こらこら、人様の損得を勝手に決めるんじゃあないよ
同居人のラジオから早口のネチョネチョした男の声が聞こえてきた。
その男はずっと「楽天経済圏がヤバい!」みたいな話をしている。
「今ポイント還元率が下落していて…今すぐ脱出しないと損する一方で…」みたいなことを延々話してて、「うるせ〜〜〜〜〜〜」と思いながらその男のネチョネチョ声に耳を傾けていた。
私はこういう「〜しないと損する!」みたいな話が大嫌いだ。
なぜなら、その情報を知らないだけで損した気持ちになるから。私は何もしていないのに。「損する」「得する」って人と比べることではないのだが、そういう話を聞くたびに「だったら自分もやらないといけないのか…?」と焦るし、相対的に損している気分になる。最近は嫌でもそういう情報がたくさん耳に入ってくるので、うんざりしている。
いや、そういう損得の知識が大事なことはわかっている。私だって積立NISAは続けているし、楽天カードも長年使っている。全く関心が無いわけではない。
でも「ポイント還元率の低いこのクレカは損で使うべきではない」とか「今この決済アプリを使わない奴はアホ」みたいな情報を見聞きすると「いちいちうるせえな!!!!」と叫びたくなる。
私からすれば、クレジットカードを使ってポイントを貯めてる時点で十分すごいと思う。それだけで立派だよ。もう無理して人より得しようとしなくていいじゃん。得することは大事かも知れないけど、別にポイ活や投資をしなくたって生きていける。そもそも人によって一生で必要なお金の総額は全く違うのに、損得を人と比べさせて不安を煽るのは野暮じゃないか。
できることならお金のことは極力考えずに生きていきたいと、ずっと思っている。
私は自分のお金に対してどこか主体的でなく、他人事のように感じている節がある。銀行残高も、毎月決まったタイミングで増減する謎のパラメータのように感じている。この数字によってこれまで生かされてきたというのに。
私は積立NISAに毎月4万円程度を入れ、あとは完全にほったらかしている。
残高もあまり見ていないし、興味もない。それでも一応投資なので、損得の話から自分を守るための免罪符代わりに積み立てているようなものだ。
こういう損得話を完全にシャットアウトできないだろうか。
1日に得られる情報が1個だけの世界になったら面白いのにな、と時々思う。
例えば私は、真っ白くて何も無い部屋で静かに暮らしている。毎日決まった時間にだけ赤い鳥がやってきて、世界のおもしろニュースを一つだけ教えてくれる。今日のおもしろニュースは、「きぬた歯科の看板 ミニチュア化」だった。私は明日のおもしろニュースを心待ちにしながら、1日かけて今日のおもしろニュースを味わう。人生の密度はこれくらいでいい。
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