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13歳真冬の大冒険 人生初の捜索願 【思春期男子成長記】

2学期はじめの不登校の一件から、特に問題なく学校へは行っていたが、相変わらず家ではゲームの時間、スマホの時間、帰宅時間など話し合ってルールを決めても、それを当たり前のようにやぶるという攻防を繰り広げていた。
その時はどうやったら通じるのだろうとただイライラするばかりだったが、よく考えてみれば、思春期と思秋期では話す言語が違っていたか、はたまた搭載された脳内言語変換ソフトが全く違うものだったのではないだろうか。同じ日本語を話しているつもりだったのに、ディスコミュニケーションを繰り返す日々だった。

寒空の下いずこ?

ちょうど次男M13歳の誕生日の翌日だった。前日の誕生日は二人きりで過ごすことになり、平日だったこともあってケーキを買ってきて食べただけのお祝いになった。その日の夜中、数日ぶりにスマホのチェックをすると、この一週間ほど夜中にゲームをやっている形跡があった。そこから、話し合いタイムと言う名の説教の時間となり、再三ルールを破ってきたツケがここで回ってきて一週間のスマホ没収となった。せっかくの誕生日が重苦しい空気で終わった。

翌日、仕事から帰ってくるとすでに帰宅しているはずの次男の姿はなかった。きっと友だちの家に遊びに行ったのだろう。
「19時には帰っておいでよ」とメッセージを打とうにもスマホは没収しているので待つしかできなかった。不便だ。
当然19時には帰らず、その後帰宅した夫Nさんに「どうしよう?」と相談するも、「そのうち帰って来るやろ」と軽く流されただけだった。

21時過ぎ、ママ友から「Ⅿは帰ってる?Kが帰ってきてないねん!腹立つ」とメッセージが届いた。彼女の息子K君と次男が一緒に遊びに行くところを夕方目撃していたようだが、そこからどこへ行ったのかわからないとのこと。しかもK君もスマホ没収をされていたようで、探しようがない状態だった。類友ですな。

12月の21時過ぎはとっぷりと暗く、しかもその日は夕方から急に強い北風が吹きこんで一気に真冬の寒さになっていた。めちゃくちゃ寒い。

こんな寒い中どこにいるのか?ちゃんと上着を着ていってただろうか?
変な人についていっていないだろうか?

はじめのうちはただイライラしていた母たちも、真冬の寒さに気おされて心配が膨らんでいった。知り合いのママ友に片っ端からメッセージを送ってみたり、K君のママと二人で近所の公園を徒歩や車で探してみたりしたがさっぱり見つからない。こんな寒い中、うろうろしている子どもなどいない。

22時を過ぎて、「これは自分たちでは見つけられない」と思い警察署へ相談にいった。何があったのか優しく話を聴いてもらい、子どもたちの写真を見せたり、名前や特徴など情報を用紙に書き込む。そうやって30分ほど経ったとき、自宅にいたK君の妹から、K君とⅯが帰ってきたと連絡が入った。大げさな話だが、いつもより数時間遅く帰ってきただけのことだったが、寒い冬の夜のせいでとても長く感じた。
結局捜索願は書いている途中で本人たちが帰ってきたので届け出をせずに済んだ。

お巡りさんの粋な計らい

お巡りさんたちも安心してくれたが、自宅まで行って本人と話をさせてほしいと言ってくれた。警察から話をすることで13歳の少年たちに灸をすえてくれるということだった。

家に帰ると警察沙汰になってしまったことに気まずそうにする次男が玄関に立っていた。「お巡りさんが話に来るらしいよ」と言うと、さらにうつむいていた。
スマホなんかでお母さんたちに心配かけていてはいけないと淡々と指導してくれていた。
そのあとは怒鳴り散らす気力は失せて、「こんなに心配するのはしんどいから、もうやめてくれ」とだけ伝えた。


その夏、東京オリンピックスケートボードでは西矢椛さんが13歳で金メダルを決めた。実況での「13歳真夏の大冒険」は日本中で話題になった。
片や「13歳真冬の大冒険」をした次男は母が友人と話をするときの話題になっただけだった。

それにしても、あの寒い中ひとりだったらもっとパニックになっていただろうから、一緒にイライラや心配を共有できたママ友に感謝である。


中学生スマホ問題

「スマホなんかで」とは言われても、当時の次男にとっては何を差し置いてもスマホが大事と思ってしまう瞬間は度々あったのだろう。中学3年間はスマホトラブルですったもんだを繰り返した。じゃあ、スマホ持たせなかったらいいやんともなるが、交友関係を大事にする次男にスマホを渡さなかったら、友達とのつながりを失ってしまう。親としては大人になるまでにちゃんとスマホを使える人になってほしい。幼稚であほな男子だからこそやばいことになる前に親の目の前で失敗してもらうほうが助けようがあるだろうと考えた。
スマホを使いこなせるように勉強する期間なのだと思って付き合ったが、なかなか痛い授業料を払うことになった。

そんなこんなで残念ながら、お巡りさんのお灸の効果はさほど長続きせず、またこの後もいろいろとやらかしてくれる次男なのであった。


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