実のファムファタールならばどこかで新しいヘジュンを翻弄しているだろう。
否、恋する男は決してそんなことを思わない。愛を信じて「生きていてくれ」と願う。二度と会えない事を諦めたときには、もう向こう岸に足を踏み入れているだろう。
ヘジュンは、哀れなる男の本性。
禁断の恋の末に別れる決心は、メロドラマの典型だけれど、型を凌駕する映像の魔術。散りばめられたテーマに心が感応する見ごたえのある作品。
男と女の間には暗くて深い河があるよ、ヘジュン。
知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。
な〜る。仁者はいつも知者に惑わされるものなのかもしれない。仁者よ油断なさるな!知者に近づいてはならぬ。